著者の所属・活動拠点の国は、ロシアです。

掲載誌:Вестник Красноярского государственного аграрного университета

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ムースやスフレ、一部のアイスクリームなど、空気を含んだふんわりした食感の菓子やデザートは、泡をつくり、それを崩れないよう保つことが製造上の要になります。従来、この役割は卵白、ゼラチン、乳たんぱく質、合成乳化剤などが担ってきました。これに対し著者らは、健康志向の高まりを背景に、植物由来で入手しやすく、食物繊維やたんぱく質も補える代替素材が求められていると指摘しています。

そこで著者らが注目したのが、オーツ麦、そば、大麦、きびなどの穀物原料です。穀物や、その加工で得られる粉などには、泡立てや形づくり、泡の安定化といった働きを担える成分が含まれると考えられています。本論文は、こうした穀物原料を泡立て菓子生地の製造に生かす有望な方向性を、既存の研究や特許の収集・分析から明らかにすることを目的とした総説です。

何を調べたか

著者らは、1996年から2024年までに発表された科学論文と特許のうち、穀物を基にした泡立て生地の配合、技術、製法を扱ったものを対象にしました。ロシアの主要な電子学術図書館やGoogle Scholarでキーワード検索を行い、ロシア特許庁の検索システムでも特許を調べています。

分析では、穀物や穀物粉そのもの、それらと果物・ベリー類との組み合わせ、そして穀物を含む生地の泡を安定させる技術上の工夫に着目しました。具体的には、泡を保つ安定剤や泡をつくる起泡剤などについて、原料の種類、配合、主要な技術ごとに比較しています。

主な報告結果

著者らによると、ロシアでは2000年代初めから、国内の穀物や豆類の加工品を泡立て食品に生かす研究が進められてきました。初期の研究では、穀物の粉、とくにひよこ豆、レンズ豆、えんどう豆などの豆類の粉に、はっきりした泡立ち性があることが示されたと紹介されています。その後、酸性度、温度、泡立て時間などが泡立ちに与える影響を数理的な実験計画で調べる段階を経て、乳と穀物を組み合わせたデザートの開発や、アイスクリーム用配合物、デザート製法などの特許取得に至ったと整理されています。

特許の分析からは、カロリーや糖分の削減、身近で非伝統的な原料の活用、製品の機能性の向上を目指す開発が多いことが読み取れたといいます。例として、オーツ麦粉とクランベリーで砂糖を減らしたカスタードクリームや、大麦粉を使い、砂糖をステビアとエリスリトールに置き換えた糖尿病向けカスタードクリームなどが挙げられています。

配合の傾向として、安定剤には寒天、カラギーナン、でんぷん、穀物粉、イヌリンといった天然または加工した多糖類が、起泡剤には卵やコラーゲンのたんぱく質、泡立てた油脂成分が多く使われていました。植物原料では大麦粉やオーツ麦粉、イヌリンが広く用いられていたとされます。また、コラーゲンやステビアのように規格化された素材を使い、傷みやすい生の原料を避けることが、微生物面の安全性や保存中の安定性の向上につながるとまとめられています。

さらに著者らは、穀物の殻や精穀時に出る粉状の副産物など、加工の副産物を利用する流れが定着しつつあると指摘しています。資源を節約できる技術としては、加熱・加水処理と泡立てを同時に行う方法、酵素で生地の粘りを下げて泡立てに必要なエネルギーを減らす方法、アマランサス加工品のような地域の植物素材を安定剤に用いる方法が挙げられました。

著者らの拠点であるクラスノヤルスク地方の製粉・製穀企業については、ふすまなどの副産物の多くが家畜飼料として扱われていると紹介されています。こうした副産物を菓子製造に取り入れるには、長く保存でき、量を量りやすく、泡立ちやゲル化といった性質が安定した形にする必要があるとし、その手段として噴霧乾燥や凍結乾燥による粉末化の意義が論じられています。

研究が示す意味

著者らは、資源を無駄なく使うという考え方のもとで、穀物を基にした泡立て生地の技術開発は重要性が高いと結論づけています。穀物原料はデザートに食物繊維やビタミンを加え、独特の食感や風味をもたらしうる一方、望ましい風味を備えた安定した泡を得るには製造工程を詰める必要があり、さらなる研究が求められるとしています。本論文は、これまでの知見と特許を整理することで、穀物を使った新しいデザートやクリームの開発に向けた手がかりを示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Larisa Ermosh(FGBOU VO "Kasnoyarskiy gosudarstvennyy agrarnyy universitet", ru)、Yana Rozdorozhnaya(FGBOU VO "Kasnoyarskiy gosudarstvennyy agrarnyy universitet"; Krasnoyarsk State Agrarian University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Larisa Ermosh, Yana Rozdorozhnaya. CURRENT STATE AND PROSPECTS FOR THE USE OF CEREAL RAW MATERIALS IN WHIPPED CONFECTIONERY MASSES PRODUCTION. Вестник Красноярского государственного аграрного университета 2026-08-28. DOI: 10.36718/1819-4036-2026-8-278-290. 原著ライセンス:CC BY.