著者の所属・活動拠点の国は、中国、フィンランドです。
掲載誌:Food Chemistry
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
豆類や穀物を原料とし、肉に似た食感や味に仕上げた植物由来の高たんぱく食品が市場を広げています。こうした食品は、豆をそのまま調理したものから、たんぱく質を抽出・精製した原料に添加物を加えて作る製品まで、加工の程度がさまざまです。研究チームは、加工の仕方によって食品に含まれる成分がどのように異なるかを調べるため、市販品の成分を幅広く分析しました。
著者らは、この研究が市販品を一時点で比較した探索的な研究であると明記しています。市販品では、原料の選び方、配合、加工技術が切り離せないため、観察された違いはこれらが組み合わさった結果を反映しています。そのため論文では、加工が成分を変えたという因果関係ではなく、加工法と成分の特徴との関連として結果を示しています。
何をどのように調べたか
研究チームは、2021年9月から12月にかけてフィンランド・トゥルクの店舗で購入した植物由来の高たんぱく食品169品を分析しました。対象には、豆そのもの、豆腐、押出成形で作られたたんぱく質の塊、大豆などをカビで発酵させたインドネシアの食品テンペ、ナゲットやソーセージ、ハンバーグ風パティなどの肉に似せた製品が含まれます。比較のため、味付けや加工をしていない牛ひき肉、鶏肉、サーモン、豚肉の8品も分析しました。各製品は包装の指示どおりに調理し、揚げ油は加えずに試料としました。
製品は、原材料表示などをもとに、豆・植物そのもの、押出成形品、豆腐、テンペ、たんぱく質濃縮物・分離物を原料とする製品、肉の6種類に分けられました。さらに、加工度を分類する既存の2つの方式でも整理しています。たんぱく質濃縮物・分離物を使う製品のほとんどは「高度に加工された」または「超加工」の区分に入りました。
分析には1H NMRメタボロミクスを用いました。これは、磁場の中で水素原子が示す信号から、食品中の多数の小さな分子を一度に見分けて量を調べる方法です。水に溶ける成分として78種類の化合物を特定・定量し、脂質については12の信号グループを解析しました。
主な結果
まず、植物由来の食品と肉では成分の特徴がはっきり分かれました。肉ではアンセリン、クレアチン、タウリンなど筋肉に特徴的な成分が多く、植物由来の食品ではショ糖や果糖、ラフィノースなどの糖類、トリゴネリン、4-アミノ酪酸(GABAとも呼ばれる)が多いという違いが見られました。
たんぱく質濃縮物・分離物を原料とする高度に加工された製品では、保湿剤や安定剤として食品に使われるプロピレングリコール、ピログルタミン酸、レブリン酸、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)、ブドウ糖が多い傾向がありました。HMFは、糖とアミノ酸が加熱で反応する「メイラード反応」などで生じる物質と説明されています。一方、こうした製品ではミオイノシトールやアスパラギンが少なく、アスパラギンは豆そのものや押出成形品といった加工度の低い製品で多く見られました。著者らは、アスパラギンが加工度の低さと関連する目印になり得るとしつつ、原料や配合の違いでも説明できる可能性を挙げ、因果関係の確認には同じ原料で加工条件だけを変えた研究が必要だとしています。
発酵食品であるテンペは、とりわけ特徴的な成分を示しました。遊離アミノ酸、特にリシンやトレオニンが多く、4-アミノ酪酸は豆・植物そのものの製品の約2倍、ビタミンB群の一種であるニコチン酸は12.6倍でした。糖の一種であるトレハロースも多く含まれていました。脂質では、テンペの総脂質量が最も多く、不飽和脂質やオメガ3脂肪酸の信号も最も高い水準でした。著者らは、グリセリドの量はそれほど多くないことから、テンペには遊離脂肪酸のような別の形の脂質が多い可能性があるとしています。一方、押出成形品は不飽和脂質が最も少ない製品群でした。
研究が示すこと
この研究は、ひとくちに植物由来の高たんぱく食品といっても、原料や配合、加工法の違いによって含まれる成分の特徴が大きく異なることを、多数の市販品の分析から示しました。著者らは、こうした成分の違いが風味や食感に関わるだけでなく、健康への影響にも関係する可能性があると述べています。ただし、今回示されたのは加工法と成分の関連であり、加工そのものの影響を切り分けたものではないという点も、研究チーム自身が強調しています。
原著論文の著者・所属:Kang Chen(College of Food Science and Engineering, Ningbo University, Zhejiang 315211, PR China; Food Sciences Unit, Department of Life Technologies, University of Turku, FI-20014 Turun yliopisto, Finland; Institute of One Health Science, School of Civil & Environmental Engineering and Geography Science, State Key Laboratory for Quality and Safety of Agro-products, Ningbo University, Ningbo 315211, China; International Science and Technology Cooperation Base for Coastal Agricultural Water Resilience and One Health of Zhejiang Province, Ningbo University, Ningbo 315211, China)、Jasmin Raita(Food Sciences Unit, Department of Life Technologies, University of Turku, FI-20014 Turun yliopisto, Finland)、Maaria Kortesniemi(Food Sciences Unit, Department of Life Technologies, University of Turku, FI-20014 Turun yliopisto, Finland)、Zhengxuan Jiao(College of Food Science and Engineering, Ningbo University, Zhejiang 315211, PR China)、Baoru Yang(Food Sciences Unit, Department of Life Technologies, University of Turku, FI-20014 Turun yliopisto, Finland)、Kati Hanhineva(Food Sciences Unit, Department of Life Technologies, University of Turku, FI-20014 Turun yliopisto, Finland; Institute of Public Health and Clinical Nutrition, School of Medicine, University of Eastern Finland, FI-70211 Kuopio, Finland. Electronic address: [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kang Chen, Jasmin Raita, Maaria Kortesniemi, et al. Impact of food technological processing on biochemicals of plant-based protein-rich products: A 1H NMR metabolomics study. Food Chemistry 2026-07-31. DOI: 10.1016/j.foodchem.2026.150648. 原著ライセンス:CC BY.