著者の所属・活動拠点の国は、ルーマニア、ロシア、イタリアです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究のねらい

パンは多くの人が日常的に食べる主食ですが、精製した白い小麦粉だけで作るパンには、植物由来の生理活性成分があまり含まれていません。そこで研究チームは、ブロッコリーを粉末にして食パンに加え、栄養面の特性を高められるかを検討しました。

著者らによると、ブロッコリーで主に食べられる花蕾(つぼみの部分)は植物全体の重さの約15%にすぎず、茎は約21%を占めます。茎や葉は廃棄されることが多いものの、食物繊維やポリフェノールなどを含んでいます。これまでの研究は花蕾だけ、あるいは一つの部位の粉末を扱うものが中心でした。今回の研究では、食品廃棄を減らす循環型経済の考え方も踏まえ、茎と花蕾の二つの部位を同時に比較しています。

どのように調べたか

研究チームは、ブロッコリーの茎と花蕾を分けて細かく刻み、45℃で24時間乾燥させてから粉末にしました。使用した粉末の分析では、茎の粉末は食物繊維が多く、花蕾の粉末はたんぱく質やビタミンCが多いという違いがありました。

型に入れて焼く白い食パンの小麦粉の一部をこれらの粉末に置き換え、添加率を3%、5%、10%の3段階としました。茎と花蕾の2部位を組み合わせた6種類のパンを、粉末を加えない対照のパンと比較しています。

調べた項目は、生地とパンの硬さや伸びやすさなどの食感に関わる性質、内部の気泡の状態(多孔性)、水分や酸度などの品質、色、ビタミンCやポリフェノール、カロテノイドといった抗酸化成分と抗酸化活性、そして官能評価です。官能評価では、経験のある40人のパネルが見た目や食感、香りや味の特徴を採点しました。

主な結果

ブロッコリー粉末を増やすほど、生地は引っ張りや変形に耐える力が弱まりました。添加率10%では、対照と比べて生地が破断するまでの最大の力が平均55.8%、変形に必要なエネルギーが平均71.7%低下したと報告されています。著者らは、ブロッコリーの不溶性食物繊維が水分を奪い、パンの骨格となるグルテンの網目構造の形成を妨げることが一因と考えています。

焼き上がったパンは、添加率が高いほど硬さ、変形させるのに要する仕事量(コンシステンシー)、ガム性、噛みごたえ(咀嚼性)が増し、まとまりやすさ(凝集性)も高まりました。このうち硬さ、コンシステンシー、ガム性、咀嚼性の増加は、茎より花蕾の粉末で大きく現れました。一方、弾力や復元性は、添加率が高まるにつれて低下しました。

パン内部の気泡については、対照のパンでつながった気泡の割合が最も高く、添加率が高まるにつれてその割合は下がり、閉じた気泡の割合は増えました。

また、添加率の上昇とともに、灰分(ミネラル分)、pH、酸度、そして抗酸化成分と抗酸化活性は増加する傾向を示しました。乾物量と水分活性、パンの色の成分は低下する傾向でした。

官能評価では、ブロッコリー粉末が増えるほど、全体の見た目、パン内部の食感・構造・ふんわり感、甘さや香りの評価が下がりました。その一方で、皮と内部のしなやかさ、新鮮さ、硫黄のような香り、アブラナ科野菜らしい風味、植物らしい風味は強く感じられるようになりました。

研究が示すこと

著者らは、ブロッコリーを加えたパンは、白い食パンより内部の柔らかさや色の濃さは劣るものの、ミネラルや生理活性成分の面で特性が高まった新しい食品になり得ると結論づけています。

また、生地の性質の低下が比較的穏やかな3〜5%の添加が技術的にバランスがよく、特に茎の粉末が機能性パンの原料として有利と評価しています。本研究は、捨てられがちなブロッコリーの茎が、パン作りの素材として活用できる可能性を示しています。

原著論文の著者・所属:Otilia Cristina Murariu(Department of Food Technologies, ‘Ion Ionescu de la Brad’ Iasi University of Life Sciences, 700490 Iasi, Romania)、Anca Elena Calistru(Department of Pedotechnics, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 700490 Iasi, Romania)、Florin Murariu(Department of Agroeconomy, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 700490 Iasi, Romania)、Petru-Marian Cârlescu(Department of Pedotechnics, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 700490 Iasi, Romania)、Florina Stoica(Research Institute for Agriculture and Environment, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 700490 Iasi, Romania)、Aida Albu(Research Institute for Agriculture and Environment, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 700490 Iasi, Romania)、Gabriela Frunză(Department of Food Technologies, ‘Ion Ionescu de la Brad’ Iasi University of Life Sciences, 700490 Iasi, Romania)、Nadezhda Golubkina(Federal Scientific Vegetable Center, 143072 Moscow, Russia)、Gianluca Caruso(Department of Agricultural Sciences, University of Naples Federico II, Via Università 100, 80055 Portici, Naples, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Otilia Cristina Murariu, Anca Elena Calistru, Florin Murariu, et al. Physicochemical, Quality, Antioxidant and Sensory Attributes of Innovative Functional White Pan Bread Manufactured from Wheat Flour Fortified with Broccoli Plant Parts. Foods 2026-09-25. DOI: 10.3390/foods15193426. 原著ライセンス:CC BY.