この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Antigen Jurnal Kesehatan Masyarakat dan Ilmu Gizi
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の狙い
ジャムは、つぶした果実に砂糖を加えて煮詰め、パンに塗れるくらいの半固形にした食品です。この研究の著者らは、赤いローゼル(学名 Hibiscus sabdariffa)のがく片と、赤肉ドラゴンフルーツ(Hylocereus polyrhizus)の皮という二つの材料に着目しました。論文によれば、どちらもビタミンCと食物繊維を比較的多く含む素材です。
著者らが説明するところでは、ローゼルの赤いがく片は酸味と、アントシアニンという色素による鮮やかな赤色をもち、食品の天然色素や天然の酸味料としても使えます。いっぽう赤肉ドラゴンフルーツの皮は、食品加工の過程で捨てられることが多い部分ですが、ペクチン(ジャムをとろみづけするのに役立つ成分)や食物繊維、抗酸化成分を含むと報告されています。論文は、この二つの配合比率を変えたときに、できあがったジャムのビタミンC量と食物繊維量がどう変わるのかを明らかにすることを目的に掲げています。
なお論文の冒頭では、インドネシアの若い世代でビタミンCや食物繊維の摂取が推奨量に届いていないという先行研究が、研究の背景として紹介されています。これらは他の研究者による報告であり、本研究が新たに測ったものではありません。
何をどう調べたか
著者らは実験室でジャムを作り、成分を分析しました。主材料の合計を200グラムとし、ローゼルのがく片とドラゴンフルーツの皮の比率を4通りに変えた試作品を用意しています。内訳は、S1(ローゼル100%:皮0%)、S2(70%:30%)、S3(50%:50%)、S4(30%:70%)です。
作り方は、材料を洗い、ローゼルのがく片を実(さや)から外し、水100ミリリットルとともに2分ほどミキサーにかけるという手順から始まります。別に外したさやを水500ミリリットルで15分煮出し、その煮汁50ミリリットルと砂糖100グラムを加え、約80℃で30分ほど煮詰め、スプーンで持ち上げても落ちない固さになったところで火を止めています。実験の割り付けには完全無作為化法(扱いを無作為に配置する基本的な実験計画)を用い、各配合につき2回作り、さらに各回の分析を2回ずつ行って、合計16回の測定としました。
分析は外部の試験機関で行われ、ビタミンCは紫外・可視分光法(光の吸収量から濃度を求める方法)、食物繊維は複数の酵素を使うAOAC法(消化酵素で分解されずに残る成分を量る標準的な方法)が使われました。得られた値は統計ソフトで、分散分析とダンカン検定という手法により配合間の差を調べています。
報告された主な結果
ビタミンCが最も多かったのは、ローゼル100%のS1で、100グラムあたり160.81ミリグラムでした。最も少なかったのは、皮の割合が最大のS4で、100グラムあたり41.54ミリグラムです。論文は、全体としては皮の割合が増えるほどビタミンCは減る傾向にあったとしつつ、S2(74.81)からS3(84.37)にかけてはいったん値が上がるなど、単純な一直線の変化ではなかったことも記しています。著者らはこの上下について、使った材料の熟度や収穫後の保存条件、産地の気温などによってもともとのビタミンC量が変わること、さらにビタミンCが加熱で壊れやすく、煮詰める温度と時間の影響を受けることを理由として挙げています。
食物繊維は逆の傾向でした。最も多かったのは皮を70%使ったS4で100グラムあたり20.27グラム、最も少なかったのはローゼル100%のS1で10.91グラムです。皮の割合が高いほど食物繊維が多くなるという関係が見られ、著者らはこれを、赤肉ドラゴンフルーツの皮のほうがローゼルより食物繊維を多く含むため(いずれも先行研究の値)だと説明しています。
統計解析では、ビタミンC・食物繊維のいずれについても配合の違いによる差が認められ(有意確率p=0.000)、4通りの配合はたがいに有意に異なっていたと報告されています。また著者らは、インドネシアの食品表示基準では1食あたりの含有量で区分され、食物繊維3グラム以上で「繊維源」、6グラム以上で「高繊維」とされる点に触れたうえで、今回のジャムは食物繊維の多い食品の選択肢になりうると述べています。
この結果が示すこと
著者らの結論は明快です。ローゼルと赤肉ドラゴンフルーツの皮の配合比率は、できあがるジャムのビタミンC量と食物繊維量を左右する。そして二つの成分は同じ方向には動かず、ローゼルを増やせばビタミンCが多くなり、皮を増やせば食物繊維が多くなるという、いわば引っ張り合いの関係にあります。
ここから見えてくるのは、配合をどう決めるかが、そのまま「どちらの栄養成分を重く見るか」という選択になるということです。また、ふだん捨てられている果皮が、成分面から見れば加工食品の材料として意味をもちうることも、この研究が示した点のひとつといえます。論文自身は今後の課題として、各配合について味や香りなどを人が評価する官能試験を行うことを挙げています。
著者:Ayu Fadillah Afifah(Universitas Muhammadiyah Surakarta)、Pramudya Kurnia(Universitas Muhammadiyah Surakarta)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ayu Fadillah Afifah, Pramudya Kurnia Kadar Vitamin C dan Serat Pangan Selai dari Perbandingan Bunga Rosella Merah (Hibiscus sabdariffa) dan Kulit Buah Naga Merah (Hylocereus polyrhizus). Antigen Jurnal Kesehatan Masyarakat dan Ilmu Gizi 2026-08-31. DOI: 10.57213/antigen.v4i3.1117. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。