著者の所属・活動拠点の国は、台湾です。
掲載誌:Current research in food science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC
研究の目的
肉を炭火で焼くと、「終末糖化産物(AGEs)」と呼ばれる物質ができます。AGEsは、たんぱく質と糖などが加熱で反応してできる化合物の総称です。抄録によると、炭火焼きの肉にできるAGEsは食品安全上の懸念とされています。
AGEsの生成を抑える材料はこれまでも検討されてきました。しかし、そうした材料を肉にどのような方法で使うかによって効果がどう変わるかを比べた研究は少なかったといいます。そこで研究チームは、凍結乾燥した果物パウダーを肉に使う方法の違いが、AGEsの生成にどう影響するかを比べました。
何を調べたか
研究チームは、まず8種類の果物パウダーを調べました。そのうえで、抗酸化成分と糖のバランスをもとに、イチゴとキンカンの2種類を選びました。果物には、AGEsを抑える働きが期待されるポリフェノールなどの抗酸化成分が含まれます。一方で、AGEsの材料となりうる糖も含まれます。そのため、両者の釣り合いが選択の基準になりました。
パウダーの使い方は、漬け込む、吹き付ける、肉に混ぜ込むの3通りです。対象は、脂肪の少ない豚ロースと、脂肪の多い豚バラです。炭火で焼いた後、代表的なAGEsであるカルボキシメチルリシン(CML)とカルボキシエチルリシン(CEL)の量を調べました。
主な結果
豚ロースでは、AGEsの抑制効果のばらつきのうち62%が使い方の違いで説明されました。果物の種類で説明されたのは13%でした。この結果は、2つの要因の影響を同時に分析する統計手法によるものです。また、吹き付ける方法は、ロースとバラのどちらでも高い抑制効果を保ったと報告されています。
しょうゆを含まない吹き付け用の配合では、AGEsの総量がイチゴで83%、キンカンで86%減少しました。著者らによると、このとき脂質の酸化は低く抑えられていました。消費者による受け入れ評価も、好きでも嫌いでもない中間の水準を上回りました。さらに、45℃で90日間の加速保存試験でも、性能は安定していたといいます。
研究チームは、果物のポリフェノールがAGEsの生成を抑える仕組みも探りました。用いたのは、分子同士の結合をコンピューターで予測する分子ドッキングと、AGEsの原因物質の一つであるメチルグリオキサールを捕まえる力を調べる試験です。その結果から、3つの経路が補い合って働いている可能性が示されたとしています。1つ目は、たんぱく質の糖化しやすい部位に結びつくことです。2つ目は、反応性の高い中間物質を直接捕まえることです。3つ目は、脂質の酸化を抑えることです。ただし、これらは可能性として示されたものです。
研究が示すこと
著者らは、果物パウダーを肉にどう使うかが、どの果物を使うかと同じくらい重要になりうると結論づけています。焼き肉にできるAGEsを抑える工夫を考えるときに、材料選びだけでなく使い方にも目を向ける必要があることを示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Li ML(Department of Nutrition, China Medical University, No.100, Sec.1, Jingmao Rd., Beitun Dist., Taichung City, 406040, Taiwan.)、Huang SM(Department of Nutrition, China Medical University, No.100, Sec.1, Jingmao Rd., Beitun Dist., Taichung City, 406040, Taiwan.)、Wu PY(Department of Nutrition, China Medical University, No.100, Sec.1, Jingmao Rd., Beitun Dist., Taichung City, 406040, Taiwan.)、Huang CW(Department of Nutrition, China Medical University, No.100, Sec.1, Jingmao Rd., Beitun Dist., Taichung City, 406040, Taiwan.)、Hung WL(School of Food Safety, Taipei Medical University, No.250, Wuxing St., Xinyi Dist., Taipei City, 110, Taiwan.)、Hsu KC(Department of Nutrition, China Medical University, No.100, Sec.1, Jingmao Rd., Beitun Dist., Taichung City, 406040, Taiwan.; Department of Food Nutrition and Health Biotechnology, Asia University, 500 Lioufeng Rd., Wufeng, Taichung, 41354, Taiwan.)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Li ML, Huang SM, Wu PY, et al. Fruit powder spray formulations reduce advanced glycation end-product formation in charcoal-grilled pork: effects of application method and polyphenol-sugar balance. Current research in food science 2026-10-08. DOI: 10.1016/j.crfs.2026.101592. 原著ライセンス:CC BY.