著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:INSOLOGI Jurnal Sains dan Teknologi

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

家族が必要な栄養をとれるかどうかは、その世帯が十分な食料を安定して手に入れられるかどうか、つまり「世帯の食料安全保障」と深く関わっています。研究チームは、インドネシア中部ジャワ州ボヨラリ県のセロ郡で、世帯の食料安全保障と、5歳未満の子どもをもつ母親の栄養状態との関連を調べました。

著者らによると、母親は家庭で食材を選び、調理し、食事を用意する中心的な役割を担っています。母親の栄養状態は、子どもの発育不良などの栄養問題とも関わるとされています。セロ郡はメルバブ山とムラピ山にはさまれた標高の高い農村地域で、野菜などの園芸作物の栽培が盛んです。著者らは、これまでの同様の研究が都市部や沿岸部に偏り、高地の農村地域での研究は限られていたことから、この地域を対象にしたと説明しています。

どのように調べたか

調査はセロ郡のジュラカ村、クラカ村、トロゴレレ村の3村で行われました。無作為に選ばれた5歳未満児の母親108人が分析の対象です。妊娠中の人や、栄養状態に影響する慢性疾患をもつ人は対象から除かれました。研究は、ある一時点の状態を調べて関連をみる横断研究という方法で行われています。

世帯の食料事情は、国際的に使われている9問の質問票(HFIAS)で尋ねました。過去30日間に、食料が足りるか心配したことがあるか、好きな食べ物を控えたり食事の種類が限られたりしたか、食事の量や回数を減らしたか、といった経験を聞き取るものです。回答をもとに、各世帯を「食料が確保できている世帯」と「食料が不安定な世帯」に分けました。母親の栄養状態は、体重と身長を実際に測ってBMI(体格指数)を計算し、やせ、標準、過体重、肥満に分類しました。そのうえで、食料事情とBMIによる栄養状態との関連を統計的に検定しています。

主な結果

調査した世帯の51.9%が、食料が不安定な世帯に分類されました。質問ごとにみると、「食事の種類が少なかった」と答えた世帯が56%と最も多く、「食料が足りるか心配した」も44.4%にのぼりました。一方、食べ物が尽きて食事をとれなかった、空腹のまま寝た、といった深刻な状態の経験は1割未満にとどまりました。

母親のBMIでは、やせに当たる人は108人中9人(8.3%)でした。標準体重が32.4%、過体重が20.4%で、肥満に分類される人は合わせて38.9%いました。

食料事情との関連をみると、やせの母親は、食料が不安定な世帯では56人中8人(14.3%)、食料が確保できている世帯では52人中1人(1.9%)でした。研究チームは、世帯の食料事情と母親の栄養状態との間に統計的に意味のある関連があったと報告しています(p=0.033)。やせになる見込みを比べる指標であるオッズ比は8.50で、食料が不安定な世帯の母親は、やせに当たる可能性が約8.5倍高いという結果でした。ただし、この値の95%信頼区間は1.024から70.524と幅が広くなっています。著者ら自身も、やせの人が9人と少なく、栄養状態の分布に偏りがあった点を指摘しています。

この研究が示すこと

この研究は、高地の農村地域でも、世帯の食料事情と母親のやせとの間に関連がみられたことを報告しています。同時に、食料が不安定な世帯にもやせではない母親が多く、肥満の母親も少なくありませんでした。著者らは、一つの地域に栄養不足と栄養過多が同時に存在する「栄養不良の二重負荷」が表れているとみています。

研究チームは、母親の栄養状態は食料事情だけで決まるものではないと結論づけています。収入などの社会経済的な条件、食事の内容や習慣、エネルギー摂取量、身体活動、さらに妊娠・出産に伴う体重変化のような生物学的な要因も関わる、という考え方です。食料が手に入るかどうかに加えて、何をどのように食べているかにも目を向ける必要があることを示す報告といえます。

原著論文の著者・所属:Makhabatien Salmania(Universitas Muhammadiyah Surakarta)、Luluk Ria Rakhma(Universitas Muhammadiyah Surakarta)、Siti Nurokhmah(Universitas Muhammadiyah Surakarta)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Makhabatien Salmania, Luluk Ria Rakhma, Siti Nurokhmah. Hubungan Ketahanan Pangan dengan Status Gizi Ibu Balita di Kecamatan Selo Boyolali. INSOLOGI Jurnal Sains dan Teknologi 2026-08-07. DOI: 10.55123/insologi.v5i4.9093. 原著ライセンス:CC BY.