この研究は、タイ、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

うどんは小麦粉・水・塩というごく単純な材料からつくられる伝統的な主食で、でんぷんを多く含みます。その一方で、ミネラルや機能性成分といった栄養面では不足しがちだと指摘されてきました。研究チームは、健康に役立つとされる天然素材を加えることで、血糖値の上がりやすさを示す指標を低く抑え、抗酸化のはたらきを高めたうどんをつくれないかと考えました。

用いたのは三つの素材です。一つ目はコンニャクイモの仲間であるアモルフォファルス・ムエレリ由来のグルコマンナン。これは水に溶けやすく、粘り気やゲル状の性質をもつ多糖類です。二つ目はアロエベラの粉末、三つ目はモリンガ(ワサビノキ)の葉の粉末で、いずれもポリフェノールなどの成分を含むことが先行研究で報告されています。これらで小麦粉の一部を置き換え、うどんの内部構造、色、ゆで戻り、食感、官能評価(味や見た目の好ましさ)、そして消化に関わる性質がどう変わるかを調べることが、この研究の狙いでした。

どのように調べたか

研究チームはまず、三つの素材の配合量を系統的に変える実験計画にもとづいて15通りの配合を検討し、官能評価の得点が高かったものなどから三つのレシピを選びました。グルコマンナン3.3%・アロエベラ1.4%・モリンガ葉0.5%の「S5」、グルコマンナン4.4%・アロエベラ0.5%・モリンガ葉1.6%の「S11」、グルコマンナン3.3%・アロエベラ2.7%・モリンガ葉0.5%の「Regression」です。これらを、小麦粉のみを使った対照サンプルと比較しました。

生地は幅3.0ミリの麺に押し出して成形し、熱湯で下ゆでしてから各種の分析にかけました。麺の内部では、共焦点レーザー走査顕微鏡という手法で、でんぷん・たんぱく質・脂質をそれぞれ別の色に染め分けて分布を観察しています。食感は圧縮試験によって、硬さや弾力、付着性などの項目で数値化しました。官能評価には、ふだん麺類を食べる50人が参加し、7段階で好みを答えています。

機能面については、試験管内での測定が行われました。抗酸化のはたらきはDPPHという試薬を使い、活性を半分に抑えるのに必要な濃度(IC50)で評価しています。この値は小さいほど、少量でよく効くことを意味します。血糖への影響については、消化酵素を使って食品を人工的に消化させ、糖がどれだけ放出されるかを測る方法で「推定グリセミックインデックス(eGI)」を算出しました。さらに、糖の分解に関わる酵素であるαグルコシダーゼのはたらきを、消化後のサンプルがどの程度抑えるかも調べています。

報告された主な結果

顕微鏡による観察では、素材を加えた麺は対照と比べて炭水化物・たんぱく質・脂質が均一に分布していたと報告されています。色については、モリンガ葉の量が0%から1.6%へ増えるにつれて麺は緑がかって暗くなり、明るさを示すL*値などが有意に変化しました。

ゆで戻りの水の吸収率は、グルコマンナンの割合が高いS11が6分・12分のいずれでも最も高くなりました。食感では、素材を加えた三つのレシピはいずれも付着性と凝集性が低下し、一方でガム性と弾力が増しています。アロエベラを多く含むサンプルは、ガム性が3.48ニュートンと最も高い値を示しました。

官能評価では、モリンガ葉が増えるほど受け入れられにくくなる傾向がみられ、モリンガ葉を最も多く含むS11は見た目・色・香り・味・総合評価で最も低い得点でした。研究チームは、消費者が好む黄色みとは対照的な緑がかった色合いが影響した可能性を挙げています。

機能性の測定では、モリンガ葉を最も多く含むS11が最も高い抗酸化活性を示し、IC50は44.05 mg/mLでした(値が小さいほど活性が高い)。推定グリセミックインデックスでは、対照が最も高く、グルコマンナンを最も多く含むS11は67.35(100点満点中)という中程度の区分にあたる値で、対照より有意に低くなりました。またαグルコシダーゼについては、モリンガ葉を最も多く含むサンプルが1,000 µg/mLの濃度で19.73%の阻害を示しました。ただしこの阻害の強さは、同じ濃度で比較した陽性対照のアカルボースには及ばなかったと報告されています。

この研究が示すこと

この研究が伝えているのは、身近な天然素材で小麦粉の一部を置き換えることが、うどんという単純な食品の性質を複数の面から変えうる、という点です。とくに興味深いのは、素材ごとに効き方が異なっていたことです。グルコマンナンを多く入れると糖の放出が抑えられ、食感の評価も改善しましたが、モリンガ葉を増やすと抗酸化活性は高まる一方で、緑色が強まって好まれにくくなりました。

つまり、機能性を高めることと、食べものとして選ばれることは、必ずしも同じ方向を向きません。研究チームが15通りの配合を比べ、官能評価も含めて検討したことは、この兼ね合いをどこに置くかという問いそのものが、機能性食品づくりの中心にあることを示しています。なお、今回の血糖や酵素に関する結果は、いずれも試験管内での測定にもとづくものです。

著者:P. Auppasuk(Expert Center of Innovative Health Food , Thailand Institute of Scientific and Technological Research , Pathumtani , Thailand)、Waraporn Sorndech(Expert Center of Innovative Health Food , Thailand Institute of Scientific and Technological Research , Pathumtani , Thailand)、S. Butseekhot(Expert Center of Innovative Health Food , Thailand Institute of Scientific and Technological Research , Pathumtani , Thailand)、Thongkorn Ploypetchara(School of Animal Technology and Innovation , Institute of Agricultural Technology , Suranaree University of Technology , Nakhon Ratchasima , Thailand)、Papungkorn Sangsawad(Expert Center of Innovative Herbal Products , Thailand Institute of Scientific and Technological Research , Pathumtani , Thailand)、Chiramet Auranwiwat(Research Center for Appropriate Technology , National Research and Innovation Agency (PRTTG-BRIN) , West Java , Indonesia)、Achmat Sarifudin

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):P. Auppasuk, Waraporn Sorndech, S. Butseekhot, et al. Impact of natural functional ingredients on physicochemical and functional properties of udon noodles. Food Research 2026-09-24. DOI: 10.26656/fr.2017.10(5).282. 原著ライセンス:CC BY.