ケーキやクッキーなどの焼き菓子は、バターや油脂によって独特のしっとり感やコクが生まれますが、その分、脂肪分やカロリーが高くなりがちです。近年は健康志向や持続可能な食生活への関心の高まりから、食品業界では栄養価と食べやすさを両立させた新しい製品づくりが求められています。今回紹介する研究は、小麦胚芽、米ぬか、カボチャ種子という三つの素材を「脂肪の代わり」として使い、低脂肪ケーキを作ったらどうなるかを調べたものです。

この研究では、小麦胚芽(WG)を60%、カボチャ種子(PS)を60%、米ぬか(RB)を40%それぞれ配合した低脂肪ケーキを作り、通常のケーキ(対照群)と比較しています。評価されたのは、物理化学的な性質、ミネラルやビタミンの含有量、色合い、テクスチャー(食感)、保存中の微生物の安定性、そして官能評価(食べたときのおいしさや好みの評価)です。

その結果、小麦胚芽を加えたケーキは、タンパク質、食物繊維、ポリフェノールやフラボノイド(植物由来の成分)の含有量が最も高く、ビタミンE・ビタミンB群やミネラルも豊富であったと報告されています。また、これらのケーキは対照群に比べて、硬さ、ガム感(噛んだときの粘りのような感覚)、そして噛みごたえが増していたことも示されています。一方、米ぬかを加えたケーキでは、抗酸化活性がより高く、ミネラル含有量も改善していたとされています。興味深いことに、全体的な官能的な好ましさについては、どの配合のケーキの間にも大きな差は見られなかったとのことです。さらに、脂肪代替素材を加えたケーキはいずれも、保存中の微生物学的な安定性が向上していたことも報告されています。

この研究はあくまで一つの試験で得られた結果であり、これらのケーキを食べることで健康効果が得られると断定するものではありません。あくまで、小麦胚芽・カボチャ種子・米ぬかという素材が、低脂肪でありながら栄養価を高め、抗酸化性や保存性にも配慮したケーキづくりに活用できる可能性を示す研究として位置づけられます。実際の商品化や日常的な摂取における効果については、今後さらなる研究の積み重ねが必要と考えられます。

脂肪を減らしながらも、タンパク質や食物繊維、ビタミン・ミネラルといった栄養素を補い、しかも味や食感の面でも受け入れられやすいお菓子づくりは、多くの人にとって身近なテーマではないでしょうか。今回の研究は、身近な農産物由来の素材が、そうした「おいしさと栄養の両立」に貢献しうる一つの選択肢となりうることを示すものといえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:小麦胚芽、米ぬか、カボチャ種子を脂肪代替素材として用いた低脂肪ケーキの配合開発と特性評価(エヌピージェイ・サイエンス・オブ・フード・2026年07月)