著者の所属・活動拠点の国は、スイス、ドイツです。

掲載誌:Journal of Agriculture and Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

家庭の食品ロスを「理由」から捉える

研究チームによると、食品の廃棄は世界的な課題で、廃棄量の約6割は家庭から出ています。スイスでも、食品が生産から消費に至る過程で失われる量のうち、家庭が占める割合は38%で、すべての段階の中で最も大きいとされています。スイスは2030年までに、2017年と比べて食品ロスを半減させる行動計画を掲げています。

一方で、家庭の人々が食品を捨てる理由、減らすのを難しくしている事情(障壁)、有効だと考える対策を国全体の規模で調べた研究は限られていました。そこで著者らは、食品や飲料の種類ごとに主な廃棄原因を明らかにすること、削減を妨げる障壁を調べること、削減策と、その対策を誰が担うべきかを探ることの三つを目的としました。研究は探索的で、主に実態を記述するために設計されています。

515世帯が1週間、捨てた食品を量って記録

研究チームは、スイス連邦統計局から無作為に抽出した世帯に参加を呼びかけました。この抽出では、対象をいくつかの層に分けてから偏りなく選ぶ方法がとられています。最終的に、ドイツ語圏、フランス語圏、イタリア語圏の3言語地域にわたる515世帯のデータが分析されました。

調査の対象は、本来は人が食べられたのに捨てられた「避けられる食品ロス」です。参加世帯は2024年11月から12月中旬までの間で連続した7日間を選び、捨てた食品や飲料をデジタルキッチンスケールで量りました。ニンジンやジャガイモの皮のような食べられる部分は記録の対象とし、鶏の骨やバナナの皮のように食べられない部分は対象外としています。記録には、日記の形式で入力するウェブアプリを使い、食品の種類と重さに加えて、捨てた主な理由も選んでもらいました。

記録期間のあとには、オンライン調査で、食品ロスを減らすうえでの障壁を選択肢から選んでもらいました。さらに、どんなことが削減に役立つかを自由に書いてもらいました。削減策に関する有効な回答が得られたのは244世帯です。

多かったのは食べられる皮の廃棄と傷み

参加者が報告した食品ロスは、1人あたり1週間に平均401.9グラムでした。そのうち53.5%を、野菜・果物などの生鮮食品が占めていました。

捨てた理由として最も多く挙げられたのは、食べられる皮を捨てたことで、全体の34%でした。次いで、傷んでしまったこと(24%)、作りすぎたこと(12%)、食習慣や品質の低下(9%)、「賞味期限」を過ぎたこと(7%)が続きました。食品の種類によって理由が異なることも示されました。乳製品や卵では傷みが多く、でんぷん質の付け合わせや料理の残り物では作りすぎが目立ちました。パンや肉、魚では、固くなったパンの端を食べないといった食習慣や品質の低下が主な理由でした。

削減を妨げる障壁については、回答者の79.5%が、少なくとも一つは当てはまると答えました。最も多かったのは、家庭で堆肥にしているので減らす必要はないという考えで、19%でした。この研究では、堆肥にした食品も食品ロスに数えています。次いで多かったのは、食品を捨てても大きな出費にはならないという認識(13%)と、家族の健康的な食事のために多様な食品を買う必要があること(8%)でした。

参加者の自由記述からは、72の具体的な削減策が集まり、研究チームはそれらを10のグループに整理しました。特に多かったのは、意識して調理し食べること(1週間の献立を立てる、量を控えて作る、1人分の量をよく考えるなど)、意識して買い物をすること(買い物リストを使い、必要な分だけを買う)、保存の管理を改善すること(冷凍の活用、冷蔵庫や冷凍庫の中身の把握)でした。提案の多くは消費者自身が担う対策でしたが、小さな包装や1人分の商品を増やすなど、小売店や政府の役割に触れたものもありました。

行動と思い込みを見直す余地

著者らは、家庭の食品ロスの多くは避けられる行動から生じていると結論づけています。その例として、食べられる皮を捨てること、捨てても出費は小さいと受け止めていること、堆肥にすれば十分だという誤解を挙げています。そのため、食品をより無駄なく使えるよう、消費者の意識や行動の変化を促す取り組みが必要だとしています。

参加者が、責任は消費者だけでなくスーパーマーケットや連邦政府にもあると認識していた点も示されました。著者らはこれを、家庭、小売、行政が連携して対策を進めることの重要性を裏づけるものとして位置づけています。

原著論文の著者・所属:Carole Liechti(Research Group Economic Modelling and Policy Analysis, Agroscope, Ettenhausen, Switzerland)、Gabriele Mack(Research Group Economic Modelling and Policy Analysis, Agroscope, Ettenhausen, Switzerland)、Kevin O'Sullivan(Department of Management, Technology and Economics, ETH Zürich, Switzerland)、Sabrina Stöckli(Institute for Marketing and Global Management, Bern University of Applied Sciences, Switzerland)、Verena Tiefenbeck(Chair of Digital Transformation, Friedrich-Alexander-Universität Erlangen-Nürnberg, Germany)、Jeanine Ammann(Research Group Economic Modelling and Policy Analysis, Agroscope, Ettenhausen, Switzerland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Carole Liechti, Gabriele Mack, Kevin O'Sullivan, et al. Causes, barriers, and prevention strategies for household food waste in Switzerland. Journal of Agriculture and Food Research 2026-08-01. DOI: 10.1016/j.jafr.2026.103204. 原著ライセンス:CC BY.