切り分けたばかりのすいかにかぶりつくと、口いっぱいに広がる果汁とともに、夏そのものを頬張っているような心地になります。その一玉の主産地が熊本県です。すいかの収穫量ランキング(農林水産省「作物統計」令和4年産)を見ると、熊本県は約48,000トンで全国第1位。2位の千葉県が約36,800トン、3位の山形県が約31,400トンと続き、全国収穫量のおよそ15%を熊本県だけで占めています。しかも、すいかは夏を代表する果実的野菜で、市場入荷は7〜8月に最大になるとされます。全国トップの産地と旬の盛りが重なるいまは、すいか 赤肉種 生を味わう絶好の時季といえます。熊本は植木すいかの産地としても知られ、黒々とした皮の下に赤い果肉を隠すあの佇まいこそ、すいからしさの完成形です。
黒皮赤肉、そして「西瓜」という名の由来
成分表が対象とするすいかも、黒皮で果肉が赤色のものと定義されています。つまり熊本すいかの見た目そのものが、栄養データの「標準形」でもあるわけです。ちなみに漢字の「西瓜」は、中国語ですいかを指す「シーグァ」の音がそのまま持ち込まれた名だといわれています。西からやってきた瓜、という字面の由来を知ると、あの縞模様の一玉が、少し遠い旅をしてきたように見えてきます。なお熊本すいかは成分表に個別の収録がないため、ここでは一般的なすいか赤肉種生の実測値で見ていきます。
大部分が水分、という潔さ
100gあたりのエネルギーは41kcalと軽やかで、たんぱく質0.6g、脂質0.1g、炭水化物9.5g、食物繊維0.3g。エネルギーの軽さも食物繊維の少なさも、果肉の大部分を占める水分の多さと表裏一体です。水分がたっぷりだからこそ、暑い盛りに口にして心地よく、その一方で一度に食べる量もそれほど多くはなりません。1/8玉で約400g、中1個は約4kgにもなりますから、家族や友人と切り分けてこそ楽しめるサイズ感といえます。
冷やし方・切り方にも「盛り」の楽しみがある
買ってきたすいかは、ぴったりとラップで包んで水分を逃さないようにするのが保存の基本です。4等分にして冷蔵すれば5日、冷凍なら1カ月ほど日持ちする目安があります。冷凍したすいかは常温に1分置くだけで切れるようになるので、シャーベット感覚でそのまま頬張るのも夏らしい食べ方です。皮の白い部分を捨てずにみそ漬けにする楽しみ方も伝えられています。赤い果肉だけでなく皮まで生かし切るのが、盛りの一玉を味わい尽くすコツかもしれません。
おなかを冷やしやすい一面も
薬膳では、すいかはおなかを冷やすとされ、下痢気味の人やお腹の弱い人は量を控えめにするとよいといわれます。とはいえ、それは「食べすぎ」への注意であって、盛りの時季に一切れを楽しむことを妨げるものではありません。収穫量全国一を誇る熊本すいかが並ぶ7〜8月、黒皮と赤肉のコントラスト、そして西瓜という名の由来まで含めて、いまだけの一玉を、ゆっくり切り分けて味わってみてください。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。収穫量は農林水産省「作物統計」(令和4年産)によります。