著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

高齢化に伴い脊椎の病気は増えており、痛みや動きにくさを改善するために脊椎手術を受ける高齢者も増えています。手術のストレスに耐え、術後のリハビリに取り組む力は体の予備力に左右されます。その予備力に関わる要因のなかで、低栄養は適切に見つけて対処すれば改善できる可能性があるため、特に重要だと考えられています。

これまでにも、手術前の低栄養と脊椎手術後の再入院、せん妄、入院の長期化、手術部位の感染との関連が報告されてきました。ただし先行研究の多くは、個別の血液検査値や術後早期の経過に注目していました。障害の程度、痛み、生活の質、自立度などの長期的な回復との関係は十分に分かっていません。そこで中国の研究チームは、国際的な低栄養診断基準であるGLIM基準で判定した手術前の低栄養と、予定された脊椎手術から12か月後までの機能回復との関連を調べました。

何をどのように調べたか

対象は、2020年から2024年に一つの大学病院の脊椎センターで、変性疾患(加齢などによる椎間板や脊柱管の変化)に対する予定手術を受けた成人900人です。研究チームは既存の診療記録をさかのぼって分析しました。外傷、感染、がんによる手術を受けた人は対象から外しています。

GLIM基準では、体重減少、低いBMI、筋肉量の減少といった体の状態に関する項目を少なくとも一つ満たし、さらに食事量の減少や病気に伴う炎症といった原因に関する項目も少なくとも一つ満たした場合に、低栄養と判定します。この基準により、患者は低栄養なし(270人)、軽度(324人)、中等度(198人)、重度(108人)の4群に分けられました。全体の7割に何らかの程度の低栄養がありました。

主な評価項目は、腰痛による日常生活の障害度を示すオズウェストリー障害指数(ODI)です。ODIは点数が高いほど障害が重いことを意味し、術後3、6、12か月に測定しました。患者にとって意味のある改善として、ODIが12点以上改善したかどうかも調べています。このほか、腰や脚の痛み、生活の質、自立度、術後の合併症、30日以内の死亡などを比較しました。

主な結果

どの群でも手術前に比べて12か月後には機能が改善していました。ただし、改善の程度は低栄養が重いほど小さくなっていました。12か月後のODIの平均は、低栄養なし群で16.8、軽度群で25.4、中等度群で36.2、重度群で49.8でした。ODIが12点以上改善した人の割合は、低栄養なし群の90.4%に対し、重度群では63.0%にとどまりました。12か月後の腰や脚の痛み、生活の質の指標でも、同じように低栄養が重い群ほど結果が悪い傾向がみられました。

術後の合併症は、低栄養なし群の10.4%に対し重度群では59.3%に起きていました。重い合併症はそれぞれ3.7%と24.1%、30日以内の死亡は0%と7.4%でした。多変量解析では、重度の低栄養は12か月後の機能不良(ODIが40を超える状態)の強い予測因子でした(オッズ比5.64)。また、重度の低栄養がある人は機能回復に至りにくいことも示されました(ハザード比0.46)。

なお、低栄養が重い群ほど、年齢が高く、持病が多く、手術前の障害の程度も重い傾向がありました。この研究は過去の記録を用いた観察研究であり、示されたのは低栄養と術後経過との関連です。低栄養が悪い結果の直接の原因であることを証明したものではありません。

研究が示すこと

著者らは、GLIM基準による手術前の低栄養が、脊椎手術後の機能回復の遅れ、合併症、入院期間の重要な予測因子であると結論づけています。そのうえで、手術前の栄養評価と栄養状態の改善が術後の経過をよくする助けになる可能性を指摘しています。手術の成功を術直後の合併症だけでなく、1年にわたる生活機能の回復という視点からも捉える際に、手術前の栄養状態が見逃せない手がかりになることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Daodong Chen(Department of Orthopedics, Xinxiang Central Hospital, The Fourth Clinical College of Henan Medical University)、Yongbo Yang(Department of Orthopedics, Xinxiang Central Hospital, The Fourth Clinical College of Henan Medical University)、Yanjun Guo(Department of Orthopedics, Xinxiang Central Hospital, The Fourth Clinical College of Henan Medical University)、Zhenjun Zhu(Department of Orthopedics, Xinxiang Central Hospital, The Fourth Clinical College of Henan Medical University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Daodong Chen, Yongbo Yang, Yanjun Guo, et al. Association of nutritional risk with postoperative functional outcomes in patients undergoing spinal surgery: a retrospective cohort study. Frontiers in Nutrition 2026-10-20. DOI: 10.3389/fnut.2026.1926068. 原著ライセンス:CC BY.