著者の所属・活動拠点の国は、ブラジル、ポルトガルです。

掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

変わりゆくアマゾンの食卓を問う

近年、世界各地で工業的に加工された食品や超加工食品をとる機会が増えています。伝統的な食事が置き換わっていくこの「食の移行」は、食事に関連する慢性疾患の増加や環境への負荷と結びつけて論じられてきました。研究チームによると、こうした変化は、土地や自然と深く結びついた食文化をもつ先住民や地域コミュニティ(IPLCs)で特に大きく現れています。

アマゾンの川沿いで暮らす人々の食は、魚と地元で作られるキャッサバ粉を中心に、地域の生態系や季節の移り変わり、都市までの距離などに左右されてきました。著者らは、アマゾンのIPLCsにおける食事の多様性と質を調べ、自然環境や社会経済の条件が「何を食べるか」と「どこで食品を手に入れるか」にどう関わっているのかを明らかにしようとしました。

六つのコミュニティで食卓を記録

調査はブラジル・アマゾン中部、ソリモンエス川流域にあるマミラウアとアマナの二つの持続可能な開発保護区で行われました。研究チームはまず、保護区内の164コミュニティについて、都市へのアクセス、収入源の多様さ、市場との結びつき、地元での生産、スーパーマーケットでの支出などをもとに似たもの同士をグループ分けしました。そのうえで、季節的な洪水で暮らしが大きく変わる氾濫原と、洪水による変化が比較的小さい「パレオヴァルゼア」と呼ばれる環境からそれぞれ三つずつ、異なる特徴をもつ六つのコミュニティを選びました。

2024年6月から11月にかけて、無作為に選んだ41世帯で、前日から当日にかけて食べたものをすべて聞き取る「24時間思い出し法」による調査、質問票、聞き取りインタビューが行われました。都市のスーパーマーケットでのまとめ買いで必ず買う品目も尋ねています。

分析には、生態学で生き物の多様性を測る考え方が応用されました。食品の品目を生物の「種」に見立て、一つの世帯で食べられた品目の豊富さ、世帯間での食事内容の違い、コミュニティ全体で見られた品目の総数という三つの段階で食の多様性をとらえています。あわせて、食べた食品を12の食品群に分類し、何種類の食品群をとったかを数える「世帯食事多様性スコア(HDDS)」で食事の質を評価しました。食品は加工の程度によっても分類されています。

食べるものと買うものを左右する要因

24時間思い出し法では84品目の食品が報告され、よく食べられていたのはコーヒー、地元のキャッサバ粉、魚、米、牛乳、バナナでした。コーヒーは砂糖入りで一日に何度も飲まれることが多かったと報告されています。

世帯の食べ物の構成の違いと統計的に意味のある関連を示したのは、作物の多様性だけでした。一方、スーパーマーケットで購入する食品の構成には、コミュニティ内の小さな商店(ミニマーケット)の有無、漁業による収入、そして暮らしている生態系の特徴が主に関連していました。

研究チームは当初、食べる食品群の種類が多い世帯ほど選択肢が広く、質の高い食事をとっていると予想していました。しかし結果として、食事の多様性が高いことは必ずしも健康的な食事を意味しませんでした。HDDSの値が高い世帯ほど、工業的に加工された食品や超加工食品をより多くとっている傾向がみられたのです。

環境と暮らしが織りなす食の姿

著者らは、都市から離れたコミュニティでは、季節に左右される天然の食料や栽培作物の手に入りやすさと多様さが食べるものに関わっている可能性があり、一方で食品の購入は、加工食品が身近で手に入るかどうかや都市への行きやすさに影響されているようだと考察しています。

この研究は、アマゾンのIPLCsの食事が、環境の制約、経済的な機会、自給のための暮らし方が絡み合った結果として形づくられていることを示しています。食品群の数で測る多様性が高くても、それが超加工食品によるものであれば健康的とは限らないという指摘は、食の多様性をどう評価するかを考えるうえで重要です。著者らは、伝統的な食の仕組みと地元での多様な生産を支え、超加工食品の影響の広がりを和らげるために、地域の実情に合わせた政策が必要だとしています。

原著論文の著者・所属:Daiane Soares Xavier da Rosa(Faculdade de Ciências, CE3C – Center for Ecology, Evolution and Environmental Changes and CHANGE – Global Change and Sustainability Institute, Universidade de Lisboa; Grupo de Pesquisa em Territorialidades e Governança Socioambiental na Amazônia, Instituto de Desenvolvimento Sustentável Mamirauá)、Henrique dos Santos Pereira(Instituto Nacional de Pesquisas da Amazônia)、João Afonso Baptista(Instituto de Ciências Sociais, Universidade de Lisboa)、Patricia Carvalho Rosa(Grupo de Pesquisa em Territorialidades e Governança Socioambiental na Amazônia, Instituto de Desenvolvimento Sustentável Mamirauá)、Cristina Branquinho(Faculdade de Ciências, CE3C – Center for Ecology, Evolution and Environmental Changes and CHANGE – Global Change and Sustainability Institute, Universidade de Lisboa, Lisboa, Portugal)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Daiane Soares Xavier da Rosa, Henrique dos Santos Pereira, João Afonso Baptista, et al. Food diversity among Amazonian Indigenous Peoples and Local Communities: a socioecological perspective. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-08-12. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1869997. 原著ライセンス:CC BY.