お茶を淹れたあとに残る「茶かす」は、これまで多くが廃棄されてきました。しかし茶かすには食物繊維などの成分が含まれており、これを有効活用できれば資源の無駄を減らせると期待されています。今回紹介する研究では、プーアル茶のしぼりかすを微生物で発酵させることで、食物繊維の性質を変化させ、より利用しやすい形に改質する試みが報告されています。
この研究では、プーアル茶かすに黒麹菌(Aspergillus niger)という微生物を加えて発酵させ、食物繊維を改質する方法が検討されました。発酵時間やpH、固形分と液体の比率、菌の接種量といった条件を、単因子実験と応答曲面法という手法を用いて最適化したとされています。その結果、発酵時間2.5日、pH5.5、固液比1:15(g/mL)、黒麹菌の接種量9%という条件が、最も良い結果を得られる条件として示されました。
研究でわかったこと
この最適条件のもとで発酵を行うと、プーアル茶かすに含まれる可溶性食物繊維(SDF)の収率が12.07%まで増加したと報告されています。可溶性食物繊維とは、水に溶けやすい性質を持つ食物繊維のことです。
さらに、走査型電子顕微鏡を用いて発酵前後の食物繊維の様子を観察したところ、発酵後の食物繊維は小さな断片や粒子の形になり、層状の構造を持ち、表面が粗く、内部の構造が緩んだ状態になっていたとされています。
また、食物繊維の理化学的な性質を調べたところ、発酵による改質後は、水を保持する力(保水力)が19.28%、油を保持する力(保油力)が35.14%、水を吸って膨らむ力(膨潤力)が53.85%、それぞれ増加したことが示されました。これらの性質は、食品の加工や食感に関わる特性として知られています。
これらの結果から、著者らは黒麹菌による発酵を用いた改質によって、プーアル茶かす由来の可溶性食物繊維の含有量を効果的に増やせることが示唆されるとし、茶かす食物繊維を用いた健康食品の開発や産業応用を後押しするものと結論づけています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
本研究は、特定の発酵条件のもとでプーアル茶かすの食物繊維を改質する製法とその理化学的な性質の変化を調べたものであり、ヒトが摂取した際の健康への影響や効果を直接検証したものではない点に留意が必要です。あくまで一つの研究であり、これによって結論が確定したわけではありません。食品への応用可能性を示す基礎的な知見として捉えるのが適切と考えられます。
まとめ
この研究では、プーアル茶のしぼりかすを黒麹菌で発酵させることで、可溶性食物繊維の収率や、保水力・保油力・膨潤力といった性質が向上したことが報告されました。廃棄されがちな茶かすを有効活用する一つの手法として、今後の食品分野での研究や応用の広がりが注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:プーアル茶かす発酵による食物繊維の改質:調製プロセスの最適化と理化学的性質(中国醸造・2026年04月)