掲載誌:Electronic Green Journal
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
米国の公共図書館と大学図書館は、本の貸し出しという枠を超えて、地域で起きている食料不安(必要な食べ物を十分に得られない状態)への対応に関わっているとされます。著者らはこの状況を実態として把握することを目的に、既存の研究文献の整理と、図書館で働く人々を対象とした独自の調査を組み合わせました。
目指したのは、図書館がどのような取り組みを行っているのかを具体的に洗い出すこと、そしてそれらを支えるうえでどこに困難があるのかを明らかにすることです。
何をどう調べたか
著者らは2025年の冬に、図書館関係のメーリングリストと電子メールを通じてオンライン調査を配布しました。この調査は量的な質問と自由記述を組み合わせた混合研究法の形式で、単一選択・複数選択・自由回答の設問を含み、研究倫理審査委員会(IRB)の承認を受けています。データ収集の期間はおよそ30日間でした。
回答者は匿名で、個人を特定する情報は集めていません。回答できるのは、18歳以上で図書館に勤務しており、オンライン調査に伴うリスクを了解した人に限られました。集まったデータのうち、自由記述などの質的な回答にはテーマ名を付けて内容を分類し、件数として数え上げる処理を行い、量的なデータについても同様に集計しました。最終的に55名の図書館専門職からの回答が分析の対象となっています。
報告された主な結果
調査の結果、著者らは図書館が幅広い取り組みを行っていることを確認しています。食べ物を直接提供する種類のものとしては、フードパントリー(無償で食料を配る窓口)、夏季の食事提供プログラム、料理教室、放課後の軽食の提供が挙げられています。
一方で、間接的に食をめぐる状況を支える活動もありました。たとえばシードライブラリー(種子を貸し出し・分け合う仕組み)や、利用者を必要な制度や支援先へつなぐリソース・ナビゲーションです。
同時に著者らは、こうしたサービスが地域にとって重要な支えとなっている反面、図書館側はそれを継続するうえで大きな課題に直面していると報告しています。とくに挙げられたのは、資金、人員、そして周知・働きかけ(アウトリーチ)の面での困難でした。
この研究が示すこと
論文は最後に、図書館のチームが取り組みを検討する際の手がかりとして、計画のための問いの枠組みを提示しています。地域に何が必要かを見極めること、続いていく連携相手を育てること、そして食料支援の取り組みを図書館そのものの使命とどう重ね合わせるかを考えることが、その柱として示されています。
この研究が伝えているのは、食料不安への対応が一部の図書館の例外的な試みではなく、現場で実際に広がっている営みだということ、そしてそれを支える資金や人の問題が、取り組みの中身と切り離せないものとして語られているということです。
著者:Rene Tanner、Nardia Cumberbatch
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rene Tanner, Nardia Cumberbatch. Beyond Books: How Public and Academic Libraries in the United States Fight Food Insecurity. Electronic Green Journal 2026-10-01. DOI: 10.5070/g3.48668. 原著ライセンス:CC BY.