著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:SISTEMASI

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

インドネシアのラブアンバジョは、国が「超優先観光地」に位置づける観光地です。論文が引用する州観光局などのデータによると、2025年に西マンガライ県を訪れた旅行者は50万8人で、そのうち34万1955人が外国人でした。旅行者の増加に伴って飲食店も増え、旅行者は多くの選択肢の中から自分に合った店を選びにくくなっています。

店選びを助ける仕組みのひとつが「推薦システム」です。研究チームが用いたのは「コンテンツベースフィルタリング」と呼ばれる方式で、店の特徴(料理のカテゴリーなど)を手がかりに、ある店とよく似た別の店を薦めます。このとき、店どうしがどれくらい似ているかを計算する方法はいくつもあります。著者らによると、インドネシアの飲食観光を対象とした先行研究は、主にコサイン類似度というひとつの方法だけを使い、ほかの方法と効果を比べていませんでした。

そこで研究チームは、ラブアンバジョの飲食店推薦システムを作りながら、コサイン類似度、ユークリッド距離、ジャッカード類似度という3つの計算方法を比べ、どれが最も適切な推薦を出すかを調べました。

どのように調べたか

研究チームは、ウェブ上の情報を自動で集める「スクレイピング」という手法で、ラブアンバジョの飲食店150店のデータを集めました。使った特徴は、店のカテゴリー(シーフードレストラン、カフェなど)と評価(レーティング)の2つです。カテゴリーは、該当するかどうかを「はい・いいえ」で表す35列に分けました。評価は0から1の範囲にそろえて1列にまとめました。こうして各店を、合わせて36列の数値の並びとして表しました。

3つの方法はそれぞれ「似ている」の捉え方が違います。コサイン類似度は、数値の並びが指す向きがどれだけそろっているかを見ます。ユークリッド距離は、数値どうしがどれだけ離れているかを見ます。ジャッカード類似度は、「はい・いいえ」型のデータで共通する項目の割合を見る方法です。この研究では、コサイン類似度とユークリッド距離にはカテゴリーと評価の両方を使い、ジャッカード類似度にはカテゴリーだけを使いました。

評価には「Precision@5」という指標を用いました。各店に対して上位5件を推薦し、そのうち何件が適切かの割合を測るものです。適切かどうかは、カテゴリーが同じであることと、評価の値が近いことを基準に判断しました。さらに、方法間の差が偶然によるものかどうかを確かめるため、ウィルコクソンの符号順位検定という統計的な検定を行いました。

主な結果

Precision@5は、コサイン類似度とユークリッド距離がどちらも0.6947でした。ジャッカード類似度は0.6320で、前の2つより低い値でした。この差は統計的に有意と報告されています(p<0.001)。

150店のうち、3つの方法で上位5件の推薦がまったく同じになったのは7店(4.7%)だけでした。著者らは、同じデータを使っても、多くの場合は方法によって推薦の並びが変わったと述べています。

コサイン類似度とユークリッド距離の成績がそろった理由について、著者らはデータの形に注目しています。各店を表す36列のうち35列がカテゴリー、評価は1列だけです。そのため、どちらの方法でも計算結果がカテゴリーの一致にほぼ左右され、評価の違いが順位を動かすほどの影響を持ちにくくなります。著者らは、本来は考え方の異なる2つの方法でも、こうした条件では似た順位を出しやすいと説明しています。

研究チームはこのシステムを、CodeIgniterという開発用の枠組みでウェブアプリとして実装しました。利用者は計算方法を選び、推薦される飲食店を画面上で確かめられます。

研究が示すこと

著者らは、カテゴリーだけでなく評価も計算に加えることで、カテゴリーのみに頼る方法より適切な推薦が得られたとまとめています。また、類似度の計算方法の向き不向きはどんな場合も同じではなく、カテゴリーの偏りといったデータの性質によって変わると述べています。推薦システムを作るときは、使い慣れた方法をそのまま当てはめるのではなく、扱うデータに合った方法かどうかを比べて選ぶことが大切だと、この研究は示しています。

原著論文の著者・所属:Sergius Septiade Masmur(Universitas Amikom Yogyakarta)、Ika Nur Fajri(Program Studi Sistem Informasi , Fakultas komputer , Universitas Amikom Yogyakarta 1 , 2 , 3 Jl. Ring Road Utara Condong Catur , Sleman , 55283 , Indonesia)、Arif Nur Rohman(Program Studi Sistem Informasi , Fakultas komputer , Universitas Amikom Yogyakarta 1 , 2 , 3 Jl. Ring Road Utara Condong Catur , Sleman , 55283 , Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sergius Septiade Masmur, Ika Nur Fajri, Arif Nur Rohman Labuan Bajo Culinary Tourism Recommendation System: A Comparison of Content-Based Filtering Similarity Methods. SISTEMASI 2026-08-22. DOI: 10.32520/stmsi.v15i8.6830. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。