この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Journal of Applied Agricultural Science and Technology
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
インドネシア・カリマンタン島に自生するアパの葉(学名 Albertisia papuana Becc.)は、地元のダヤックの人々が長らく料理の風味づけに使ってきた植物です。スープや野菜料理にそのまま加えて、香りとうま味を出す使い方が伝統的に続いてきました。著者らは、この葉に含まれる遊離アミノ酸のグルタミン酸などが、うま味に関わる成分として注目できると紹介しています。グルタミン酸は、植物由来の風味素材において、うま味の主要な担い手として広く知られている成分です。
ただし、アパの葉は今も生のまま使われることがほとんどで、収穫後の処理が標準化されていません。そのため保存できる期間が短く、成分の安定性や商品としての利用が難しいという課題があります。乾燥は水分を減らして微生物の繁殖を抑え、保存性を高める基本的な手段ですが、条件が適切でなければ品質に関わる成分が壊れてしまうこともあります。
そこで本研究は、アパの葉の乾燥温度と乾燥時間が、水分・灰分・粗タンパク質・グルタミン酸の各含量にどう影響するかを調べ、水分を下げつつ測定した品質項目を保てる条件を探ることを目的としました。著者らは、この植物を対象に、これら四つの項目をまとめて評価しながら乾燥条件を検討した研究はこれまで報告されていないと述べています。
何をどう調べたか
材料には、北カリマンタン州ヌヌカン県マンサロン地区の二次林から採取した生のアパの葉を用いました。手順は、選別・計量・洗浄を行ったうえで、決めた条件で乾燥し、その後に各成分を分析する流れです。
乾燥条件の検討には、応答曲面法(RSM)という統計的な手法が使われました。これは、複数の条件を同時に動かしながらその影響や組み合わせの効果を調べ、必要な実験回数を減らせる方法です。本研究では中心複合計画という配置を用い、乾燥温度50〜70℃、乾燥時間6〜10時間の範囲で、計13回の実験を無作為な順序で実施しました。この範囲は予備実験に基づいて選ばれたもので、60℃・6時間の条件が粗タンパク質とグルタミン酸をよく保ちながら水分も十分に減らせたことから、60℃と8時間を中心に据えています。70℃を超える温度は、熱に弱い成分の分解が進む恐れがあるため除外されました。
分析では、水分含量を加熱による重量減少から求め、灰分は550℃で灰化させて残った無機物の割合として測定しました。粗タンパク質はケルダール法で全窒素を測り、換算係数を使って求めています。著者らは、この方法が測るのは全窒素であるため、得られる値はタンパク質以外の窒素も含む「粗タンパク質」であると明記しています。グルタミン酸については、ニンヒドリンを使った発色反応と紫外可視分光光度計による比色法で、L-グルタミン酸相当量として遊離アミノ酸を定量しました。
主な結果
13条件を通して、水分含量は3.02%(74.14℃・8時間)から5.94%(60℃・5.17時間)の範囲でした。統計解析では、乾燥温度と時間が水分含量に有意な影響を与えており(p<0.05)、なかでも乾燥時間の影響がもっとも強く出ました。水分に関する二次回帰モデルは有意で(p=0.002)、決定係数はR²=0.91と良好な当てはまりを示しています。著者らは、もっとも水分が高かったのが中程度の温度でありながら乾燥時間が最短だった条件だったことから、時間の方が温度より影響が大きかったと説明しています。
一方、灰分(5.60〜6.60%)、粗タンパク質(18.50〜21.40%)、グルタミン酸(0.88〜1.50 mg/g 乾物)については、調べた範囲内では乾燥温度と時間の影響は統計的に有意ではありませんでした。粗タンパク質とグルタミン酸の回帰モデルはいずれも有意にならず、決定係数もそれぞれR²=0.407、R²=0.082と低い値で、著者らは示した式を予測モデルとして解釈すべきではないと注意を添えています。灰分のわずかな上昇についても、無機成分そのものが変化したのではなく、水分が抜けたことによる相対的な変化と考えられると述べています。
四つの項目を同時に考慮する望ましさ関数による検討では、およそ60〜62℃で8時間という条件が実用的な目安として示されました。この条件での水分は約3.4〜3.5%で、灰分(6.0〜6.2%)、粗タンパク質(20.4〜20.6%)、グルタミン酸(1.24〜1.28 mg/g 乾物)はいずれも実験で観測された範囲内に収まっていました。水分と灰分は、乾燥香辛料に関するインドネシア国家規格(SNI 01-4273-1996)の上限(それぞれ12%、7%)を満たしていました。
ただし著者らは、有意な回帰モデルが得られたのは水分だけであったため、この最適化の結果は正確な最適値ではなく、条件を選ぶ際の指針として受け取るべきだと明確に述べています。
この研究が示すこと
この研究が伝えているのは、アパの葉を乾燥させる際、温度を上げすぎない中程度の条件でも、水分を十分に下げながら測定した栄養面の品質項目を保てるという点です。言い換えれば、保存性を高めるための乾燥と、うま味や栄養に関わる成分を残すことは、ここで調べた範囲では両立しうるということになります。
伝統的に生のまま使われてきた地域の植物に、収穫後の処理条件という科学的な手がかりが加わったことで、著者らはアパの葉を植物由来の天然風味素材として扱う土台ができたと位置づけています。同時に、有意でなかった項目については解釈に慎重さが必要だという留保も、この研究が自ら示している重要な内容です。
著者:Titik Ismandari(University of Borneo Tarakan)、Amarullah Amarullah(University of Borneo Tarakan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Titik Ismandari, Amarullah Amarullah Response Surface Optimization of Drying Conditions for Processing Apa’ Leaves (Albertisia papuana Becc.) as a Plant, Based Natural Flavoring Ingredient. Journal of Applied Agricultural Science and Technology 2026-08-29. DOI: 10.55043/jaast.v10i3.489. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。