この研究は、イタリア、ドイツの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Antioxidants

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

超加工食品が広く食べられるようになったことで、終末糖化産物(AGEs)への曝露が増えていると考えられています。AGEsは、食品の加工や加熱の過程などで生じる物質で、体内では酸化ストレスや慢性的な軽度の炎症を引き起こす主要な仲介役とされています。

AGEsが成人の代謝異常に関わることはこれまでにも指摘されてきましたが、著者らは、子どもの世代でAGEsがどのような分子レベルの変化と結びついているのかは十分に解明されていない、と述べています。そこで研究チームは、体内の細胞から放出される小さな袋状の構造物である細胞外小胞(EV)に含まれるmiRNA(遺伝子の働きを調整する短いRNA)に着目しました。EVに含まれるmiRNAは安定しており、採血などを伴わずに全身のストレス応答を知る手がかりになりうる指標だと位置づけられています。

調べた方法

研究チームは、I.Familyコホートに参加したイタリアの子どもと青少年94人を対象に、尿中のAGEsと、尿中のEVに含まれるmiRNAとの関連を検討しました。

AGEsについては、蛍光を利用した分光蛍光法で蛍光性AGEsを測定しました。miRNAについては、尿から取り出したEVを多く含む画分を対象に、次世代シークエンシングという手法で網羅的に調べました。その上で、発現量の違いを比較する解析に加え、年齢、性別、BMIのzスコア(同年齢・同性の集団と比べた体格の位置づけを示す値)、hs-CRP(炎症の程度を示す血液指標)を考慮に入れた多変量の一般化線形モデルによる解析を行っています。

主な報告結果

発現量の比較では、尿中AGEsが高い参加者は低い参加者に比べ、hsa-miR-4516という一つのmiRNAが有意に増えていたと報告されています(fold change=2.31、FDR=0.024)。

AGEsの値を連続量として扱った多変量モデルでも、hsa-miR-4516がAGEsと最も関連するmiRNAであり続けましたが、BMIのzスコアとhs-CRPで調整すると、その関連は弱まったとされています。さらに、関連する機能を調べるエンリッチメント解析やネットワーク解析では、酸化ストレスへの応答、タンパク質の品質を保つしくみ(プロテオスタシス)、細胞の生存に関わる経路が浮かび上がったと述べられています。

この研究が示すこと

著者らは全体として、尿中のEVに含まれるmiRNAは、AGEsへの曝露量そのものを直接示す指標というより、食事由来のAGEsの負荷に対する体の協調的な生物学的応答を映し出している可能性がある、とまとめています。

つまり、尿という採取しやすい試料から、子どもにおける代謝や炎症の初期の適応を、体への負担が少ない形でまとめて捉える手がかりが得られるという位置づけです。なお、BMIや炎症指標を考慮すると関連が弱まった点は、著者らが報告した結果の一部として押さえておく必要があります。

著者:Fabio Lauria(Institute of Food Sciences, National Research Council, 83100 Avellino, Italy)、Paola Russo(Department of Precision Medicine, School of Medicine and Surgery, University of Campania “Luigi Vanvitelli”, 80138 Naples, Italy)、Alfonso Siani(Institute of Food Sciences, National Research Council, 83100 Avellino, Italy)、Ivana Sirangelo(Department of Precision Medicine, School of Medicine and Surgery, University of Campania “Luigi Vanvitelli”, 80138 Naples, Italy)、Ilenia D’Orsi(Institute of Food Sciences, National Research Council, 83100 Avellino, Italy)、Pasquale Marena(Institute of Food Sciences, National Research Council, 83100 Avellino, Italy)、Antje Hebestreit(Leibniz Institute for Prevention Research and Epidemiology, 28359 Bremen, Germany)、Ronja Foraita(Leibniz Institute for Prevention Research and Epidemiology, 28359 Bremen, Germany)、Giuseppe Iacomino(Institute of Food Sciences, National Research Council, 83100 Avellino, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fabio Lauria, Paola Russo, Alfonso Siani, et al. Urinary Extracellular Vesicle-Derived miRNAs Reveal a Coordinated Stress-Response Network Linked to Advanced Glycation End-Products in Children and Adolescents. Antioxidants 2026-09-10. DOI: 10.3390/antiox15091150. 原著ライセンス:CC BY.