著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Jurnal Pengabdian Masyarakat BAKTI KITA

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

苦いジャムウを食べやすい形にする試み

インドネシアには、ウコンなどの薬用植物を使った伝統的な飲み物「ジャムウ」が受け継がれています。健康や地域経済の面で期待される一方で、著者らは、苦味や独特の香りが若い世代を中心に敬遠されがちなこと、売られている形がほぼ飲み物に限られていることを課題に挙げています。

そこで研究チームは、子どもから大人まで親しまれ、持ち運びや保存もしやすいクッキーにジャムウの味を取り入れることにしました。この取り組みは大学による地域貢献活動として行われました。協力したのは、中部ジャワ州スラカルタで家庭向けの健康食品をつくる小規模事業者です。この事業者はそれまでモリンガ(ワサビノキ)の葉を使ったクッキー1種類しか持たず、食品の安全な扱い方について専門的に学ぶ機会もなかったといいます。

3種類のジャムウクッキーを試作し、消費者に評価してもらう

活動ではまず、事業者への聞き取りと話し合いで課題を整理しました。続いて食品安全の講習を行い、原材料の選び方、衛生的な加工、器具や作業場の清潔さ、消費者保護などを扱いました。

クッキーは、よく知られたジャムウの3種類の味で試作しました。ウコンにタマリンドの酸味を合わせた「クニッ・アサム」、ショウガ科の薬用植物「テムラワク」、米とショウガ科のケンチュールを組み合わせた「ブラス・クンチュール」です。小麦粉、砂糖、マーガリン、卵などの基本の生地にそれぞれの材料を加えました。初期の試作では、ジャムウ材料に含まれる水分や性質のために食感がうまく仕上がらないこともありました。配合の調整を重ね、よりサクサクとして味のバランスがよいクッキーに仕上げたと報告されています。

完成した試作品は「嗜好(しこう)型官能評価」で評価されました。これは、専門的な訓練を受けていない一般の人に、どのくらい好きかを点数で答えてもらう方法です。評価者は、クッキーを食べた経験のある成人女性20人でした。1点(最も好きでない)から10点(最も好き)の尺度で、香り、色、味、食感の4項目を採点してもらいました。同じ人が3種類すべてを評価したため、その形式に合った統計手法で種類ごとの違いを比べています。

総合点は3種とも7点超、味ではクニッ・アサムが優位

4項目を平均した総合点は、ブラス・クンチュールが7.79点、クニッ・アサムが7.78点、テムラワクが7.31点でした。3種類とも7点を上回り、著者らはおおむね良好に受け入れられたとみています。ただし、総合点の差は統計的に意味のある水準には届きませんでした。

項目別では、ブラス・クンチュールが香りと色で、クニッ・アサムが味(8.10点)と食感で最も高い評価を得ました。テムラワクはすべての項目で最も低く、特に味が7.10点にとどまりました。統計的な比較では、香り、色、味の3項目で種類による違いが認められ、食感には違いが見られませんでした。さらに2種類ずつ比べたところ、はっきりした差が確認されたのは「味でクニッ・アサムがテムラワクより好まれた」という組み合わせだけでした。

著者らは、クニッ・アサムの爽やかな酸味がクッキーの甘さや香ばしさとなじみやすかった可能性を挙げています。テムラワクについては、苦味が製品に残ったことが評価の低さにつながったのではないかと考察しています。

伝統の味を新しい形で届けるための手がかり

著者らは、ジャムウをクッキーにすることは、伝統的な生薬の味を受け入れてもらう一つの方法になりうると結論づけています。事業者は3種類の試作品と食品安全の知識に加え、どの商品を優先するかを決める判断材料も得ました。著者らは、クニッ・アサムとブラス・クンチュールを最初に展開する候補とし、テムラワクは苦味を抑える配合の見直しが必要だとしています。

一方で著者らは、今回の結果が20人の評価にもとづく初期段階の受け入れ状況にとどまり、広い市場にそのまま当てはめられないことも明記しています。水分量、栄養成分、日持ち、微生物面の安全性、製造コストも、今回は調べていません。この報告は、伝統の味を現代の好みに合わせて形を変える過程で、どの味が受け入れられやすく、どこに改良の余地があるかを、具体的な評価で示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Farida Hidayati(Fakultas Psikologi , Universitas Sebelas Maret)、Tri Rejeki Andayani(Fakultas Psikologi , Universitas Sebelas Maret)、Pratista Arya Satwika(Fakultas Psikologi, Universitas Sebelas Maret)、Rin Widya Agustin、Selly Astriana(Fakultas Psikologi , Universitas Sebelas Maret)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Farida Hidayati, Tri Rejeki Andayani, Pratista Arya Satwika, Rin Widya Agustin, Selly Astriana PENGEMBANGAN COOKIES JAMU SEBAGAI INOVASI PRODUK PANGAN BERBASIS RESEP TRADISIONAL PADA UMKM. Jurnal Pengabdian Masyarakat BAKTI KITA 2026-10-01. DOI: 10.52166/baktikita.v7i2.13214. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。