発酵食品といえば、味噌や納豆、ヨーグルトなど、私たちの食卓に身近な存在です。しかし「発酵」という現象の裏には微生物の働きを利用した立派なバイオテクノロジーがあり、その仕組みを正しく理解することは、食品加工に携わる人材を育てるうえで重要な課題とされています。今回紹介する研究は、インドネシアの農業・水産アグリビジネス学科に通う高校生を対象に、地域の発酵食品づくりを通して食品バイオテクノロジーの知識と実技を高める取り組みについて報告したものです。

研究でわかったこと

この取り組みは、SMKN 5クンダリという学校の農業水産アグリビジネス学科に在籍する生徒たちが対象でした。要旨によれば、これらの生徒は食品バイオテクノロジー、特に地域食品の加工における発酵技術の応用について、知識や実技がまだ限られている状況にあったとされています。そこでこの課題に対応するため、実践的な体験型トレーニングとして、地域貢献プログラムが実施されました。

プログラムでは、発酵食品「レンペリ」の製造を題材に、講義・討論・実演というかたちで指導が行われました。参加した生徒の知識については、それぞれ10問の記述式問題からなる事前テストと事後テストによって評価され、実技面についてはパフォーマンス評価の観察シートを用いて確認されました。プログラムの成功指標は、正しい加工手順に沿ってレンペリを製造できるようになるという、知識と実技両面の向上に置かれました。

結果として、このトレーニングにより、バイオテクノロジーを活用した食品加工に関する生徒の知識は80%、実技は90%向上したと報告されています。実習を終えた後、生徒たちは製造工程を理解し、パパイヤとアンチョビ(小魚)を原料とした、経済的価値のある革新的な発酵食品として、レンペリを自主的に製造できるようになったとされています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、特定の学校に通う生徒を対象とした地域貢献・教育プログラムの実践報告であり、発酵食品そのものの健康効果や機能性を検証したものではありません。あくまで教育活動を通じた知識・実技の向上を評価した一つの取り組みであり、得られた数値も今回対象となった生徒たちにおける結果である点に留意が必要です。また、要旨には対象となった生徒の人数や、知識・実技の向上をどのように算出したかという詳細な方法は記載されていません。今後、他の学校や地域でも同様の効果が得られるかどうかは、さらなる検証が必要になると考えられます。

まとめ

この研究では、地域の発酵食品「レンペリ」の製造を題材とした体験型トレーニングによって、生徒の食品バイオテクノロジーに関する知識と実技の両方が向上したと報告されています。座学だけでなく実演や実習を組み合わせた教育のあり方が、専門知識の定着にどう貢献しうるかを考えるうえで、興味深い事例といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:地域発酵食品の実践を通じた学生の食品バイオテクノロジー知識の強化(メコンガ・2026年08月)