加齢とともに筋肉量を保つために、プロテインパウダーなどのタンパク質サプリメントを取り入れる高齢者は少なくありません。一方で、体内でタンパク質と糖が結びついてできる「終末糖化産物(AGEs)」という物質は、加齢に伴う体の変化との関連が指摘されており、食事内容によって量が左右されることが知られています。タンパク質の摂取を増やすことが、このAGEsにどう影響するのかは、これまで十分に調べられていませんでした。
今回紹介する研究は、シンガポール国立大学の研究チームが、高齢者を対象に行った16週間の無作為化比較試験(RCT)です。平均年齢66歳の高齢者55人を、(1)サプリメントを摂取しない対照群、(2)動物性のカゼインたんぱく質を摂取する群、(3)植物性の大豆たんぱく質を摂取する群の3グループに分け、それぞれの血中・皮膚・食事由来のAGEsの変化を比較しました。なお、参加者全員がシンガポールの食事指針である「My Healthy Plate(MHP)」に沿った健康的な食事パターンを続けながら試験に参加している点が特徴です。
研究でわかったこと
16週間の試験の結果、健康的な食事パターンを守っている限り、カゼインでも大豆でも、タンパク質サプリメントの摂取によって食事由来のAGEs、皮膚のAGEs、そして血中の総AGEs量には、全体として目立った変化は見られませんでした。
ただし、AGEsの中でも個別の物質に着目すると、タンパク質の種類によって異なる動きが確認されています。大豆たんぱく質を摂取したグループでは、血中の「CML(N6-(1-カルボキシメチル)-L-リジン)」という特定のAGEsが、他のグループと比べて有意に増加しました(試験開始時0.72から16週目には0.80へ上昇)。一方、カゼインを摂取したグループでは、同じグループ内での比較において「ペントシジン」という別のAGEsが有意に増加していました(試験開始時0.77から16週目には0.80へ上昇)。これら以外のAGEsについては、目立った変化は認められなかったとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
著者らは、カゼイン摂取後に見られたペントシジンの増加について、グループ間での比較では有意差が確認されておらず、グループ内のみの変化であるため、慎重に解釈する必要があり、さらなる検証が必要だと述べています。また、この研究は55人という限られた人数を対象にしたものであり、対象地域もシンガポールの高齢者に限られています。タンパク質サプリメントが健康に悪影響を及ぼすと結論づける研究ではない点にも注意が必要です。あくまで一つの研究であり、今回の結果だけで結論が確定したわけではありません。
まとめ
この研究では、健康的な食事パターンを維持している高齢者において、カゼインや大豆のタンパク質サプリメントを16週間摂取しても、体内の終末糖化産物(AGEs)の全体量には大きな変化が見られなかったと報告されています。一方で、大豆たんぱく質摂取時のCML増加や、カゼイン摂取時のペントシジンの変化など、タンパク質の由来によって特定の物質に異なる反応が見られる可能性が示唆されており、今後さらなる研究による検証が待たれます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Marcus Ting, Ian En Kai Mak, Yueying Yao, et al. Investigating the Impact of Protein Supplementation from Different Sources on Advanced Glycation End Products in Older Adults in Singapore Following a Healthy Dietary Pattern. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18172925. 原著ライセンス: cc-by.