この研究は、インドネシア、マレーシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Scientific Reports
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
南国の果物「アンバレラ(スポンディアス・ドゥルシス)」をご存じでしょうか。東南アジアや中南米などで親しまれている果実で、近年は乳酸菌などを加えた「シンバイオティック飲料」の素材としても注目されています。シンバイオティック飲料とは、腸内で働くとされる善玉菌(プロバイオティクス)と、その菌のエサになる成分(プレバイオティクス)を組み合わせた飲み物のことです。今回紹介する研究では、このアンバレラを使った飲料に鉄分を加えたタイプも含めて4種類を作り、保存条件や配合の違いが飲料の性質や生物への影響にどう関わるかを調べています。
4種類の飲料を比較し、保存条件と抗酸化力を調べる
研究チームは、プレバイオティクスのみ(F1)、プロバイオティクスのみ(F2)、その両方を組み合わせたシンバイオティック(F3)、さらに鉄を強化したシンバイオティック(F4)の4種類の飲料を用意しました。これらを室温(25±2℃)と冷蔵(4±1℃)の2条件で8日間保存し、酸性度(pH)や色の変化、抗酸化能(体内の酸化ストレスに関わるとされる指標)を比較しています。
その結果、保存する時間や温度によってpHや色の安定性は有意に変化することが確認されました。特に室温保存では酸性化が進みやすく、色の変化も大きくなる一方、冷蔵保存ではこうした変化が抑えられる傾向が見られたとされています。
シンバイオティック配合で高い抗酸化能、ゼブラフィッシュ胚では濃度依存の反応
抗酸化能については、プレバイオティクスやプロバイオティクス単独の飲料よりも、両者を組み合わせたシンバイオティック配合(F3・F4)の方が高い値を示したと報告されています。具体的には、抗酸化力の指標の一つであるABTSのIC₅₀値(値が低いほど抗酸化力が高いとされる指標)が58.28〜61.02ppmと低く、還元力を示すFRAP値も最大6.98mg AAE/100gに達したとされています。
また、この研究ではゼブラフィッシュの胚を用いた実験も行われました。ゼブラフィッシュは発生生物学や毒性評価の分野でよく使われるモデル生物です。飲料の濃度を変えて胚に曝露させたところ、濃度が高くなるほど胚に影響が生じる「濃度依存的な反応」が確認され、半数致死濃度(LC₅₀)は22.32〜54.19µg/mLの範囲だったとされています。さらに、鉄を強化した配合(F4)は、より高い濃度で曝露した際に、他の配合と比べて感受性が高い(影響が出やすい)傾向が見られたと報告されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
今回の結果は、あくまで特定の配合・保存条件のもとで行われた実験室レベルの評価であり、この飲料を摂取した場合の人への効果や安全性を直接示すものではない点に注意が必要です。ゼブラフィッシュ胚での反応が、そのままヒトへの影響を意味するわけでもありません。論文の著者らも、保存中の代謝物の変化やプロバイオティクスの生存性、包括的な安全性評価については今後さらに研究が必要だと述べています。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点を踏まえて読むことが大切です。
まとめ
この研究では、鉄強化を含む4種類のアンバレラ発酵飲料について、配合と保存条件がpHや色調、抗酸化能、そしてゼブラフィッシュ胚への濃度依存的な反応に影響することが示唆されました。プレバイオティクスとプロバイオティクスを組み合わせたシンバイオティック配合は抗酸化能が高い傾向にある一方で、鉄強化配合では高濃度曝露時により強い反応が見られたとされ、機能性食品としての可能性と今後の安全性評価の必要性の両方が浮かび上がる結果となっています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):鉄強化シンバイオティックのスポンディアス・ドゥルシス飲料における酸化還元安定性・抗酸化能・生物学的応答(サイエンティフィック・リポーツ・2026年07月)
著者:Farah Nuriannisa(Department of Nutrition, Faculty of Health, Universitas Nahdlatul Ulama Surabaya, Surabaya, 60237, East Java, Indonesia)、Viera Nu’riza Pratiwi(Center for Health, Nutrition, and Halal Business Studies, Universitas Nahdlatul Ulama Surabaya, Surabaya, 60237, East Java, Indonesia)、Azrina Azlan(Department of Nutrition, Faculty of Medicine and Health Sciences, Universiti Putra Malaysia, UPM, Serdang, 43400, Selangor Darul Ehsan, Malaysia)、Pratiwi Hariyani Putri(Department of Nutrition, Faculty of Health, Universitas Nahdlatul Ulama Surabaya, Surabaya, 60237, East Java, Indonesia)、Anugrah Linda Mutiarani(Department of Nutrition, Faculty of Health, Universitas Nahdlatul Ulama Surabaya, Surabaya, 60237, East Java, Indonesia)、Catur Wulandari(Department of Nutrition, Faculty of Health, Universitas Nahdlatul Ulama Surabaya, Surabaya, 60237, East Java, Indonesia)、Ambar Fidyasari(Center for Local Food Development Studies, Universitas Brawijaya, Malang, 65145, Indonesia)、Shilfanny Juniar(Faculty of Fisheries and Marine Sciences, Universitas Brawijaya, Malang, 65145, Indonesia)、St. Haryantin(Department of Nutrition, Faculty of Health, Universitas Nahdlatul Ulama Surabaya, Surabaya, 60237, East Java, Indonesia)、Nabila Putri Dwi Wardani(Department of Nutrition, Faculty of Health, Universitas Nahdlatul Ulama Surabaya, Surabaya, 60237, East Java, Indonesia)、Sanita Aliyah Putri(Department of Nutrition, Faculty of Health, Universitas Nahdlatul Ulama Surabaya, Surabaya, 60237, East Java, Indonesia)、Alya Intan Permata(Department of Nutrition, Faculty of Health, Universitas Nahdlatul Ulama Surabaya, Surabaya, 60237, East Java, Indonesia)、Nurulhuda Mohammad Isa(Research Centre for Sustainability Science and Governance (SGK), Institute for Environment and Development (LESTARI), Universiti Kebangsaan Malaysia, UKM, Bangi, 43600, Selangor, Malaysia)、Muhammad Rizal Razman(Research Centre for Sustainability Science and Governance (SGK), Institute for Environment and Development (LESTARI), Universiti Kebangsaan Malaysia, UKM, Bangi, 43600, Selangor, Malaysia)