この研究は、韓国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Internal and Emergency Medicine
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:「食事の塩分の濃さ」と脂肪肝の関係を探る
肝臓に脂肪がたまる脂肪肝は、世界の成人の約35%にみられるとされる、公衆衛生上の大きな課題です。韓国でも、いわゆる非アルコール性脂肪性肝疾患の有病率は約30%と推定されています。脂肪肝は、単純な脂肪の蓄積から炎症、線維化、肝硬変、肝がんへと進むことがあります。
韓国の伝統的な食事は、発酵食品やスープ、塩蔵品が多く、ナトリウム(食塩の主成分)の摂取量が多い傾向にあります。ただ、ナトリウムの摂取量は食べる量全体に強く左右されます。そこで著者らは、摂取エネルギー1,000キロカロリーあたりのナトリウム量を表す「ナトリウム密度」に注目しました。食べる量の違いをならし、食事そのものの塩分の濃さを比べるための指標です。
研究チームの目的は、韓国の成人を代表する集団で、ナトリウム密度と脂肪肝の可能性の高さとの関連を調べ、ナトリウム密度が高くなるにつれて関連がどう変化するか(用量反応関係)を明らかにすることでした。
何をどう調べたか
研究チームは、2021〜2023年の韓国国民健康栄養調査のデータを用いました。この調査は、国全体を代表するよう抽出された人々を対象に行われています。20歳未満の人、B型・C型の慢性ウイルス性肝炎がある人、必要なデータが欠けている人を除いた14,445人が分析対象です。ある一時点のデータを比べる「横断研究」と呼ばれる設計です。
食事内容は、訓練を受けた栄養士が24時間分の食事を1回聞き取る方法で調べました。
大規模な調査では、画像検査や肝臓の組織検査で脂肪肝を確かめることは難しいため、著者らは「肝脂肪指数(HSI)」という簡便な判定指標を使いました。HSIは、体格指数(BMI)、肝臓の状態を反映する血液検査値ALTとASTの比、性別、糖尿病の有無から計算されます。36以上を「脂肪肝の可能性が高い」、30未満を「可能性が低い」とみなし、その間の30以上36未満は判定が難しい中間域として別に分析しました。つまり、この研究で扱っているのは、医学的に確定診断された脂肪肝ではなく、指標上「脂肪肝の可能性が高い」状態です。
分析では、年齢と性別、喫煙、多量飲酒、運動習慣、血中脂質、腎機能の指標である血清クレアチニン、総摂取エネルギーなどの影響を段階的に考慮しました。さらに、これらに加えてカリウム密度(1,000キロカロリーあたりのカリウム量)も考慮に入れた追加の分析(感度分析)を行い、結果が変わらないかを確かめています。
主な結果:塩分の濃い食事ほど、指標上の脂肪肝の可能性が高い傾向
14,445人のうち、HSIが36以上だったのは2,271人でした。このグループのナトリウム密度は1,000キロカロリーあたり平均1,865ミリグラムで、36未満のグループの1,710ミリグラムより高い値でした。一方、カリウム密度は低めでした。
さまざまな要因を考慮した分析でも、関連は残りました。ナトリウム密度が1,000キロカロリーあたり100ミリグラム高いごとに、HSIで脂肪肝の可能性が高いと判定される見込み(オッズ)が約1.05倍になる関連がみられました。カリウム密度を加えた感度分析でも、この関連は統計的に有意なままでした。判定が難しい中間域のグループでも、同じ方向の関連が確認されています。
参加者をナトリウム密度で4つのグループに分けて比べると、最も高いグループ(1,000キロカロリーあたり約2,150ミリグラム以上)は、最も低いグループ(1,250ミリグラム未満)に比べて、指標上の脂肪肝のオッズが約36%高いと報告されています。ナトリウム密度と関連の強さの関係を曲線で詳しく調べた分析では、観察された範囲でおおむね直線的にオッズが上がる傾向が示されました。ただし、ナトリウム密度が極端に高い人や低い人はデータが少なく、その範囲の推定は不確かさが大きいと著者らは述べています。
肥満の目安(BMI25)で分けて分析しても、肥満でない人と肥満の人の両方で関連がみられました。もっとも、HSIの計算にはBMIそのものが含まれているため、この結果から関連が体脂肪と無関係だとはいえない、と著者らは注意を促しています。
この研究が示すこと
著者らは、高塩分の食事が肝臓の脂肪蓄積に関わりうる仕組みについて、動物実験などで示された複数の仮説を紹介しています。しかし、今回の研究は一時点のデータを比べた観察研究であり、ナトリウムの多い食事が脂肪肝を引き起こすという因果関係を示したものではありません。食事の評価が1日分の聞き取りに限られること、脂肪肝を画像や組織検査ではなく指標で判定していることも限界として挙げています。また、ナトリウム密度は塩分そのものだけでなく、食事全体の構成を反映している可能性もあると指摘しています。
研究チームは、エネルギーで調整したナトリウム密度が、集団レベルで指標上の脂肪肝と関連する栄養面の目印になりうると結論づけています。同時に、この結果を「減塩すれば脂肪肝を防げる」証拠と解釈すべきではないとも明記しています。食事の塩分の濃さと、指標で推定した脂肪肝の可能性との関連を、全国規模のデータで具体的な数値として示した研究といえます。
著者:Misuk Oh(Department of Family Medicine, Chung-Ang University Gwangmyeong Hospital, Chung-Ang University College of Medicine, 110 Deokan-ro, Gwangmyeong-si, Gyeonggi-do, 14353, Republic of Korea)、Yun-Hwan Oh(Department of Family Medicine, Chung-Ang University Gwangmyeong Hospital, Chung-Ang University College of Medicine, 110 Deokan-ro, Gwangmyeong-si, Gyeonggi-do, 14353, Republic of Korea)、Woo-Young Shin(Department of Family Medicine, Chung-Ang University Gwangmyeong Hospital, Chung-Ang University College of Medicine, 110 Deokan-ro, Gwangmyeong-si, Gyeonggi-do, 14353, Republic of Korea)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Misuk Oh, Yun-Hwan Oh, Woo-Young Shin. Dietary sodium density as a potential nutritional marker of HSI-defined hepatic steatosis in Korean adults: a nationwide cross-sectional study with a dose–response analysis. Internal and Emergency Medicine 2026-10-07. DOI: 10.1007/s11739-026-04551-3. 原著ライセンス:CC BY.