掲載誌:JAMBURA Jurnal Ilmiah Manajemen dan Bisnis
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インドネシアでは、零細・中小企業(UMKM)が雇用や地域経済を支える重要な存在とされています。なかでも飲食業は特に動きの激しい分野です。客が急に増えると、サービスの質を保つことや、従業員どうしの連携、日々の運営の安定が課題になりやすく、味だけに頼らない経営の仕組みが求められます。
研究チームが取り上げたのは、南スラウェシ州ワジョ県の町センカンで2022年に開業した、クリスピーなフライドチキンの店「Menza Fried Chicken」です。この店は24時間営業で、SNSやメッセージアプリを通じたオンライン注文を主な販売経路にしています。著者らによると、店ではすでにオンライン注文や包装の改善、客の要望に応じたメニュー調整などの工夫が見られました。ただし、その多くは問題が起きてから対応する性格が強く、まとまった経営の仕組みにはなっていなかったといいます。
そこで研究チームは三つの問いを立てました。店でサービスの工夫(サービス・イノベーション)がどのように行われているか、運営の変化や客のニーズに組織がどう適応しているか、そしてこの事例から飲食店の経営モデルをどう組み立てられるか、です。これまで別々に論じられがちだった「サービスの工夫」と「組織の適応」を、一つの経営モデルにまとめることに新しさがあると著者らは述べています。
どのように調べたか
この研究は、数値を測る調査ではありません。一つの店を深く掘り下げる質的な事例研究です。店の関係者や客など9人の主要な情報提供者に詳しく話を聞いたほか、現場の観察や資料の収集も行いました。協力者には、総支配人、スーパーバイザー、夜勤の責任者、厨房、店頭、配達の担当者、常連客などが含まれます。
集めた情報は、要点の絞り込み、整理と提示、結論の導出と確認という段階を行き来しながら分析されました。
主な結果:サービスの工夫と組織の適応
論文によると、この店のサービスの工夫は、他店との違いとして次の点に表れていました。24時間営業であること、WhatsAppで届く注文への担当者の素早い返信、大量の注文に合わせた包装の準備、配達員との密な連携です。WhatsAppは主に注文の受付に、Instagramはブランドづくりやお知らせ、宣伝に使われていました。宣伝内容は日々の運営とすり合わせ、実際のサービスとずれないようにしていたといいます。
サービスの基準は、文書化された手順、口頭での指示、職場の習慣が混ざったものでした。基本となる考え方は、丁寧に接客すること、注文を再確認すること、問題があればすぐにシフト責任者やスーパーバイザーに伝えることです。オーナーがいなくても店が回ることを目指した仕組みでした。管理は何段階にも分かれていました。シフト責任者が各シフトを仕切り、スーパーバイザーが日々の運営を見て、総支配人が報告や苦情、在庫、チームの状態を把握します。一方で総支配人は、最大の課題は技術そのものよりも、複雑になる仕事のリズムに人材がついていけるかどうかだと語っています。客の注文履歴を記録する仕組みもまだ整備の途中でした。
組織の適応については、原材料価格の変動、飲食店どうしの競争、WhatsAppでの注文に慣れた客の行動が、外部の大きな変化として挙げられました。店は24時間のシフト制を敷き、受付、包装、厨房、レジ、仕入れ、経理、人事などに役割を細かく分けていました。厨房では、味を安定させるために下ごしらえを早め、混雑時の分担を決め、シフト交代時に基本の在庫を切らさない工夫をしていました。メニューの調整は慎重で、客が価格や「お得感」に敏感であることに配慮していました。衛生と品質の基準は、原材料や保管から包装まで広げられました。苦情は個人のミスとしてではなく、作業の流れの問題として見直す考え方がとられていました。日常の判断はスーパーバイザーやシフト責任者に任され、価格や組織に関わる判断は総支配人が担います。直感に頼る判断から、データに基づく判断へと移りつつある傾向も報告されています。
適応には負の側面もありました。夜勤の責任者は、客が「24時間いつでも開いている」と信頼してくれる一方で、夜勤の負担が重いと話しています。配達担当者は、前の工程の仕組みが整っていないと、そのミスの責任を配達員が背負うことがあると指摘しました。
導かれた経営モデルとその意味
研究チームが組み立てた経営モデルは、サービスの質を重視するものです。土台には、サービス品質を捉える枠組みとして知られるSERVQUALの考え方があります。モデルは、サービス基準、すばやい対応、客の満足を柱とする「顧客志向」の経営として示されました。論文ではさらに、商品の味、サービスの速さ、仕事の分担のわかりやすさ、適応的な組織文化という「四本柱」が、他の飲食店が自店の経営を見直すための簡単な目安になりうるとしています。
著者らは、小さな店では「サービスの工夫」と「組織の適応」を切り離して理解することはできず、両者が支え合いながら改善を続けていると述べています。ただし、これは一つの店を3か月ほど調べた事例研究です。そのため結果はこの店の状況に根ざしたもので、他の飲食店へそのまま当てはめることはできないと、著者ら自身が断っています。データの仕組み、文書化された作業手順、人材育成にはまだ弱さが残っており、このモデルは今も発展途上だとされています。急成長した小さな飲食店が、現場の工夫を少しずつ仕組みに変えていく過程を描いた研究といえます。
原著論文の著者・所属:Besse Herlina(Universitas Puangrimaggalatung, Sengkang)、Jamal Qadar J(Universitas Puangrimaggalatung, Sengkang)、Andi Faisal Jumardin(Universitas Puangrimaggalatung, Sengkang)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Besse Herlina, Jamal Qadar J, Andi Faisal Jumardin. MODEL MANAJEMEN USAHA KULINER BERBASIS INOVASI PELAYANAN DAN ADAPTASI ORGANISASI: STUDI KASUS MENZA FRIED CHICKEN DI KABUPATEN WAJO. JAMBURA Jurnal Ilmiah Manajemen dan Bisnis 2026-09-03. DOI: 10.37479/jimb.v9i2.41327. 原著ライセンス:CC BY.