海苔は寿司や軽食に欠かせない食材だが、インドネシアでは国内生産が需要を満たせず、年間321トンもの海苔を輸入に頼っているという。この状況を受けて、輸入代替となりうる原料を探す研究が進められている。今回紹介するのは、東ジャワに自生する水生シダ植物デンジソウ(Marsilea crenata)の葉を使い、海苔のようなシート状食品を試作した研究である。デンジソウは生理活性成分を豊富に含むとされる植物で、これを海苔の代替原料として活用できるかを検証した点がこの研究の出発点になっている。
カラギーナンの量を変えてシートを作る
研究チームは、デンジソウの葉を原料に、海藻由来のゲル化剤であるカラギーナンを1%、1.5%、2%の3段階の濃度で加えてシートを作製した。カラギーナンは食品にとろみやまとまりを与える成分で、ここではシートを固める役割を担っている。できあがったシートについて、収率(どれだけの量のシートが得られるか)、水分量、灰分(ミネラルなどの無機成分の量の目安)、タンパク質量、粗繊維量、総フェノール量(植物由来の抗酸化成分の指標)、抗酸化活性、そして引張強度や厚みといった力学的な特性まで、幅広い項目を測定して比較した。
濃くするほど丈夫になるが、抗酸化力は下がる
結果として、カラギーナンの濃度を高くするほど、シートの収率・水分・灰分・粗繊維・厚み・引張強度がいずれも増加する傾向が見られたという。これはカラギーナン同士の内部での結合が強まることによるものと考えられている。一方で、総フェノール量と抗酸化活性は、カラギーナン濃度が上がるにつれて低下する傾向が示された。研究チームはこの理由について、生理活性成分がシートのマトリックス(網目状の構造)の中に閉じ込められてしまい、外に抽出されにくくなったためではないかと説明している。つまり、丈夫さや厚みを求めて濃度を上げると、抗酸化に関わる成分の働きやすさとの間にトレードオフが生じる可能性がある、ということが示唆された形だ。
市販の海苔にはまだ及ばない
この研究の限界として、著者らは、試作したシートの引張強度が市販の海苔と同等の水準に達するには、さらなる配合や製法の最適化が必要であると述べている。つまり今回の結果は、デンジソウ由来の人工海苔が実用化に向けた一つの可能性を示したものであり、市場に出回る海苔をすぐに置き換えられる完成形が得られたわけではない。あくまで一つの研究段階の知見であり、今後の改良によって特性がどう変化するかを見ていく必要がある。
まとめ
この研究では、インドネシア産の水生シダ植物デンジソウの葉を使い、カラギーナンの濃度を変えることで人工海苔のシートを試作し、その理化学的・力学的特性を調べた。濃度を上げるほど収率や厚み、強度は増す一方、抗酸化に関わる成分の性質には低下が見られるなど、原料の配合によって特性のバランスが変わることが示された。今後、市販品に近い強度を実現するための最適化が課題として残されている。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Devianra Luthfi Alamsyah, Dedin Finatsiyatull Rosida, Yunita Satya Pratiwi. Physicochemical Characteristics of Artificial Nori Made from Water Clover (Marsilea crenata) Leaves with Different Concentrations of Carrageenan. エイジャーシーディーイー(アジア地域社会開発・エンパワーメント応用研究誌) (2026). DOI: 10.29165/ajarcde.v10i3.1310. 原著ライセンス: cc-by-sa.