著者の所属・活動拠点の国は、メキシコ、カナダ、スペインです。
掲載誌:Starch - Stärke
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:未熟バナナ粉の主成分を詳しく知る
熟す前の青いバナナやプランテン(調理用バナナ)は、でんぷんを多く含む粉の原料として使われ始めています。背景には、消化されにくいでんぷんである「レジスタントスターチ」への関心と、栽培や収穫後に多く失われるバナナを有効に使おうという考え方があります。こうした粉の主成分はでんぷんです。そのため、粉の性質を活かすには、でんぷんの粒がどのような構造をしているかを知ることが欠かせない、と研究チームは考えました。
栽培バナナは、野生種ムサ・アクミナータに由来する「A」ゲノムと、ムサ・バルビシアナに由来する「B」ゲノムの組み合わせで分類されます。Aゲノムだけを持つ純系と、AとBを併せ持つ雑種があります。著者らによれば、品種の遺伝的な違いがでんぷん粒の形から微細な表面構造までの多段階の組織とどう結びつくかは、これまで調べられていませんでした。そこで研究チームは、純系(AAA)と雑種(AAB)のバナナでは、でんぷん粒の特徴に違いがあるという仮説を立てて検証しました。
何をどのように調べたか
対象は4品種です。調理用の雑種(AAB)としてプランテン系統の「プランテン」と「ドミニコ」、生食用の純系(AAA)としてレッドダッカ系統の「モラド」とキャベンディッシュ系統の「エナノ・ヒガンテ」を選びました。果実はいずれもメキシコ・オアハカ州トゥステペックの同じ畑から同じ時期に、まだ緑色の段階(開花から16〜17週)で収穫されました。
研究チームは果肉からでんぷんを取り出し、純度とアミロース量を測りました。アミロースは、でんぷんを構成する二つの成分のうち、鎖がほぼまっすぐにつながったほうです。続いて、粒の大きさの分布を測定し、光学顕微鏡と電子顕微鏡で粒の形と表面を観察しました。さらに、蛍光色素で染めた粒を共焦点顕微鏡で見て、木の年輪のように重なる内部の層(成長輪)を調べました。原子間力顕微鏡では、粒の表面にあるナノメートル単位の凹凸を観察しました。表面の画像からは、構造の複雑さを表す「フラクタル次元」と、すき間の偏りを表す「ラクナリティ」という二つの指標も計算しています。
主な結果:品種ごとに異なるでんぷん粒の姿
未熟な果肉の乾燥重量あたりのでんぷん量は、モラドが44.8%、エナノ・ヒガンテが約55.8%、ドミニコが59.5%、プランテンが60.1%でした。研究チームは、いずれも有力なでんぷん源になりうる値だとしています。取り出したでんぷんの純度はすべて91%を超えていました。アミロース量はモラドが最も高く、ドミニコが最も低いという結果でした。同じ純系どうし、同じ雑種どうしでも値に差がありました。
粒の大きさにも違いが見られました。エナノ・ヒガンテは粒の大きさのばらつきが最も小さく、最も多い粒の大きさは約20マイクロメートルでした。モラドとプランテンでは約30マイクロメートル、ドミニコでは約40マイクロメートルが最も多い大きさでした。形については、モラドで細長く大きな粒が目立ち、エナノ・ヒガンテでは丸い粒や楕円形の粒が中心でした。ドミニコは楕円形と丸形、プランテンは主に細長い粒に小さな楕円形の粒が混じっていました。偏光を当てると、内部が規則正しく並んだでんぷん粒に特有の十字模様が現れました。この模様はモラドとプランテンで特にはっきりしていました。電子顕微鏡で見た粒の表面は全体になめらかで、穴や割れ目は見られませんでした。
成長輪を観察すると、雑種の2品種は純系の2品種より強い蛍光を示しました。ただし、蛍光の強さはアミロース量と単純には対応していませんでした。著者らは、粒の大きさが影響した可能性を挙げ、この点はさらに調べる必要があるとしています。表面の微細構造では、どの品種にも20〜38ナノメートルほどの「ブロックレット」と呼ばれる小さな突起が見られました。フラクタル次元はプランテンで最も高く、エナノ・ヒガンテで最も低い値でした。ラクナリティはその逆の順になり、二つの指標は強い負の相関を示しました。著者らはこの結果を、粒が密に詰まった構造ほど、不規則なすき間が少なく均質になることを示すものと解釈しています。
この研究が示すこと
研究チームは、バナナ品種の遺伝的な背景が、でんぷん粒の大きさや形、内部の層、表面の微細構造と結びついていると結論づけています。未熟バナナの粉を食品や工業の用途に使う際、品種ごとのでんぷんの違いを知っておけば、目的に合った品種を選ぶ手がかりになります。この研究は、そうした選択の土台となる構造の情報を、同じ条件で育てた4品種について示したものです。
原著論文の著者・所属:Josué Moreno‐Zaragoza(Instituto Politécnico Nacional (IPN) Centro De Desarrollo de Productos Bióticos (CEPROBI) Yautepec Morelos México)、Edith Agama‐Acevedo(Instituto Politécnico Nacional (IPN) Centro De Desarrollo de Productos Bióticos (CEPROBI) Yautepec Morelos México)、José Alvarez‐Ramirez(Departamento De Ingeniería de Procesos e Hidráulica Universidad Autónoma Metropolitana‐Iztapalapa Iztapalapa México)、Cristina M. Rosell(Department of Food and Human Nutritional Sciences University of Manitoba Winnipeg Canada; Instituto De Agroquimica y Tecnologia De Alimentos (IATA‐CSIC) Paterna Spain)、Andres Aguirre‐Cruz(Tecnológico Nacional de México Campus Tuxtepec Tuxtepec Oaxaca México)、Luis Arturo Bello‐Pérez(Instituto Politécnico Nacional (IPN) Centro De Desarrollo de Productos Bióticos (CEPROBI) Yautepec Morelos México)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Josué Moreno‐Zaragoza, Edith Agama‐Acevedo, José Alvarez‐Ramirez, et al. Unripe Banana Genotypes are Starchy Sources. Part I. Morphology, Growth Rings, and Ultrastructure of Native Starches. Starch - Stärke 2026-09-29. DOI: 10.1002/star.70303. 原著ライセンス:CC BY.