発酵食品を使った機能性の高い乳製品への関心が高まる中、伝統的な発酵素材を現代のヨーグルトづくりに取り入れる試みが注目されています。今回紹介する研究では、ギリシャの伝統的な発酵食品「トラハナス」をヨーグルトに配合し、その物理化学的・微生物学的・抗酸化的・官能的な特性への影響を調べました。

どのように調べたのか

研究チームは、次の5種類の製品を用意しました。市販のヨーグルトスターター培養菌のみを使った対照ヨーグル卜、スターター培養菌に加えてトラハナスを2%または4%(重量比)添加したヨーグルト2種類、そしてスターター培養菌を使わずにトラハナスを2%または4%添加した発酵乳製品2種類です。これらすべてを4℃で30日間冷蔵保存し、その間のpHの変化、乳糖の消費、乳酸の生成量、タンパク質含量、全固形分、離水(ホエーの分離)、抗酸化活性、総フェノール含量、微生物の安定性、官能特性(味や食感などの評価)を評価しました。

研究でわかったこと

スターター培養菌を使い、トラハナスを添加したヨーグルトでは、対照ヨーグルトやスターターを使わない製品と比べて、酸性化が進みやすく、タンパク質と全固形分の含有量が高く、離水が少なく、抗酸化活性と総フェノール含量が高くなったと報告されています。特に、市販スターター培養菌とトラハナス4%を組み合わせた製品では、DPPHおよびABTSという指標で測定した抗酸化活性(ラジカル消去活性)が最も高く、トラハナス由来の生理活性化合物と発酵に関わる乳酸菌との間に相乗的な効果がある可能性が示唆されています。

微生物学的な分析では、保存期間を通じて高い乳酸菌数が保たれていたことが確認され、特にトラハナス4%の製品では、Streptococcus thermophilus(乳酸菌の一種)の菌数が保存中最も高かったとされています。検出された乳酸菌は、市販のヨーグルトスターター培養菌由来のものと、トラハナス自体の伝統的な製法(酸味のある羊乳と伝統的なヨーグルトを用いた発酵)に由来するものの両方から来ていると考えられています。また、大腸菌群、腸内細菌科、ブドウ球菌属はすべての製品で検出されず、酵母やカビの増殖も限定的で、主に保存の後半にスターターを使わないサンプルで見られたと報告されています。

官能評価では、トラハナスを添加した製品、特に4%添加の製品で全体的な受容性が良好であったとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、伝統的なギリシャの発酵食品トラハナスをヨーグルトに取り入れることが、技術的な特性、抗酸化に関連する特性、機能性を高めた発酵乳製品を開発するうえで有望な手法になりうることを示すものだとまとめられています。ただし、これは一つの研究であり、要旨で示された結果や解釈が今後さらに検証されていく必要がある段階のものです。健康への効果を断定するものではなく、今後の研究の進展を待つ必要があります。

まとめ

この研究では、伝統食トラハナスをヨーグルトに配合することで、酸性化やタンパク質・固形分含量、離水の抑制、抗酸化活性、乳酸菌の維持といった複数の面で変化が見られ、特に市販スターター培養菌とトラハナス4%を組み合わせた製品で良好な結果が得られたと報告されています。伝統的な発酵食品と現代的な乳製品づくりを組み合わせる一つの事例として、今後の展開が注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:トラハナス強化ヨーグルト:機能性乳製品システムとしての物理化学的・微生物学的・生理活性特性への影響(アプライド・サイエンシズ・2026年08月)