刻んだ瞬間に立ち上る、あの強い香り。7月の食卓でにんにく りん茎 生を手に取ると、まず主張してくるのはアリシンという香り成分だ。にんにくは野菜の中でもアリシンの含有量がトップクラスとされ、この香りこそが夏バテしがちな食卓に食欲を呼び込む立役者になっている。旬は5〜8月ごろとされ、青森・香川・兵庫などが代表的な産地に挙げられる。7月はまさにその盛りにあたり、新にんにく特有のみずみずしい一片に出会いやすい時期だ。

ところが、にんにくの成分表を眺めていると、香りの主役アリシンとは別の「もう一つの顔」が浮かび上がってくる。それがビタミンB6だ。100gあたり1.53mgと、日本人の食事摂取基準における女性30〜49歳の推奨量1.2mgに対して128%にあたる量を含んでいる。香り野菜として脇役に回りがちなにんにくだが、栄養素の顔ぶれで見ると意外にも主役級の存在なのだ。ビタミンB6はアミノ酸の代謝に関わり、たんぱく質からのエネルギーの産生や、皮膚・粘膜の健康維持を助けるとされる栄養素で、水溶性のため体に蓄積しにくいとされる。ちなみにたんぱく質そのものも100gあたり6.4gと、推奨量50gの13%を含んでおり、香り野菜という印象からするとやや意外な数値である。

とはいえ、にんにくを一度に100g食べる人はまずいない。現実的な目安量は1かけ=6g程度で、この量なら香りも辛みも料理の引き立て役として無理なく使える。ビタミンB6は加熱や水に弱い性質があるとされるため、水にさらしたりゆで汁に流したりせずに使いたい栄養素だ。丸ごと素揚げにしたり、皮ごと網焼きにしてホクホクの食感を楽しむような食べ方は、香りを引き出しつつ水への流出は抑えやすく、この時期ならではの一品になる。夏野菜と合わせたガーリック炒めや、刻んで冷奴にのせる薬味使いも楽しみ方のひとつだろう。

使いきれない分は、保存にもひと工夫できる。1かけずつ皮ごと常温や冷蔵で保存するほか、しょうゆ漬けやオイル漬けにすれば1〜2カ月ほど楽しめる。薄切りにして乾燥させる方法もあり、冷凍しておいたものは使う前にしばらくおくと水っぽさが抜けて扱いやすくなる。香りの主役として脇に添えられることの多いにんにくだが、こうして保存の手間をかける価値のある、意外と栄養面でも頼れる一片なのだと知ると、次に刻むときの見方が少し変わってくる。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。