著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Jurnal Ilmiah Mandala Education

ライセンス: CC BY-SA 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的:卵白の代わりになる植物由来の泡立て素材を探る

マシュマロは、砂糖液に空気を含ませて泡立て、ゼラチンや卵白などで泡を支えて作るお菓子です。ふんわりと軽く弾力のある食感は、泡立ての際に取り込まれた気泡が保たれることで生まれます。卵白に含まれるたんぱく質は、空気と水の境目に集まって膜を作り、泡を安定させる役割を果たします。

一方、著者らは、卵白を使うと卵アレルギーのある人や、ヴィーガン・植物性中心の食生活を送る人が食べにくくなる点を指摘しています。そこで注目されているのが「アクアファバ」です。アクアファバは豆類、特にひよこ豆(ガルバンゾー)を煮たときに得られる、とろみのある煮汁です。卵白に似た泡立ちの性質を持つことが知られており、論文によると、ひよこ豆のアクアファバは他の豆のものより色や粘り、泡立ちが卵白に近いとされています。

ひよこ豆のアクアファバを卵白の代わりに使う研究はアイシングや焼き菓子などで報告されてきましたが、マシュマロへの応用を調べた研究は限られていました。インドネシアのジャカルタ国立大学の研究チームは、マシュマロの卵白の一部をアクアファバに置き換えたとき、物理的な性質と味や香りなどの感じ方(官能特性)がどう変わるかを調べ、望ましい置き換えの割合を見つけることを目的としました。

何を調べたか:置き換え割合の異なる3種類のマシュマロ

研究チームは、卵白の30%、45%、60%をひよこ豆のアクアファバに置き換えた3種類のマシュマロを作りました。砂糖、粉ゼラチン、バニラエッセンス、水の量はすべて同じにそろえ、卵白とアクアファバの比率だけを変えています。つまり、どのマシュマロにもゼラチンと残りの卵白は含まれており、卵白を完全になくした製品ではありません。

物理的な性質としては、マシュマロの密度(一定の体積あたりの重さ)を測りました。密度が低いほど、多くの空気を含んだ軽いマシュマロであることを意味します。測定は3回ずつ繰り返し、統計的な手法で違いがあるかを確かめました。

味や香りの評価には、同大学の調理教育を学ぶ学生45人が、ある程度の訓練を受けた評価者(セミトレーニングパネル)として参加しました。評価項目は、色、卵白の香り、ひよこ豆の香り、甘さ、ひよこ豆の風味、弾力(噛みごたえ)、口の中での溶けやすさの7つです。評価用紙は事前に大学教員5人が内容を確認し、評価者も採点方法の説明を受けてから試食しました。試料には無作為な3桁の番号を付け、出す順番も評価者ごとに入れ替えて、順番による先入観を減らす工夫がされています。

主な結果:密度は変わったが、味や香りの評価に差は見られず

密度は、アクアファバの割合が増えるほど高くなる傾向を示しました。平均値は30%置き換えで0.45 g/cm³、45%で0.47 g/cm³、60%で0.52 g/cm³でした。統計的な検定の結果、置き換えは密度に有意な影響を与えており、60%のマシュマロは30%・45%のものと明確に異なっていましたが、30%と45%の間には有意な差はありませんでした。

著者らはこの理由について、先行研究をもとに、アクアファバは卵白に比べて泡を作る力が弱く、泡から液体が抜けやすいため、取り込まれる空気が少なくなり、より詰まった(密度の高い)マシュマロになった可能性があると考察しています。

一方、味や香りなどの7つの評価項目では、いずれも置き換え割合による統計的に有意な差は見られませんでした。例えば色はどれも「アイボリーホワイト」に分類され、卵白の香りはどの試料でも「感じない」の区分に、ひよこ豆の香りと風味はいずれも「中程度に感じる」の区分に入りました。甘さについて著者らは、砂糖の量をそろえていたため、甘さの感じ方は主に砂糖で決まり、アクアファバの割合の影響は小さかったと説明しています。

平均点の大小だけを見ると、弾力は60%置き換え、色と口溶けの速さは45%置き換えが最も高い点数でしたが、これらは統計的に意味のある差ではありません。

研究が示すこと

この研究は、マシュマロの卵白の一部をひよこ豆のアクアファバに置き換えると、密度という物理的な性質は変わる一方で、今回の評価者が感じた色や香り、味、食感には目立った違いが生じなかったことを報告しています。論文の要旨では密度の面で30%置き換えが最もよい結果とされ、結論では、植物性素材を活用した泡菓子の候補として60%置き換えの配合をさらに開発していくことが勧められています。

豆を煮たときに出る煮汁という、ふだんは捨てられがちな素材が、マシュマロの卵白の一部を担える可能性を具体的な数値と評価で示した点に、この研究の意味があります。

原著論文の著者・所属:Muhammad Bagir Ellong(Universitas Negeri Jakarta)、Mutiara Dahlia(Universitas Negeri Jakarta)、Sachriani Sachriani(Universitas Negeri Jakarta)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Muhammad Bagir Ellong, Mutiara Dahlia, Sachriani Sachriani The Effect of Garbanzo Bean Aquafaba (Cicer arietinum) Substitution on the Physical and Sensory Quality of Marshmallow. Jurnal Ilmiah Mandala Education 2026-08-04. DOI: 10.58258/jatk2t22. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。