掲載誌:International Journal of Humanities Law and Politics
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
私たちが日々何を食べるかは、その土地の食文化と切り離せません。しかし研究チームは、こうした地域の料理文化が食の好みや調理の仕方、日常の食事内容をどのように形づくるのかについては、これまで十分に検討されてこなかったと指摘しています。
そこで著者らは、「地域の食文化への親しみ(Local Culinary Cultural Preference、以下LCCP)」と「食事の摂取パターン」との関連を調べることを目的に、文化的に異なるインドネシアの4地域を対象とした調査を行いました。
調べ方
調査は、スマトラ島西部(スマトラ・バラット)、ジョグジャカルタ、バリ、スラウェシ島南部(スラウェシ・スラタン)の4地域で実施され、各地域150人ずつ、合計600人の成人が参加しました。地域を横並びに比べる形で、同じ時点の状況を一度に把握する設計(横断的比較デザイン)が用いられています。
地域の食文化への親しみは、6つの側面からなる18項目の質問票で、あてはまる度合いを段階的に答える形式(リッカート尺度)によって測定されました。食事の側面としては、食品の種類の幅広さを示す「食事多様性」、必要な栄養素が足りているかを示す「栄養素充足度」、エネルギー量、三大栄養素、食物繊維、そして超加工食品(工業的に高度に加工された食品)の摂取頻度が取り上げられています。
著者らは、地域間の比較、相関の分析に加えて、年齢や性別などの人口学的特性、社会経済的状況、生活習慣、食品の入手しやすさといった要因の影響を統計的に調整した回帰分析を行ったと報告しています。
主な報告結果
まず、地域の食文化への親しみの度合いは地域によって有意に異なり、平均値が最も高かったのはスマトラ・バラット(4.08)、最も低かったのはバリ(3.49)でした。
食文化への親しみが高い人ほど、食事多様性、栄養素充足度、食物繊維の摂取が高い傾向にあり、超加工食品を食べる頻度は低い傾向にあったと報告されています。これらの関連は、上記の各要因を調整した後も残り、食事多様性(b=0.229、p=0.002)、栄養素充足度(b=4.853、p<0.001)、食物繊維摂取(b=0.692、p=0.013)、そして超加工食品の摂取頻度の低さ(b=−1.154、p<0.001)と有意に関連していました。一方で、エネルギー量や三大栄養素の摂取量との関連は認められませんでした。
また、地域によって関連の強さが変わるという交互作用は有意ではなく、著者らはこの関連が調査地の違いを越えて概ね一貫していたと述べています。なお、この研究は同じ時点の状況を比べた調査であり、報告されているのは関連であって、因果関係が示されたわけではありません。
この結果が示すこと
著者らは、これらの結果から、地域の食文化への親しみは「どれだけ食べるか」という量ではなく、「何をどう食べるか」という食事の質に関わる要因として位置づけられると述べています。そして、その土地の食文化をふまえた栄養の取り組みを支持するものだとしています。
食文化を、栄養の観点から乗り越えるべき習慣ではなく、食事の質を理解するための手がかりとして見直す視点を示した研究といえます。
著者:Setyo Luthfi Okta、Nestia Lianingsih
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Setyo Luthfi Okta, Nestia Lianingsih. The Influence of Local Culinary Cultural Preferences on Community Nutritional Consumption Patterns: A Cross-Regional Case Study. International Journal of Humanities Law and Politics 2026-09-30. DOI: 10.46336/ijhlp.v4i3.382. 原著ライセンス:CC BY.