妊娠中、赤ちゃんのためにどんな栄養を意識すればいいか気になる方は多いと思います。特に喘息を持つ妊婦さんは、生まれてくる子どもの呼吸器の健康を心配することもあるでしょう。今回紹介するのは、そんな母親と赤ちゃんに注目した研究です。テーマは「ビタミンD」でした。
ビタミンDは、胎児の免疫system発達や肺の成熟に重要な役割を果たすとされています。そして喘息を持つ妊婦は、ビタミンD不足になりやすいことが知られています。この不足が、生まれてくる子どもの呼吸器の状態に影響するのではないか。そう考えた研究チームが、実際に調べてみました。
研究でわかったこと
対象は、気管支喘息を持つ妊婦50人です。妊娠初期(妊娠16週前後)と妊娠後期(妊娠35週前後)の2回、血液中の25-ヒドロキシビタミンD濃度を測定しました。
その結果に基づき、2回とも75nmol/L未満だった「持続的なビタミンD不足」群と、少なくとも1回は75nmol/L以上に達した群とに分けています。生まれた赤ちゃんは生後12か月まで追跡されました。喘鳴(ぜいぜいという呼吸音)や気管支炎、喘息関連の受診や入院、薬の使用状況などを、保護者への質問票で確認しています。
血清ビタミンD濃度の平均は、妊娠16週で65nmol/L、妊娠35週で69nmol/Lでした。50人のうち30人(60%)が、2回とも75nmol/L未満の「持続的なビタミンD不足」に該当しました。残る20人(40%)は、少なくとも1回は75nmol/L以上に達していました。
生後1年間の追跡では、母親が持続的にビタミンD不足だった群の赤ちゃんに、いくつかの違いが見られました。喘鳴の割合は70%でした。もう一方の群では42%で、この差には統計的な有意差がありました。
喘息関連の急な受診が必要になった割合も、42%対12%でした。経口ステロイド薬を使った割合は26%対4%でした。どちらも持続的なビタミンD不足の群で高く、統計的に有意な差だったと報告されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、喘息を持つ妊婦50人を対象にした観察研究です。母親のビタミンD値と赤ちゃんの呼吸器症状のあいだに、関連が見られたという段階の報告です。ビタミンDを増やせば喘鳴が防げる、と直接証明したものではありません。
研究チーム自身も、この結果を確かめるにはより大規模な前向き研究が必要だと述べています。今回の50人という規模は、まだ一つの手がかりにすぎないと捉えるのが妥当でしょう。
まとめ
喘息を持つ妊婦50人を追跡したこの研究では、6割の母親が妊娠中を通じてビタミンD不足の状態にありました。そうした母親から生まれた赤ちゃんは、生後1年間の喘鳴や喘息関連の受診、ステロイド薬の使用が多い傾向にあったと報告されています。この関連が今後の研究でどこまで裏付けられるか、続報が注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:喘息を持つ女性から生まれた乳児における妊娠中の母体ビタミンD値と呼吸器アウトカムの関連(国際医学生物医学研究誌・2026年08月)