著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
人々の食生活を健康的な方向へ導くために、各国では栄養教育、食品表示、課税などさまざまな政策手段が用いられています。しかし、それらが実際に十分活用されているかどうかは、現場を知る専門家の視点から確かめる必要があります。
研究チームは、ポーランド、フランス、イギリス、ドイツの栄養専門職を対象に意見を比較しました。調べたのは、政策手段の重要性を専門職がどう感じているかと、実際にどの程度使われていると感じているかです。あわせて、政策の効果を左右する対象者の特徴や、栄養に関する情報源の信頼性についても尋ねました。
調査の方法
研究は、ある一時点で回答を集める横断的なアンケート調査として行われました。回答したのは131人の栄養専門職で、内訳はポーランド56人、フランス36人、イギリス26人、ドイツ13人です。
回答者は、14種類の政策手段、11項目の対象者の特徴、9種類の情報源をそれぞれ評価しました。著者らは、国ごとの平均的な評価の違いを統計的に比べる分散分析などの手法を使い、年齢や職業経験の影響を調整した比較も行いました。自由記述による回答も分析しています。
主な結果
論文によると、どの政策手段でも、専門職が感じる重要性は実際の活用度を一貫して上回っていました。差が特に大きかったのは子ども・青少年への栄養教育で、重要性の平均評価は4.59、活用度は2.76でした。この差は統計的に有意と報告されています。
ほかにも、食品の加工度に関する情報(重要性3.92、活用度2.44)、栄養士による推奨(3.86と2.94)、健康的でない食品への増税(3.46と2.50)、ソーシャルマーケティング(3.60と3.19)で差がみられました。ソーシャルマーケティングとは、商業広告の手法を健康的な行動の普及に応用する取り組みです。
情報源の信頼性については、年齢と職業経験を調整し、多重比較による誤りを抑える補正を行ったうえでも、国による評価の違いが認められました。違いがみられたのは、健康強調表示、栄養強調表示、ソーシャルマーケティングキャンペーン、料理ブログ、栄養アプリです。健康強調表示や栄養強調表示とは、食品が健康や栄養面で持つ特徴をうたう表示のことです。
自由記述の回答では、学校での栄養教育の義務化、資格を持つ専門職へのアクセス改善、食品の広告や表示に対するより厳格な規制の必要性が強調されていました。
研究が示すこと
著者らは、栄養専門職が主要な政策手段、特に教育的な手段と税制などの財政的な手段について、明らかな活用不足を感じていると結論づけています。
そのうえで論文は、政策の意図と現実の効果との隔たりを埋めるために、各国の状況に合わせた政策の立案と実施に栄養士がより深く関わることを提言しています。今回の調査は、政策の重要性と実際の活用のあいだに専門職が感じている差を、4か国の比較を通して示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Paweł Bryła(Department of International Marketing and Retailing, University of Lodz, 90-131 Łódź, Poland)、Beata Ciabiada-Bryła(Department of Preventive Medicine, Medical University of Lodz, 92-213 Lodz, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Paweł Bryła, Beata Ciabiada-Bryła. Perspectives of European Nutrition Professionals on Healthy Eating Policies: An International Comparative Study of Implementation Gaps and Information Credibility. Nutrients 2026-10-24. DOI: 10.3390/nu18213493. 原著ライセンス:CC BY.