腸内細菌叢(マイクロバイオータ)への関心は近年高まり、ヨーグルトやキムチ、納豆といった発酵食品が健康との関連で話題になることも増えました。では、マイクロバイオータについて詳しく知っている人ほど、実際に発酵食品をよく食べているのでしょうか。今回紹介する論文は、この『知識』と『行動』の関係を大学生を対象に調べたものです。
研究でわかったこと
この研究は、スポーツ科学を専攻する大学生を対象とした横断的調査です。参加者には、社会人口統計に関する質問票に加え、『マイクロバイオータ認知度尺度』と『発酵食品摂取指数』という2つの尺度への回答を求め、その関連を統計的に分析しました。
その結果、マイクロバイオータに関する全体的な認知度は比較的高く、特に一般的なマイクロバイオータの知識やプロバイオティクス・プレバイオティクスの概念についての理解が高いことが示されました。ところが、発酵食品の摂取量については全体的に低い傾向がみられました。
さらに詳しく分析すると、マイクロバイオータ認知度の総合得点と発酵食品摂取量との間には、弱いながらも統計的に有意な負の相関(Spearmanのr=−0.28、p<0.01)が認められました。一方で、認知度の総合得点は、一般的なマイクロバイオータ知識(r=0.85、p<0.001)やプロバイオティクス・プレバイオティクス知識(r=0.82、p<0.001)とはそれぞれ強い正の相関を示しています。また、消化器系の不調(胃腸症状)を訴える学生は、そうでない学生に比べて認知度得点が有意に高いことも報告されています(p<0.05)。
これらの結果について著者らは、マイクロバイオータに関する知識と、実際の食行動との間に食い違いがあることを示すものであり、行動栄養学の分野で指摘されている『意図と行動のギャップ』と一致すると述べています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、スポーツ科学を専攻する大学生という特定の集団を対象とした横断的調査であり、ある一時点での知識と食行動の関連を調べたものです。そのため、知識が高いことが発酵食品の摂取を減らす『原因』であるとまで結論づけられるものではなく、あくまで両者の間に統計的な関連がみられたという段階の知見です。一つの研究であり、この結果だけで結論が確定したわけではない点に留意して読むとよいでしょう。
まとめ
今回紹介した研究では、大学生においてマイクロバイオータに関する知識は比較的高い一方で、発酵食品の摂取は低く、両者の間には弱い負の相関がみられました。『知っていること』と『実際に食べる行動』は必ずしも一致しないという、栄養教育を考えるうえで興味深い示唆を与えてくれる調査といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:大学生における腸内マイクロバイオータ認知度と発酵食品摂取:知識と行動のギャップの証拠(サイエンティフィック・リポーツ・2026年05月)