ピタヤと聞くとドラゴンフルーツを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、今回取り上げる研究の対象は、メキシコなどに自生するStenocereus属のサボテンが実らせる果実です。この果実は抗酸化物質を豊富に含むことで知られており、生食や加工品だけでなく、発酵させてワインのような飲料に仕立てる試みも行われています。今回紹介する研究は、この「ピタヤワイン」を仕込む際に、どんな糖分(炭素源)を加えるとより良い発酵が進み、抗酸化力の高い飲料に仕上がるのかを調べたものです。

研究チームはメキシコの複数の教育・研究機関に所属する研究者らで構成されています。所属機関はメキシコ国内の工科大学系の機関であり、この所属自体から研究結果の傾向を判断することはできません。

どのように調べたのか

研究では、ピタヤの果汁(マスト)の糖度を22°Brixに調整したうえで、酵母Saccharomyces cerevisiaeを加えて27℃で9日間発酵させました。ここでのポイントは、果汁にどの炭素源(糖の補給源)を加えるかを変えて、複数の条件を比較した点です。発酵の進み具合は、可溶性固形分(°Brix)の変化、残存する還元糖の量、生成されたエタノール量、発酵収率、発酵効率という指標で評価されました。さらに出来上がった飲料については、色調、総フェノール含量、ベタライン(サボテン系の果実に含まれる色素成分)、そしてDPPH法・ABTS法・FRAP法という3種類の手法を用いた抗酸化能の測定が行われています。

研究でわかったこと

炭素源の違いによって、発酵の進み方にも最終的な飲料の性質にも統計的に意味のある差が見られたと報告されています。すべての条件で、発酵開始から3〜5日の間に°Brix(糖度)が大きく低下する傾向が共通して見られました。

その中で、アガベシロップを補ったピタヤ果汁(論文中ではAASPと表記)が最も発酵性能に優れていたとされ、エタノール濃度は84.16 g/L、発酵収率は消費した糖1gあたり0.46gのエタノール、発酵効率は89.71%と、いずれも比較した条件の中で最も高い値を示しました。

抗酸化能についても炭素源による違いが見られました。FRAP法とABTS法では、発酵後のAASPが最も高い抗酸化能を示し、それぞれ640.90±2.57、11,568.33±147.99 µmol TE/mLという値が報告されています。一方でDPPH法によるラジカル消去活性が最も高かったのは、発酵後のアガベシロップ単体(AASと表記される条件)でした。また総フェノール含量については、発酵前のアガベシロップ添加ピタヤ(BASP)が404.94±1.85 mg GAE/Lと最も高い値を示したとされています。これらの結果から、著者らはアガベシロップが発酵効率と抗酸化ポテンシャルの両方を高い水準で両立できる炭素源だと結論づけています。

この研究を読むうえで気をつけたいこと

この研究は特定の条件下での実験結果であり、ここで示された数値がそのまま市販の飲料や別の栽培条件のピタヤに当てはまるとは限りません。また、抗酸化能の測定はDPPH・ABTS・FRAPという実験室的な指標に基づくものであり、これらの値が高いことが直接的に健康への効果を保証するものではない点にも注意が必要です。一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。

まとめ

この研究では、ピタヤ果汁に添加する炭素源を変えることで、発酵の効率や出来上がった飲料の抗酸化能に違いが生じることが示されました。特にアガベシロップを用いた条件で、エタノール生成や発酵効率、抗酸化能の面で良好な結果が得られたと報告されています。今後、こうした知見がピタヤを使った発酵飲料づくりの基礎データとして活用されていくことが期待されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Luisaldo Sandate-Flores, Jorge A. Santiago-Urbina, Rebeca G. Ortiz Mena, et al. Influence of carbon sources on the physicochemical and antioxidant properties of pitaya (Stenocereus sp.) wines. ジャーナル・オブ・ザ・プロフェッショナル・アソシエーション・フォー・カクタス・ディベロップメント (2026). DOI: 10.56890/jpacd.v28i.617. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.