著者の所属・活動拠点の国は、ブルガリア、イタリアです。

掲載誌:Plants

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

厄介者の外来植物に、食と健康の資源としての顔はあるか

もともとその土地になかった植物が持ち込まれて野生化し、在来の植物を押しのけて広がる「侵略的外来植物」は、世界各地で生態系のバランスを崩し、地域の生物多様性を脅かしています。一方で、こうした植物の中には、原産地や新たに広がった土地で昔から食べられてきたものも少なくありません。

本論文の著者らは、生態系が人間にもたらす恵み、つまり食料や原材料などを提供する「生態系サービス」の観点から、侵略的外来植物を見直しています。食べられる外来植物を、リスクに十分配慮した管理の枠組みの中で利用できるかを検討するため、既存の研究を整理しました。

対象は、アマランサスの一種であるアマランサス・ヒブリドゥス、イタドリとオオイタドリの雑種であるレイノウトリア・ボヘミカ、ウチワサボテンの一種オプンティア・フミフサ、カタバミ、ヨウシュヤマゴボウ、そして南アフリカ原産の多肉植物カルポブロトゥス・エドゥリスの6種です。著者らによれば、これらはいずれも在来植物を圧倒するほど旺盛に広がる一方、食用としての歴史が豊富で、薬理的な働きが期待される成分を多く含むことから選ばれました。

文献から分布、食習慣、成分、安全性を整理

この研究は、新たな実験を行ったものではなく、既存の文献をまとめたレビュー論文です。研究チームは、系統的な文献レビューの手順を示した国際的な指針(PRISMA)に沿って、1990年から2026年までの主要なデータベースを調べました。

整理した項目は、各植物の分布と生態の特徴、各地での食べ方や伝統的な利用法、含まれる化学成分、人を対象としない段階の研究(試験管内の実験や動物実験)で報告された生物学的作用、そして安全性に関わる知見です。

世界各地の食文化と、期待される成分

著者らが整理した民族植物学の記録によると、これらの植物は世界のさまざまな地域で食料や料理の素材として使われてきました。アマランサス・ヒブリドゥスは、中南米では若い葉や芽を野草料理として、アフリカ南部では伝統的な葉物野菜として食べられています。北米の先住民の間では、トウモロコシ中心の食事に不足しがちな必須アミノ酸リシンを補う食材として、伝統的な畑作の中に組み込まれていたと記されています。

レイノウトリア・ボヘミカはヨーロッパで自然に生まれた比較的新しい雑種のため、伝統的な利用の記録はありません。そこで著者らは親の種の利用を紹介しています。そのひとつイタドリは、日本の高知県で炒め物や煮物、ちらし寿司などに使われ、店頭でも売られる身近な食材です。オプンティア・フミフサは韓国で果実をシロップに加工するなど、伝統的な食文化に組み込まれています。南アフリカではカルポブロトゥス・エドゥリスの果実がジャムやピクルスに使われ、干した果実が今も市場で売られています。ヨウシュヤマゴボウは、北マケドニアやブルガリア南西部など新たに広がった土地で、ロールキャベツに似た料理「サルマ」の素材として使われ始めた例も挙げられています。

成分面では、これらの植物がフラボノイド、アントラキノン、スチルベン、トリテルペノイドなど、生物活性が注目される化合物を含むことが報告されています。たとえばレイノウトリア・ボヘミカの根茎について、著者らは、イタドリと比べてレスベラトロールが約24%多く含まれていたという既存研究を紹介しています。

人を対象としない段階の研究では、血糖の上昇を抑える方向の作用、抗炎症作用、抗酸化作用、細胞の増殖を抑える作用が示されていると著者らはまとめています。ただし、種によっては研究の数が限られているとも述べています。アマランサス・ヒブリドゥスで報告された強い糖分解酵素の阻害作用は、複数の種をまとめて調べた研究によるもので、この種だけの作用とは断定できないと注意しています。

利用には毒性の慎重な評価が欠かせない

一方で著者らは、これらの植物を利用するには毒性の厳密な評価が必要だと強調しています。たとえばカタバミはシュウ酸カルシウムを多く含み、ヨウシュヤマゴボウはトリテルペノイドサポニンを多く含みます。ヨウシュヤマゴボウは17世紀にヨーロッパへ持ち込まれた後、赤ワインの色付けに使われましたが、誤って中毒を起こすのを防ぐため法律で禁止された経緯も紹介されています。また、アマランサス・ヒブリドゥスなどでは、毒性についての総合的なデータがまだ不足しているとされています。

なお、各地で伝えられてきた薬としての使い方は伝統的な利用の記録であり、報告された作用の多くも実験段階のものです。人の健康への効果が確かめられたわけではありません。

著者らは、こうした植物をリスクに配慮した枠組みの中で管理すれば、侵略的外来植物という「問題」を価値ある生物資源に変えられ、持続可能な開発と人の健康を支えうると結論づけています。駆除の対象と見られがちな植物にも、各地の食文化の中で培われた価値と注意すべき危険の両面があることを、この論文は示しています。

原著論文の著者・所属:Ekaterina Kozuharova(Department of Pharmacognosy, Faculty of Pharmacy, Medical University-Sofia, 1000 Sofia, Bulgaria)、Ivan Stambolov(Department of Pharmacognosy, Faculty of Pharmacy, Medical University-Sofia, 1000 Sofia, Bulgaria)、Irena Mincheva(Institute of Chemical Engineering, Bulgarian Academy of Sciences, Acad. Georgi Bonchev Str., Bl. 103, 1113 Sofia, Bulgaria)、Aleksandar Shkondrov(Department of Pharmacognosy, Faculty of Pharmacy, Medical University-Sofia, 1000 Sofia, Bulgaria)、Ilina Krasteva(Department of Pharmacognosy, Faculty of Pharmacy, Medical University-Sofia, 1000 Sofia, Bulgaria)、Francesco M. Raimondo(PLANTA/Center for Research, Documentation and Training, Via Serraglio Vecchio 28, 90123 Palermo, Italy)、Giuseppe Antonio Malfa(Department of Drug and Health Sciences, University of Catania, Viale A. Doria 6, 95125 Catania, Italy; Research Centre on Nutraceuticals and Health Products (CERNUT), University of Catania, Viale A. Doria 6, 95125 Catania, Italy)、Rosaria Acquaviva(Department of Drug and Health Sciences, University of Catania, Viale A. Doria 6, 95125 Catania, Italy; Research Centre on Nutraceuticals and Health Products (CERNUT), University of Catania, Viale A. Doria 6, 95125 Catania, Italy)、Vladimir Vladimirov(Institute of Biodiversity and Ecosystem Research-Bulgarian Academy of Sciences (IBER-BAS), Acag. G. Bonchev Str. 23, 1113 Sofia, Bulgaria)、Vivienne Spadaro(Department of Biological, Chemical and Pharmaceutical Sciences and Technologies, Section of Botany, Anthropology and Zoology, University of Palermo, Via Archirafi 38, 90123 Palermo, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ekaterina Kozuharova, Ivan Stambolov, Irena Mincheva, et al. Edible Alien Invasive Plants: Ecosystem Services for Health Benefits?. Plants 2026-10-28. DOI: 10.3390/plants15213344. 原著ライセンス:CC BY.