著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Indonesian Journal of Innovation Studies
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
イスラム教徒にとって、食べ物がイスラムの教えで許されたもの、つまり「ハラール」であることは日々の生活に欠かせない条件です。インドネシアではハラール食品への需要が高く、飲食店にとっても食材の品質やハラール性をどう管理するかが重要な課題になっています。
ハラール性を守るには、調理場だけでなく、食材の仕入れから保管、調理、提供までの流れ全体を管理する必要があります。この考え方は「ハラール・サプライチェーン・マネジメント」と呼ばれます。著者らは、小規模な飲食店でこうした管理が実際にどのような手順で行われているかを具体的に示した研究は少ないと指摘しています。
そこで研究チームは、インドネシア東ジャワ州シドアルジョ地域にあるインドネシア料理店を対象に、ハラール・サプライチェーンが各工程でどのように実践されているかを調べました。
調べ方
研究は、数値の集計ではなく現場の様子を詳しく読み解く「質的研究」の手法で行われました。店のオーナー、調理などの生産部門の従業員、料理を提供する部門の従業員に聞き取りを行い、あわせて店内での実践を直接観察しました。さらに、関連する論文や書籍などの資料と、店から提供された情報も補助的に用いています。
主な結果:仕入れから食卓までの4段階
論文は、この店のハラール管理を「生産の準備」「調理」「提供」「消費」の4段階に整理して報告しています。
生産の準備段階では、食材そのもの、仕入れ先、支払いの面から仕入れが管理されていました。仕入れ先から食材を受け取る際には、運搬に使われた用具の確認、重さや価格、品質、数量の確認を行ったうえで保管場所へ移しています。論文には、店で使う食材とそのハラール認証番号の一覧も示されています。
調理段階では、食材を取り出す従業員が清潔な制服と手袋を着用し、汗などによる汚染を防いでいました。食材は丁寧に洗浄され、調理では器具の清潔さ、適切な調理手順、適切な油の使用、調理時間の管理が重視されていました。
提供段階では、料理は衛生的に盛り付け・包装され、イスラムで禁じられた豚肉、犬、死肉、血、アルコールなどが含まれないようにされています。料理は店内で直接提供され、従業員は食器や店内環境、自身の身だしなみの清潔さにも気を配っていました。
消費段階について、聞き取りでは、客が店のハラール手順を信頼し、安心して食事をしていることが報告されています。客は料理を清潔で、禁じられた成分を含まず、おいしいと評価していました。また、ビュッフェ形式によって料理を選びやすく、待ち時間が短くなることも客の満足につながっていると述べられています。
研究が示すこと
著者らは、この店では仕入れから客に届くまでの各段階で清潔さとハラール性に真剣な注意が払われており、ハラールの原則に沿った運営がなされていると結論づけています。店はインドネシア・ウラマー評議会(MUI)の基準をまだ導入していないものの、市場で購入する肉はハラールが確保されており、客は安心して利用していると報告されています。
この研究は、公式な基準の導入前であっても、衛生管理や禁じられた食材の混入防止を日々の工程に組み込むことで、客の信頼を得ている小規模飲食店の具体的な姿を示しています。著者らは、こうした工程ごとの管理の整理が、品質と顧客満足を保とうとする飲食店にとって一つの運営モデルになりうると述べています。
原著論文の著者・所属:Anis Ibnal Firasil Adam(Program Studi Teknik Industri, Fakultas Sains dan Teknologi, Universitas Muhammadiyah Sidoarjo)、Hana Catur Wahyuni(Program Studi Teknik Industri, Fakultas Sains dan Teknologi, Universitas Muhammadiyah Sidoarjo)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Anis Ibnal Firasil Adam, Hana Catur Wahyuni. Analysis of Halal Supply Chain Management Implementation in the Food Industry. Indonesian Journal of Innovation Studies 2026-10-07. DOI: 10.21070/ijins.v25i4.2394. 原著ライセンス:CC BY.