若い女性のやせすぎは日本で長年指摘されてきた健康課題です。20代女性のやせの割合は20.2%にのぼるとされ、その背景にはやせ願望やダイエット経験、運動習慣の変化などが関わっていると考えられています。やせている女性の多くは栄養摂取が不足しており、なかでも葉酸やビタミンB12の不足が目立つという報告もあります。こうした栄養の偏りは、将来の妊娠や母体の健康にも影響しうると考えられており、若い世代の栄養状態を早い段階から把握することが公衆衛生上の課題とされています。今回紹介する研究は、女子大学生を対象に、体格だけでなく「実際に必要なエネルギー量に対して、どれだけ食べられているか」という視点から栄養摂取の実態を調べたものです。
どのように調べたのか
この研究は、愛知県内の私立大学(A大学)看護学部に在籍する1〜4年生の女子学生約500名を対象に、2022年12月から2023年2月にかけて実施されました。学内掲示で参加者を募集したところ53名が同意し、書面と口頭で説明を受けたうえでインフォームド・コンセントを得ています。回答に欠損や明らかに不自然な値があった3名を除いた50名分のデータが解析対象となりました。
調査には「簡易型自記式食事歴質問票(BDHQ)」という、A3両面4ページ・約80問・58食品項目から構成される質問票が使われました。回答には約15分程度かかり、直近1か月の食習慣をもとにエネルギーや栄養素の摂取量、食品群の摂取量などを推定できるよう設計されています。これは、より詳細な食事歴質問票(DHQ)を簡略化したもので、日本人成人を対象とした大規模な疫学調査や保健指導で広く使われてきた実績があるとされます。ただし塩分摂取量など一部の栄養素については、推定の精度に限界があることも述べられています。身長・体重は質問票記入時に自己申告してもらい、そこからBMI(体格指数)を算出しました。
参加者は、日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン(2022年)」の基準に沿って、やせ(BMI18.5未満、7名)と普通体重(BMI18.5以上25.0未満、41名)に分類されました。BMI25.0以上の肥満1度に該当した2名は、食事パターンが大きく異なると想定されたためBMI比較からは除外されています。一方、個人ごとに算出した推定エネルギー必要量を実際の摂取エネルギーが満たしていたかどうかでも参加者を分類し、「エネルギー摂取不足群」(43名)と「エネルギー摂取適正・過剰群」(7名)の2群を設定しました。こちらの分析には、肥満1度の2名も含めて全員が対象となっています。年齢は18〜22歳(中央値19.0歳)、身長は148.8〜171.5cm、体重は38.5〜68.0kg、BMIは16.2〜27.0の範囲でした。
研究でわかったこと
BMIによる「やせ群」と「普通体重群」を比べたところ、エネルギー摂取量や三大栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物)の摂取量に統計的な差は見られませんでした(p>0.05)。さらにミネラルやビタミンなど他の栄養素についても、BMIによる群分けでは明確な差は確認されなかったとされています。
一方、推定エネルギー必要量を満たしているかどうかで分けた比較では、はっきりとした違いが見られました。エネルギー摂取不足群では、たんぱく質摂取量が1日65g未満だった人が86.0%(37名)、脂質が1日50g未満だった人が62.8%(27名)、炭水化物が1日250g未満だった人は88.4%(38名)にのぼり、いずれも「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に基づく目安を下回る人が多数を占めていました。統計的な比較でも、たんぱく質・脂質・炭水化物に加え、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、ビタミンB1、ビタミンC、葉酸、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、食物繊維、食塩相当量、ショ糖といった項目で、エネルギー摂取不足群の摂取量はエネルギー摂取適正・過剰群より有意に少ないという結果でした(p<0.05またはp<0.01)。なお、ビタミンDとビタミンB12については両群に統計的な差は見られませんでした。
食品の内容にも特徴がみられ、エネルギー摂取不足群では、低脂肪乳、ツナ缶、豆腐や厚揚げなどの大豆製品、根菜類、きのこ類、紅茶・ウーロン茶、柑橘類、柿、いちごといった、比較的健康を意識した食品を多く摂る一方で、砂糖や揚げ物といった高脂質・高糖質の食品も同時に多く摂る傾向がみられたとされています。論文では、こうした一見矛盾する食行動の背景に、社会的なストレスや日々の心理的な負担が高脂質・高糖質food品への欲求を高めている可能性があるという指摘も紹介されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
著者らは、貧血に関わる栄養素(鉄、亜鉛、ビタミンB12、ビタミンC、葉酸)についてBMIによる群分けでは明確な差が出なかった一方、エネルギー摂取不足群ではこれらの栄養素の不足が目立ったとし、体格だけを見ていては栄養面の問題を見落とす可能性があると論じています。そのうえで、女子大学生への栄養評価にはBMIに加えて、個人の推定エネルギー必要量に対する充足度も併せて検討し、一人ひとりに合わせた栄養指導を行う必要があると結論づけています。
ただし著者ら自身が述べているように、この研究には複数の限界があります。単一の大学の看護学生を対象とした横断調査であり、対象人数も比較的少ないため、選択バイアスが生じている可能性があります。また、自己記入式のBDHQを用いたことによる回答バイアスの可能性も指摘されており、一人暮らしか実家暮らしかといった生活状況や、朝食欠食の有無などの基本的な生活背景については十分に評価されていません。体組成や身体活動量、心理社会的な要因についても詳細な測定は行われていません。著者らは今後、多様な集団を対象とした縦断的な研究や、客観的な栄養評価手法、心理・環境要因も含めた多面的な分析が必要だとしています。この研究はあくまで予備的な検討であり、結論が確定したものではない点に留意が必要です。
まとめ
この研究では、看護学生である女子大学生50名を対象にBDHQを用いて食事内容を調べたところ、BMIによる体格の分類だけでは栄養摂取の違いが見えにくい一方、推定エネルギー必要量を満たしているかどうかで分けると、炭水化物をはじめとする多くの栄養素で明確な差が示されました。研究チームは、女子大学生の栄養状態を捉えるにはBMIだけでなくエネルギー充足度も踏まえた、個別的な視点が必要だとしています。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Masato Sugiura, Harumi Kato, Keisuke Iwase, et al. Preliminary investigation of nutritional intake among female university students using the brief-type self-administered diet history questionnaire (BDHQ).. パブメド (2026). DOI: 10.20407/fmj.2025-031.