著者の所属・活動拠点の国は、イラン、カナダです。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

総量ではなく油の「内訳」に注目する

揚げ物は味や食感、香りが好まれる一方で、調理中に多くの油を吸収します。この論文で著者らは、従来の揚げ方では吸収された油が食品全体の重さの最大50%に達しうるという既存研究を紹介しています。そのうえで、揚げ物に含まれる油を減らすことは食品科学の重要な研究テーマの一つだと位置づけています。真空フライや電子レンジを使った揚げ方など、油を減らすための新しい技術もこれまでに数多く検討されてきました。

ただし著者らによれば、これまでの研究や総説の多くは、食品に含まれる油を「総油分」という一つの量として扱ってきました。この総説の特徴は、総油分を三つの種類に分けて考える点にあります。一つ目は、揚げている最中に食品の内部へ入り込む「構造油」です。二つ目は、食品の表面に付着したまま内部には入らない「表面油」です。三つ目は、揚げ終わって冷める間に表面から内部へ吸い込まれる「浸透表面油」です。

研究チームは、従来型と新しい揚げ技術をこの三つの油の観点から比較することを目的としました。そのうえで、各技術が油の移動のどの段階に影響するのかを明らかにし、文献の食い違いや知識の空白を整理しようとしています。

文献の調べ方と、油が入り込む仕組み

この論文は新しい実験を行ったものではなく、既存研究をまとめた総説です。著者らは複数の学術データベースを使い、2000年から2026年に発表された英語の論文や書籍の章を検索しました。検索語には、油で揚げる通常の方法、圧力フライ、真空フライ、エアフライ、電子レンジフライ、赤外線フライ、G-フライ、油の吸収とそのモデル化などが含まれています。

論文はまず、油が食品に入り込む仕組みを整理しています。表面油の量は、油が表面に付着する力と、重力で流れ落ちる量との釣り合いで決まります。劣化した油は粘り気が増すため、表面に付きやすくなるとされています。構造油は、揚げている間に水分が蒸発してできたすき間に、油が置き換わる形で入ると説明されています。細い孔が液体を引き込む「毛細管現象」も油の吸収に関わり、孔が小さいほど引き込む力が強くなるとされています。

著者らが特に重視しているのが、冷却中の吸収です。揚げている間は、食品内部の水分が蒸気となって外へ噴き出し、その圧力が油の侵入を妨げます。ところが揚げ終わって温度が下がると、蒸気が水に戻って内部の圧力が大きく下がります。その結果、表面にたまっていた油が孔の中へ吸い込まれます。多くの研究が、油の吸収はこの冷却の段階で最も多く起こると報告していると論文は紹介しています。

揚げ方によって変わる油の動き

通常の揚げ方について、著者らは次のように整理しています。揚げている間に入り込む構造油は、総油分の中で少ない割合にとどまります。油の多くは表面にとどまっており、取り出した後に温度が100℃を下回ると、内部の圧力低下によって吸い込まれます。その結果、この段階では浸透表面油が総油分の最も大きな部分を占めるとしています。揚げる温度と時間の影響については、研究によって結論が食い違ってきました。著者らは、その主な原因を実験の設計の違いに求めています。総油分だけを測った研究と、油を種類ごとに測った研究とで、結論が分かれやすいというのです。

密閉して加圧した状態で揚げる圧力フライは、通常の揚げ方より油の吸収が一貫して少ないと報告されています。これまでは、熱が速く伝わって揚げ時間が短くなることや、水分が保たれることが理由とされてきました。著者らはこれに加え、揚げ終わりに圧力を抜く段階で蒸気や液体が外へ逃げ、油の侵入を妨げている可能性を指摘しています。ただし、多くの研究は最終的な油の量しか報告していません。そのため、それぞれの要因がどの程度寄与しているのかは、まだ切り分けられていないとしています。

大気圧より低い圧力で揚げる真空フライは、低い温度で揚げられることと酸素がないことが、油の量を減らすなどの利点につながるとされています。一方で、揚げ終わって圧力を大気圧に戻す段階が油の吸収に大きく関わります。この段階が油を増やすのか減らすのかは、研究によって見解が分かれています。著者らは、圧力を戻す速さや食品の構造、水分量、遠心力で油を振り落とす処理の有無といった条件の違いが、その原因だろうと考えています。圧力を速く戻すと食品が圧縮されて油の入るすき間が減り、総油分を大きく減らしうるという報告も紹介されています。著者らは、真空フライがうまくいくかどうかは、低圧で揚げることそのものよりも、大気圧に戻す過程の制御にかかっていると述べています。

電子レンジを使った揚げ方については、圧力フライや真空フライに比べて研究結果のばらつきが大きいとされています。高い出力で油の吸収が減ったという報告がある一方で、急激な水分の噴出や組織の損傷によって吸収が増えたという報告もあります。著者らは、出力の強さだけでは油の吸収を予測できず、出力、加熱のむら、食品の構造の組み合わせが決め手になっているようだと整理しています。

「どれだけ」より「いつ、どこで」を見る意義

この総説から伝わるのは、揚げ方の違いが油の量をどう変えるかを理解するには、総油分という一つの数字では足りないということです。著者らによれば、どの技術も油を減らすことを目指していますが、その仕組みは共通ではありません。技術ごとに、水分の抜け方、表面の殻のでき方、表面に残る油、冷めるときの吸い込みなど、影響する段階が異なります。

また、研究ごとに温度や食品の形、成分、油の種類が大きく異なるため、どの揚げ方が優れているかを単純に比べることには慎重であるべきだと著者らは述べています。油を三つの種類に分けて、揚げる段階と冷める段階を区別して見ることが、一見矛盾する研究結果を読み解く手がかりになる。これが、この論文の中心的なメッセージです。

原著論文の著者・所属:Arash Ghaitaranpour(Department of Food Science and Technology Urmia University Urmia Iran)、Mohsen Esmaiili(Department of Food Science and Technology Urmia University Urmia Iran)、Zoleykha Fahimi vajargahi(Department of Food Science and Technology Urmia University Urmia Iran)、Michael O. Ngadi(Department of Bioresource Engineering McGill University Montreal Canada)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Arash Ghaitaranpour, Mohsen Esmaiili, Zoleykha Fahimi vajargahi, et al. From Deep‐Fat Frying to G‐Frying: Exploring Absorption Dynamics of Oil Fractions in Fried Foods. Food Science & Nutrition 2026-09-01. DOI: 10.1002/fsn3.72391. 原著ライセンス:CC BY.