掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
乳酸菌は、糖を発酵させて主に乳酸をつくる細菌の仲間で、ヨーグルトや漬物など多くの発酵食品づくりに関わっています。一部の乳酸菌は、適切な量を摂取すると体に良い働きをもたらす生きた微生物、いわゆる「プロバイオティクス」の候補としても研究されています。
アフリカでは、家庭や地域で受け継がれてきた方法で発酵食品が作られています。しかし著者らによると、ナイジェリア、特にニジェール州の伝統発酵食品にどのような乳酸菌がいるのか、またその遺伝的な違いについての情報は限られていました。そこで研究チームは、同州ボッソ地域の伝統発酵食品から乳酸菌を分離し、その性質、プロバイオティクスとしての可能性、遺伝的な多様性を調べました。
何を調べたか
研究チームはボッソの市場で、発酵乳「ノノ」、ローカストビーン(マメ科樹木の種子)を発酵させた「ダワダワ」、発酵トウモロコシ粥「オギ」、発酵大豆食品「アワラ」を各3試料、計12試料集めました。これらを乳酸菌の培養に使われる専用の培地で育て、得られた菌の形や色、染色の結果、さまざまな生化学的な反応を調べました。
プロバイオティクスとしての可能性を見るため、3種類の試験を行いました。一つは、菌の培養液から菌体を取り除いた液体を、大腸菌、クレブシエラ属、シュードモナス属、黄色ブドウ球菌といった病原性細菌を塗った寒天培地に入れ、周囲に細菌が育たない輪(阻止円)がどれだけ広がるかを測る実験です。ほかに、酸性の強さを変えた条件(pH4〜1)と、食塩濃度を変えた条件(1〜6%)で菌が生き残れるかも調べました。
さらに、細菌の種類の判定に広く使われる「16S rRNA遺伝子」という遺伝子の配列を読み取り、データベースの既知の配列と照合して菌の種類を推定しました。配列同士を比べて系統樹を作り、分離した菌どうしの近縁関係も分析しています。
主な結果
分離された乳酸菌は計4株で、2株がノノ、1株ずつがダワダワとオギから得られました。いずれも乳酸菌に典型的な、グラム陽性の棒状の菌でした。遺伝子解析の結果、ノノ由来の2株はラクトバチルス・ファーメンタム(それぞれMCA株、1731株と近い配列)、オギ由来の1株はラクトバチルス・アギリス(1365株と近い配列)と同定されました。ダワダワ由来の1株は、配列の質が十分でなかったため種類を特定できませんでした。既知配列との一致度は94.61〜98.16%で、著者らは一致度が97%未満の菌について、近縁の株や同じ種の中の変異型である可能性を挙げています。
4株すべてが、試した病原性細菌のすべてに対して生育を抑える働きを示しました。最も大きな阻止円は、ノノ由来でファーメンタムと同定された株(MCA株に近いもの)がシュードモナス属に対して示した36.0mmでした。抑える強さは菌の組み合わせによって異なり、この株は多くの病原菌に対して比較的強い働きを示したと報告されています。
耐性試験では、すべての株が食塩濃度4%まで生育でき、同定された3株は5%にも耐えましたが、6%では全株が生育できませんでした。酸性条件では、全株がpH4で生き残った一方、より強い酸性では生存が下がり、pH2でわずかに耐えたのは前述のMCA株に近い株だけでした。系統樹では、分離株が乳酸菌の一群であるラクトバチルス属の中で2つのグループに分かれ、近い種どうしでも株レベルの違いがあることが示されました。
研究の意味
この研究は、ニジェール州の身近な伝統発酵食品に、病原性細菌の生育を抑える働きや塩・酸への耐性をもつ乳酸菌が含まれていることを、実験室での試験と遺伝子解析によって示しました。著者らはこれらの結果から、分離した乳酸菌が発酵食品づくりの種菌(スターター)や機能性のあるプロバイオティクスとして使える可能性があると考えています。地域の伝統食品が、有用な微生物の供給源として注目に値することを伝える報告といえます。
原著論文の著者・所属:Umar A. O.、Bala J. D.、Wuna M. M.、Adedeji A. S.、Beji Z. Y.、Enejiyon S. O.
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Umar A. O., Bala J. D., Wuna M. M., et al. Characterization, Probiotic Potential and Genetic Diversity of Lactic Acid Bacteria Isolated from Selected Indigenous Fermented Food Products, in Bosso, Niger State Nigeria. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-10-23. DOI: 10.5281/zenodo.23582827. 原著ライセンス:CC BY.