著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Bulletin of Information Technology (BIT)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

インドネシアでは、零細・中小企業(UMKM)が雇用や暮らしを支える重要な担い手です。なかでも飲食業は日々の食事に直結するため需要が比較的高い一方、売れ行きが日によって大きく変わります。著者らは、こうした変動のために作りすぎによる食材の無駄や、品切れによる売り逃しが起こりやすいこと、そして多くの店主が勘や経験に頼って売上を見込んでいることを課題として挙げています。

研究チームは、フライドチキン(アヤム・ゴレン)と、揚げたナマズに辛味ソースや野菜を添えた料理ペチェル・レレを扱う小さな飲食店を対象にしました。目的は三つあります。過去の売上の並びから将来を予測する「指数平滑法」で日々の販売数を予測すること、その精度を評価すること、そして結果を経営判断に役立つ形にまとめる「ビジネスインテリジェンス(BI)」の枠組みに組み込むことです。著者らは、予測結果をダッシュボードとして意思決定に直接つなげる研究や、小規模飲食店の日次データを扱う研究がまだ少ないと述べています。

データの集め方と予測の方法

この店には整った売上記録の仕組みがありませんでした。そこで研究チームは、営業時間外に店主へ形式ばらない聞き取りを行い、2025年1月から12月までの毎日の販売数を集めました。あわせて、食材費や閉店時の在庫の残り具合も尋ねています。木曜日が定休日のため、営業日は合計313日でした。販売数は各品目とも1日10〜30食の範囲で、年間ではフライドチキンが6,211食(1日平均19.8食)、ペチェル・レレが5,166食(同16.5食)でした。

予測に使った指数平滑法は、直近の実績をより重く、古い実績ほど軽く扱って次の値を見込む手法です。重みの大きさはαという数値で決まり、αを大きくすると最近の変化に敏感に反応し、小さくすると予測が安定します。研究チームはαを0.1から0.9まで試し、誤差が最も小さくなった0.3を採用しました。計算はすべてMicrosoft Excelで行っています。

精度は三つの指標で確かめました。予測と実績のずれを割合で表すMAPE、ずれの平均を食数で表すMAE、大きなずれをより重く数えるRMSEです。MAPEについては、10%未満を「非常に正確」、10〜20%を「正確」、20〜50%を「おおむね許容できる」とする基準で解釈しています。

主な結果

月別に見ると、両品目とも12月に販売が最も多く(フライドチキン596食、ペチェル・レレ519食)、7月に最も少なくなりました(同448食、352食)。著者らはここに季節的な傾向を読み取り、年末の行事や休暇、断食月や断食明けの祝祭に伴う消費行動の変化が関係している可能性を挙げています。また、両品目の販売比率は年間を通じておよそ55対45で安定していました。

予測の精度は、フライドチキンのMAPEが19.33%で「正確」、ペチェル・レレが21.12%で「おおむね許容できる」の区分に入りました。MAEはそれぞれ1日あたり3.58食と3.25食で、予測と実績の差は平均して3〜4食ほどです。RMSEは4.42と4.09でした。著者らは、RMSEとMAEの差が1食未満と小さいことから、大きく外れる日が全体の成績を左右しているわけではないと説明しています。さらに、1日10〜30食を作る店にとって3〜4食の差は管理できる範囲だと評価しています。

2026年1月の予測値は、フライドチキンが1日23食、ペチェル・レレが1日19食でした。営業日を26日とすると、月にそれぞれ598食と494食になります。いずれも2025年の1日平均を上回っており、著者らはこれを年末年始に販売が増える傾向と整合するものとしています。

研究チームはこれらの結果をExcelのダッシュボードにまとめました。画面には、販売総数と日々の予測、月別の推移と1月の予測、二品目の販売構成比、予測精度、経営への提言の五つの情報が並びます。提言としては、11〜12月は食材と生産量を通常月より20〜25%以上多めに準備すること、販売が落ち込む6〜8月は生産量を抑えて食材の無駄を減らすこと、1月の予測値を仕入れ計画の目安にすること、簡単なレジアプリで売上を記録し始めることが示されています。

この研究が示すこと

この研究は、きちんとした売上記録を持たない小さな飲食店でも、店主への聞き取りで集めた日々の販売数と、Excelで扱える簡単な予測手法を組み合わせれば、仕入れや仕込みの目安となる数値と提言を引き出せることを示しました。著者らは、経験と勘に頼る経営から、データに基づく経営へ移るための身近で現実的な道筋として、この組み合わせを位置づけています。

原著論文の著者・所属:Sonitoro, Ahmad(Universitas Muhammadiyah Kudus)、Afriza Meigi Zukhruf(Universitas Muhammadiyah Kudus)、Muhammad Azkia Maksalmyna(Universitas Muhammadiyah Kudus)、Muchamad Rizky Bagus Saputra(Universitas Muhammadiyah Kudus)、David Febrian(Universitas Muhammadiyah Kudus)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sonitoro, Ahmad, Afriza Meigi Zukhruf, Muhammad Azkia Maksalmyna, et al. Prediksi Penjualan Menggunakan Exponential Smoothing sebagai Pendukung Business Intelligence UMKM Kuliner. Bulletin of Information Technology (BIT) 2026-09-23. DOI: 10.47065/bit.v7i3.3062. 原著ライセンス:CC BY.