スピルリナやクロレラといった微細藻類は、たんぱく質や栄養価の高さから食品原料として注目されています。しかし実際に食べてみると、独特の強い旨味や風味が気になり、そのまま口にするのは難しいと感じる人も少なくありません。この研究は、そうした微細藻類が持つ『強すぎる旨味』を、味覚に作用する物質でうまく抑えられないかを調べたものです。

研究チームは中国海洋大学(青島・三亜)や青島大学附属病院などに所属する研究者らによるもので、鍵となる物質として取り上げられたのが『ラクチゾール』です。ラクチゾールは甘味受容体に作用することが知られる物質ですが、この研究では旨味への影響にも着目しています。

どのように旨味の抑制効果を確かめたのか

研究対象となったのは、スピルリナ、クロレラ、そしてクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)という3種の微細藻類です。これらを水に懸濁させた液(濃度5.0〜50 g/Lの範囲)に加え、果物や野菜を組み合わせた複合ジュース、クラミドモナスを使った固形飲料、オレンジやリンゴの100%果汁、トマトジュースといった、実際に口にする可能性のある食品にも微細藻類の粉末(5.0〜50 g/L)を混ぜ込んで検証しています。

味の強さを測るにあたっては、感覚の強さを数値化する『マグニチュード推定法』と、刺激の強さと感じ方の関係を表す『スティーブンスのべき法則』を使い、旨味の強さを定量的にモデル化しました。そのうえで、ラクチゾールを0.10〜0.25 g/Lの範囲で添加し、人による官能評価を実施しています。

ラクチゾールは何を抑え、何は変えなかったのか

評価の結果、ラクチゾールの添加によって旨味と甘味が有意に弱まることが確認されました。一方で、塩味・酸味・苦味については有意な変化は見られなかったとされています。つまりラクチゾールは、味覚全体をぼかすのではなく、旨味と甘味という特定の味の感じ方を狙って弱める働きを持つ可能性が示されたことになります。

さらにこの効果は、微細藻類を単純に水に溶かしただけの状態にとどまらず、複合ジュースや果汁、トマトジュースといった、より実際の食品に近い複数の食品マトリックスの中でも確認されたと報告されています。このことは、ラクチゾールの旨味抑制効果が特定の条件だけで起こる現象ではなく、ある程度幅広い食品への応用可能性を持つことを示唆しています。

この研究を読むうえで押さえておきたいこと

この研究で示されたのは、あくまでラクチゾールという物質が旨味・甘味の『感じ方』に影響を与えるという官能評価上の結果であり、微細藻類の栄養価や安全性そのものを変えるものではありません。また、要旨の中には研究の限界について明記された記載はありませんでしたが、一つの研究で得られた知見であり、今後さらに異なる条件や集団での検証が積み重ねられていく性質のものと捉えるのが妥当です。

味の感じ方には個人差もあるため、ここで示された効果がすべての人や、あらゆる濃度・食品において同じように現れるとは限らない点にも留意が必要です。

まとめ

微細藻類は栄養面で期待される食品原料である一方、強い旨味が食べやすさの壁になってきました。今回の研究は、ラクチゾールという物質を使うことで旨味と甘味を選択的に弱められる可能性を、複数の微細藻類と食品系で確認したものです。今後、こうした知見が微細藻類を使った食品の風味設計に活用されていくかどうかが注目されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Jikang Sui, J. Zhang, Xiangning Lu, et al. Improving the palatability of edible microalgae by suppressing intense umami taste with lactisole. エルダブリューティー(LWT) (2026). DOI: 10.1016/j.lwt.2026.119843. 原著ライセンス: cc-by.