毎日の食卓に欠かせないパンは、主に精製小麦粉から作られており、手軽でおいしい一方、タンパク質やミネラル、食物繊維といった栄養素は必ずしも豊富ではありません。そこで注目されているのが、他の食材を粉に加えて栄養価を高める「強化パン」という考え方です。今回紹介する研究では、発芽させたソラマメの粉と、香辛料として知られるブラッククミンの粉を精製小麦粉にブレンドし、パンの栄養成分や食感・風味にどのような変化が起きるかを調べています。

研究でわかったこと

研究チームは、精製小麦粉(RW)、発芽ソラマメ粉(GFB)、ブラッククミン粉(BC)の配合比率を変えた合計16種類のパンを、実験計画ソフトウェアを用いて作製しました。配合の範囲は、小麦粉64〜100%、ソラマメ粉0〜30%、ブラッククミン粉0〜6%とされています。

その結果、発芽ソラマメ粉とブラッククミン粉の配合割合が増えるほど、鉄・亜鉛・カルシウムといったミネラル含有量や、灰分・食物繊維・脂質・粗タンパク質などの一般成分が増加する一方、精製小麦粉の割合が増えるほどこれらは減少する傾向が示されました。逆に、炭水化物含有量やパンの内相(クラム)の明るさ(L*値)は、ブラッククミン粉とソラマメ粉の割合が少ないほど高くなったと報告されています。

官能評価(食味や食感などの評価)についても、配合比率によって統計的に有意な差が見られました(p<0.05)。具体的には、発芽ソラマメ粉の割合が増えるほど官能評価のスコアは上がる一方、ブラッククミン粉の割合が増えるほどスコアは下がる傾向が示されています。

これらの結果を総合的に検討した結果、全体的な品質特性の観点から最も評価が高かった配合は、精製小麦粉72.5%、発芽ソラマメ粉25.6%、ブラッククミン粉1.9%というものでした。この配合のパンは、100gあたりタンパク質16.386g、食物繊維10.683g、炭水化物62.984g、エネルギー366.824kcal、鉄3.267mg、亜鉛1.928mg、カルシウム66.511mgという値を示し、全体的な嗜好性(総合的な好ましさ)を損なうことなく、これらの栄養成分が強化されたと報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、特定の配合条件下で作製したパンについて、成分分析と官能評価を行ったものです。要旨からは、対象とした16種類の配合における測定結果と、その中で最も評価の高かった組み合わせが示されていますが、これらの数値や傾向がすべてのパン作りや、異なる原材料・製法にそのまま当てはまるかどうかまでは述べられていません。また、この研究はパンの栄養成分や官能的な特性を評価したものであり、健康への効果や病気の予防・改善について述べたものではない点にも留意が必要です。あくまで一つの研究成果であり、今後さらなる検証が重ねられていく可能性がある内容として捉えるとよいでしょう。

まとめ

発芽ソラマメ粉とブラッククミン粉を精製小麦粉にブレンドすることで、パンのミネラルやタンパク質、食物繊維などの栄養成分を高められる可能性が、この研究では示されました。特に精製小麦粉72.5%、発芽ソラマメ粉25.6%、ブラッククミン粉1.9%という配合では、栄養面の強化と食味の両立が図れたと報告されています。身近なパンという食品にひと工夫を加えることで、栄養バランスの選択肢が広がるかもしれない——そんな可能性を示す研究といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ブラッククミンと発芽ソラマメ粉を強化したパンの栄養学的・官能的評価(トルコ農業・食品科学技術ジャーナル・2026年07月)