日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Frontiers in Rehabilitation Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
関節リウマチは、関節に炎症が起こる病気です。薬による治療は大きく進歩しましたが、患者の多くには、筋肉の量が減り筋力が落ちる「サルコペニア」がみられます。著者らによると、その主な背景には加齢、慢性的な炎症、ステロイド薬の繰り返しの使用、体を動かす機会の減少があります。サルコペニアを伴う関節リウマチの患者では、関節の破壊が進みやすく、日常生活の動作が制限されやすく、転倒による骨折も多いとされています。
サルコペニアへの対策としては、筋力トレーニングと、たんぱく質や必須アミノ酸を十分にとる栄養対策の組み合わせが勧められています。ただ、関節リウマチの患者の中には、関節の痛みや進んだ関節の損傷、症状が悪化する不安から、強度の高い運動に取り組みにくい人がいます。論文は、日本の外来リハビリが実際には週1〜2回程度にとどまることが多く、指針が勧める頻度での運動は現実的でない場合が多いことも指摘しています。
そこで研究チームは、運動の負担を軽くしながら筋肉に働きかける方法として「治療的電気刺激」に注目しました。皮膚の上から電気を流して筋肉を本人の意思とは関係なく収縮させる方法です。今回は、腰や脚に巻くベルト状の電極を使う装置を用いました。従来の電極より広い範囲を刺激でき、皮膚の不快感も少なく、複数の筋肉を同時に動かせるとされています。研究の目的は、この電気刺激と栄養管理を組み合わせた6か月間の外来リハビリを、病状が比較的落ち着いている関節リウマチの患者が無理なく続けられるか(実施可能性)、安全に行えるか(安全性)を確かめることでした。
どのように調べたか
対象は、病気の勢い(疾患活動性)が「寛解」または「低疾患活動性」にある、外来通院中の関節リウマチ患者です。比較のための対照群は置かず、同じ参加者のプログラム前後の状態を比べる観察研究として行われました。プログラムへの参加は研究のために決めたものではなく、通常の診療の中で主治医が判断しました。
参加者は、理学療法士の付き添いのもとで週1〜2回、1回40分の外来リハビリを6か月間受けました。内容は、脚のストレッチ、歩行練習、ベルト電極による電気刺激です。電気刺激は1回20分で、腰、両膝の上、両足首の上に計5本のベルト電極を巻き、両脚の多くの筋肉を同時に刺激しました。刺激の強さは各参加者が耐えられる最大の強さとし、セッション中も5分ごとに見直しました。
栄養管理としては、ロイシンという必須アミノ酸を多く含む栄養補助飲料を、毎朝食後に1本(125mL、たんぱく質11.0g、L-ロイシン2300mg)飲むよう指導しました。飲めているかどうかは、来院のたびに療法士が口頭で確認しました。
実施可能性と安全性は、研究を最後まで終えた人の割合、電気刺激を受けた回数、栄養補助飲料の摂取状況、期間中に記録された有害事象、疾患活動性が保たれたかどうかで評価しました。あわせて探索的な項目として、脚の除脂肪量(脂肪を除いた組織の量で、筋肉量の目安)、膝を伸ばす筋力、歩く速さを、開始時と6か月後に測りました。
主な結果
参加した14人のうち10人が、6か月のプログラムと最終評価の両方を終えました。完了率は71.4%です。完了しなかった4人の内訳は、暑さのため定期的な通院が難しくなった人が2人、別の病院でがんと診断されて中止した人が1人、プログラムは終えたものの6か月時点の測定データがなかった人が1人でした。
完了した10人が6か月間に受けた電気刺激の回数は中央値34.5回で、週あたり約1.3回に相当します。疾患活動性は開始時も6か月後も寛解から低疾患活動性の範囲にとどまり、統計的に意味のある変化はみられませんでした。期間中、関節に関連する有害事象や心臓・血管に関連する有害事象は記録されませんでした。
探索的な項目では、脚の除脂肪量の変化の中央値は0.08kgの増加で、統計的に有意でした。膝を伸ばす筋力は中央値1.58kgf、歩く速さは中央値0.18m/sの変化がみられましたが、いずれも統計的に有意な差には至りませんでした。
この研究が示すこと
著者らは、この結果をあくまで予備的な情報と位置づけています。参加者が少なく、対照群がなく、電気刺激・通常のリハビリ・栄養補助を組み合わせたプログラムであるため、観察された変化をプログラムの効果と結論づけることも、どの要素が寄与したかを見分けることもできません。除脂肪量の増加は小さく、測定値のばらつきの影響も考慮が必要だとしています。また、有害事象は標準化されたチェックリストで評価したわけではなく、栄養補助飲料の摂取量も数値として記録していません。参加者の多くは病状が落ち着き障害も軽い人たちで、サルコペニアの診断に基づいて選ばれたわけでもありません。
こうした制約はありますが、この研究は、強い運動が難しいこともある関節リウマチの患者に対し、ベルト電極による電気刺激と栄養管理を組み合わせた外来リハビリを実際の診療の中で6か月間行った経過を示しました。著者らは、この結果が今後の対照群を置いた研究を設計するうえでの手がかりになるとしています。
著者:Norikazu Hishikawa(Department of Rehabilitation Medicine, Graduate School of Medical Science, Kyoto Prefectural University of Medicine)、Shogo Toyama(Department of Orthopaedics, Graduate School of Medical Science, Kyoto Prefectural University of Medicine)、Koshiro Sawada(Department of Rehabilitation Medicine, Graduate School of Medical Science, Kyoto Prefectural University of Medicine)、Suzuyo Ohashi(Department of Rehabilitation Medicine, Graduate School of Medical Science, Kyoto Prefectural University of Medicine)、Yasuo Mikami(Meiji University of Integrative Medicine)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Norikazu Hishikawa, Shogo Toyama, Koshiro Sawada, et al. Feasibility and safety of a 6-month outpatient rehabilitation program combining therapeutic electrical stimulation using belt electrodes and nutritional management in patients with rheumatoid arthritis: a pilot study. Frontiers in Rehabilitation Sciences 2026-10-02. DOI: 10.3389/fresc.2026.1920901. 原著ライセンス:CC BY.