著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

緑茶の浸出液には、カテキン類、カフェイン、アミノ酸の一種であるL-テアニンなど、味や機能性に関わる成分が多く含まれています。これらの量は、茶葉の産地や加工方法だけでなく、湯の温度、抽出時間、茶葉の細かさ、茶葉と水の比率といった淹れ方の条件によっても変わります。

研究チームによると、これまでの研究では、抽出量の合計や特定の成分など、一つの指標だけで抽出方法を評価することが多くありました。しかし、溶け出した量が多いことと、浸出液の化学的な中身が優れていることは同じではありません。そこで著者らは、抽出条件の最適化、主要成分の定量、複数の指標をまとめた評価、標的を絞らない網羅的な成分分析を組み合わせ、緑茶浸出液の化学的特徴を総合的に評価する枠組みを示すことを目指しました。

何をどのように調べたか

研究チームは、産地の異なる市販緑茶3種類(安徽省の黄山毛峰、陝西省の紫陽茶、雲南省の雪龍茶)を使い、3通りの抽出方法を比べました。一つは95℃の湯で抽出する一般的な熱水抽出、二つ目は植物の細胞壁を分解する酵素(セルラーゼとペクチナーゼ)を加えて50℃で抽出する酵素補助抽出、三つ目は20℃の水で時間をかけて抽出する水出し(コールドブリュー)です。

まず、茶葉から水に溶け出した固形分の割合(水可溶性成分量)を指標として、茶葉と水の比率、抽出時間、茶葉の粒の細かさの組み合わせを調べました。少ない実験回数で複数の条件の影響と相互作用を数式で表す「応答曲面法」という手法を用い、茶3種類×抽出法3通りの9組それぞれについて、溶け出す量が最大になる条件を求めています。著者らは、この最適化はあくまで溶け出す固形分の量に関するもので、味や化学的な品質の最適条件を示すものではないと明記しています。

次に、高速液体クロマトグラフィー(成分を分離して量を測る分析法)で、4種類のカテキン(EGCG、EGC、EC、ECG)、カフェイン、L-テアニンの6成分を測定しました。さらに、これら6成分と水可溶性成分量の計7指標を、多くの変数の情報を少数の軸に要約する「主成分分析」でまとめ、各条件の総合的な化学スコアを算出しました。このスコアではカフェインは少ないほど高く評価される向きに変換されています。なお、著者らはこのスコアを試料を比べて代表例を選ぶための探索的な指標と位置づけており、官能的な品質の等級ではないとしています。

最後に、産地の影響を避けるため紫陽茶のみに絞り、スコアの高・中・低の領域から一つずつ選んだ3条件の浸出液について、あらかじめ対象を決めずに多数の成分を一度に検出する「ノンターゲット・メタボロミクス」を行いました。

主な結果

水可溶性成分量は、茶葉と水の比率、抽出時間、粒の細かさによって明確に変化しました。紫陽茶では、比率を1:150まで薄くすると増え、それ以上では減少しました。抽出時間とともに増えた後は頭打ちになり、粒は60メッシュより細かくすると減る傾向でした。応答曲面法で作ったモデルの予測値と、実際に測定した値とのずれは9組すべてで0.12〜0.81%にとどまったと報告されています。

最適化した条件で淹れた浸出液では、6成分の量が茶の種類と抽出法の組み合わせによって有意に異なりました。最も多かったカテキンはEGCGで、黄山毛峰と紫陽茶の熱水抽出で多く、水出し、特に紫陽茶と雪龍茶の水出しでは少なめでした。カフェインは雪龍茶の熱水抽出で最も多く、L-テアニンは黄山毛峰の酵素補助抽出と紫陽茶の熱水抽出で多い結果でした。著者らは、カフェインとカテキン類では溶け出し方のパターンが同じではないと指摘しています。

126通りの実験条件をまとめた主成分分析では、最初の二つの軸で全体のばらつきの78.45%が説明されました。熱水抽出の試料は第1軸のプラス側に、水出しの試料はマイナス側に集まる傾向があり、産地と抽出法の組み合わせによって試料が部分的に分かれました。研究チームは、抽出方法が浸出液の化学的な違いに強く影響していると述べています。

紫陽茶の3条件を網羅的に分析すると、3つの浸出液はそれぞれ明確に区別されました。統計的な基準で量が異なると判定された成分の数は、酵素補助抽出と熱水抽出の比較で633、熱水抽出と水出しの比較で1000、酵素補助抽出と水出しの比較で985となり、水出しを含む比較で違いがより大きく現れました。違いのあった成分は、フラボノイド、フェニルプロパノイド、プリン代謝などに関わる代謝経路に割り当てられました。ただし、この3条件は抽出法以外の条件(比率、時間、粒度)も異なるため、著者らは結果を抽出法単独の効果ではなく、選ばれた条件の組み合わせ同士の違いとして解釈しています。

この研究が示すこと

この研究は、溶け出す量という一つの物差しだけでなく、主要成分の量、それらをまとめた総合スコア、網羅的な成分の違いを段階的に重ねることで、同じ緑茶でも淹れ方によって浸出液の化学的な中身が大きく変わる様子をとらえられることを示しました。著者らは、この枠組みが緑茶浸出液の抽出方法を選び、品質を安定させるための参考になるとしています。

著者:Yi Bai(Ningxia Key Laboratory of Development and Utilization of Specialty Food Resources, Yinchuan 750021, China)、Wenping Ma(Ningxia Key Laboratory of Development and Utilization of Specialty Food Resources, Yinchuan 750021, China)、Zhi‐Jing Ni(Ningxia Key Laboratory of Development and Utilization of Specialty Food Resources, Yinchuan 750021, China)、Wei Wang(Ningxia Key Laboratory of Development and Utilization of Specialty Food Resources, Yinchuan 750021, China)、Kiran Thakur(Ningxia Key Laboratory of Development and Utilization of Specialty Food Resources, Yinchuan 750021, China)、Run‐Hui Ma(Ningxia Key Laboratory of Development and Utilization of Specialty Food Resources, Yinchuan 750021, China)、Zhao‐Jun Wei(Ningxia Key Laboratory of Development and Utilization of Specialty Food Resources, Yinchuan 750021, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yi Bai, Wenping Ma, Zhi‐Jing Ni, et al. An Integrated Framework for Green Tea Infusion Chemical Characterization: Process Optimization, PCA-Based Chemometric Evaluation, and Untargeted Metabolomic Profiling. Foods 2026-10-15. DOI: 10.3390/foods15203661. 原著ライセンス:CC BY.