著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Biodiversitas Journal of Biological Diversity
ライセンス: CC BY-NC-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ミニトマトは世界的な感染症の流行以降、健康的な果物として市場での需要が高まっているとされます。しかし栽培は主に高原地帯で行われており、他の野菜栽培との競合にもさらされています。そこで低地条件でも育てられる品種を開発する必要があるという課題意識から、この研究は出発しています。新しい優良品種を作るには、まず交配の親として使う系統同士がどれだけ形質面で異なっているかを把握しておく必要があります。
研究チームは、インドネシア・ボゴール農科大学(Institut Pertanian Bogor)が保有するミニトマトの系統(雑種系統と非雑種系統を含む)9種類を対象に、低地にある同大学附属職業学校の温室(自動潅水・施肥システムを備える)で栽培し、単一要因の乱塊法という実験計画に基づいて形態を比較しました。著者らはボゴール農科大学の農学・園芸学科や附属職業学校、さらにインドネシア国立研究革新庁の研究者らが名を連ねています。
9系統の間で何が違ったのか
まず種子の発芽率は系統によって80〜95%の幅があり、開花や収穫の時期にもばらつきが見られました(開花は移植後26日、収穫は移植後62日という早いものも記録されています)。果実については、長さの平均が3.28センチメートル、直径の平均が19.24ミリメートル、重さの平均が7.23グラムとされ、これらの数値にも系統間で大きな幅(形態的な分化)があったと報告されています。
研究チームはこれらの量的な特徴に加え、果実の形や色といった質的な特徴も含めて9系統を分析し、似た者同士をグループ分けするクラスター解析を行いました。その結果、9系統は大きく3つのグループに分かれ、このグループ分けをもとに交配に使う親系統を選ぶ手がかりが得られたとしています。
中でも「IPBTC 147」という系統は、他の系統とはっきり異なる独自のグループを形成しました。果実の形や色が特徴的で、特に黄色い果実をつける点が目を引きます。平均果重は5グラムで、果柄(果実を支える柄)の長さは9系統の中で最も長い2.27センチメートルだったと報告されています。この黄色い果実を赤い果実の系統と掛け合わせれば、次世代(F2世代)で多様な形質が現れる可能性があると著者らは述べています。
この研究の位置づけ
この研究は、あくまで低地栽培という条件下で9系統の形態を比較し、今後の交配育種に使える基礎データを整理したものです。得られた形態情報は、低地に適応したミニトマト品種を開発する際に親系統を選ぶための判断材料として役立つことが期待される、という段階の報告であり、実際に新品種が作られ、その優劣が確かめられたわけではありません。一つの研究であり、ここで示された系統間の違いが今後の交配や別の栽培環境でも同様に再現されるかどうかは、さらなる検証が必要な点として留意しておくとよいでしょう。
まとめ
この研究は、健康的な果物として注目されるミニトマトを、これまで主流だった高原だけでなく低地でも育てられるようにするための土台づくりとして、9つの系統の発芽率や開花・収穫時期、果実の大きさや色といった特徴を比較したものです。特に黄色い果実をつける「IPBTC 147」系統など、系統間の違いが交配育種の親選びに活用できる可能性が示された、基礎研究としての位置づけの報告といえます。
原著論文の著者・所属:Zulfikar Damaralam Sahid(Vocational School, Institut Pertanian Bogor. Jl. Kumbang No. 14, Bogor 16128, West Java, Indonesia)、Abdul Qadir(Department of Agronomy and Horticulture, Faculty of Agriculture, Institut Pertanian Bogor. Jl. Meranti, IPB Darmaga Campus, Bogor 16680, West Java, Indonesia)、MUHAMAD SYUKUR(Department of Agronomy and Horticulture, Faculty of Agriculture, Institut Pertanian Bogor. Jl. Meranti, IPB Darmaga Campus, Bogor 16680, West Java, Indonesia)、Kharisma Firman Ariyanto(Department of Agronomy and Horticulture, Faculty of Agriculture, Institut Pertanian Bogor. Jl. Meranti, IPB Darmaga Campus, Bogor 16680, West Java, Indonesia)、ALDI KAMAL WIJAYA(Vocational School, Institut Pertanian Bogor. Jl. Kumbang No. 14, Bogor 16128, West Java, Indonesia)、PUNJUNG MEDARAJI SUWARNO(Vocational School, Institut Pertanian Bogor. Jl. Kumbang No. 14, Bogor 16128, West Java, Indonesia)、Henny Rusmiyati(Vocational School, Institut Pertanian Bogor. Jl. Kumbang No. 14, Bogor 16128, West Java, Indonesia)、Andi Nadia Nurul Lathifa Hatta(Research Center for Genetic Engineering, National Research and Innovation Agency. Jl. Raya Bogor Km. 46, Cibinong, Bogor 16911, West Java, Indonesia)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Zulfikar Damaralam Sahid, Abdul Qadir, MUHAMAD SYUKUR, et al. Quantitative and qualitative morphological diversity among nine cherry tomato (Solanum lycopersicum) genotypes grown under lowland conditions. ビオディヴェルシタス・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ダイバーシティ (2026). DOI: 10.13057/biodiv/d270622. 原著ライセンス: cc-by-nc-sa.