著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。
掲載誌:Food Chemistry X
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
大豆やグルテンを原料とする植物肉は、肉の繊維質な食感を再現するために「高水分押出成形」という加工技術を使って作られています。今回紹介する研究では、この植物肉の原料に、脂肪分を除いた食用昆虫由来のタンパク質を加えることで、栄養価や食感の構造がどう変わるかを調べています。使われた昆虫は、ミールワーム(Tenebrio molitor)、カナブン幼虫(Protaetia brevitarsis)、フタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)の3種です。
どのように調べたのか
研究チームは、大豆とグルテンをベースにした生地に、3種の昆虫から得た脱脂タンパク質をそれぞれ4%または8%の割合で混ぜ込み、高水分押出成形機で加工しました。できあがった試料については、膨張の度合いや密度、色(明るさや赤みの変化)、アミノ酸の構成、タンパク質分子同士の結びつき方、断面の微細構造、そして噛んだときの力学的な食感特性まで、複数の角度から比較しています。
昆虫の種類と添加量で何が変わったか
まず、昆虫タンパク質を加えると、膨張率や密度、色調(明度の低下や赤色度の上昇)に変化が見られたことが報告されています。これは、昆虫由来のタンパク質が植物性タンパク質と混ざり合う中で、加工中の構造形成に影響を及ぼしたためと考えられます。
栄養面では、ミールワーム(T. molitor)を配合した試料でメチオニンという必須アミノ酸の含有量が増え、必須アミノ酸のバランスを示す指数も3種の中で最も高い値を示したとされています。さらに、ミールワーム配合の試料では、タンパク質分子どうしをつなぎとめる疎水性相互作用や水素結合、ジスルフィド架橋(硫黄原子を介した強い結合)といった分子間の結びつきが強まり、構造の安定性が高まったことも確認されました。
断面を観察した微細構造の解析では、ミールワーム配合の試料でより緻密で方向のそろった繊維状の構造が見られ、添加量が中程度のときに、力学的な特性のバランスが最も良くなったとされています。こうした結果から、著者らは食用昆虫タンパク質による効果は昆虫の種類によって異なり、中でもミールワーム(T. molitor)が最も有望な性能を示したと結論づけています。
この研究を読むうえで
この論文は、食用昆虫由来のタンパク質を代替肉の原料として使う可能性を、加工特性と栄養成分の両面から検討した基礎研究です。今回の実験で確かめられたのは、大豆・グルテンベースの生地に特定の昆虫タンパク質を特定の割合で加えた場合の変化であり、ここで得られた結果がすべての配合や加工条件にそのまま当てはまるとは限りません。また、この研究は加工特性やアミノ酸組成といった理化学的な評価が中心であり、実際に食べたときの風味や、人が食べた際の健康への影響を検証したものではない点にも注意が必要です。あくまで一つの研究であり、結論が確定したものではありません。
まとめ
脱脂した食用昆虫タンパク質を植物肉に加える試みでは、昆虫の種類や添加量によって膨張率や色、アミノ酸組成、繊維構造などが変化することが示されました。特にミールワーム由来のタンパク質は、必須アミノ酸のバランスや分子間の結合強化、繊維構造の緻密さといった点で他の2種よりも良好な結果を示したと報告されています。食用昆虫を使った代替タンパク質食品の設計に向けた、基礎的な知見の一つといえそうです。
原著論文の著者・所属:Yea-Ji Kim(Department of Food Science and Biotechnology of Animal Resources, Konkuk University, Seoul 05029, Republic of Korea)、Ji Yoon Cha(Food Processing Research Group, Korea Food Research Institute, Wanju 55365, Republic of Korea)、Jeong-Heon Kim(Food Processing Research Group, Korea Food Research Institute, Wanju 55365, Republic of Korea)、Dong Hyun Keum(Department of Food Science and Biotechnology of Animal Resources, Konkuk University, Seoul 05029, Republic of Korea)、Bon-Jae Gu(Department of Food Science and Technology, Kongju National University, Yesan 32439, Republic of Korea)、Yun-Sang Choi(Food Processing Research Group, Korea Food Research Institute, Wanju 55365, Republic of Korea)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Yea-Ji Kim, Ji Yoon Cha, Jeong-Heon Kim, et al. Fibrous structuring and physicochemical properties of high-moisture meat analogues formulated with defatted edible insect proteins: Effects of species and inclusion level. フード・ケミストリーX (2026). DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104345. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.