この研究は、ポルトガル、スペインの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Food Hydrocolloids

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

持続可能で質の高いたんぱく質源への需要が高まるなか、微細藻類は動物由来たんぱく質に代わる候補として注目されています。研究チームは、微細藻類のなかでも広く利用されるクロレラ属に着目し、たんぱく質の抽出と利用に最も適した株を見きわめること、そして細胞を壊す工程と抽出条件を最適化して、たんぱく質の回収量と機能性を高めることを目的としました。

著者らによれば、これまでの研究の多くは限られた種を対象とした基礎的な成分分析にとどまり、細胞破砕の効率、回収条件の最適化、得られたたんぱく質の機能評価を一続きに扱った検討は乏しいとされます。さらに、抽出後に残る残渣の活用はしばしば見過ごされてきました。本研究は、株の選抜から残渣の利用までを一つの流れとしてつなぎ、廃棄物を出さないバイオリファイナリー(生物資源の総合利用)の考え方にもとづく評価を試みたものです。

調べた方法と主な結果

まず5つのクロレラ株を同じ培養条件で比べたところ、Chlorella fusca(クロレラ・フスカ)が最も高い増殖速度とバイオマス生産性を示したと報告されています。培養21日目の菌体濃度は1.75±0.07 g/Lで、最も低かった株より86%高い値でした。この結果をもとに、以降の実験はC. fuscaを用いて進められました。

次に、超音波で細胞壁を壊す工程が検討されました。菌体の濃度を1、10、100 g/Lで比べたところ、100 g/Lで破砕効率が最も高く、投入エネルギーは最も少なくて済みました。細胞どうしが近接しているとエネルギーが伝わりやすいためと考察されています。ただし高濃度では粘度が上がり扱いにくくなることから、以降の抽出実験では実用性を考慮して10 g/Lが採用されました。

たんぱく質の回収には、アルカリ性で溶かし出してから酸性側で沈殿させる方法(等電点沈殿)が用いられました。溶解と沈殿のpHを組み合わせて比べた結果、溶解pH11.90・沈殿pH3.40が最良で、乾燥菌体100 gあたり44.63 gのたんぱく質が得られたと報告されています。処理時間は1時間から24時間まで回収量がほぼ変わらなかったため、短時間でも収量を損なわずに済むことが示されました。得られた抽出物のたんぱく質含量は100 gあたり69.24 gで、アミノ酸の合計量(68.48 g/100 g)とよく一致していました。

抽出したたんぱく質の働きも調べられました。油と水を混ぜ合わせる力(乳化能)はpH10で最大66.1±0.2%、泡立ちの良さ(起泡能)はpH2で最大78.6±0.1%を示しました。いずれもpH4付近で最も低く、これはたんぱく質の電荷がほぼ打ち消されて溶けにくくなる等電点に近いためと説明されています。水を抱え込む力と油を抱え込む力はそれぞれ1 gあたり2.5±0.2 gと3.3±0.3 gでした。ゲル化は、アルカリ性かつ20%という高いたんぱく質濃度でのみ起きました。アミノ酸組成では、体内で作れず食事から摂る必要のある必須アミノ酸が全アミノ酸の45.7%を占め、一般的な食品由来のたんぱく質素材について報告されている値と同程度だったとされています。

さらに、たんぱく質を取り出したあとに残る濃い緑色の残渣が、食用の着色素材として評価されました。市販の緑色製品と色を比べたところ、とくにフォンダン(砂糖菓子の一種)とパスタで緑色の再現に高い可能性が示されたと報告されています。

この研究が示すこと

著者らは、C. fuscaが食品や栄養補助用途に向けた機能性たんぱく質と天然色素の供給源になりうると位置づけています。株の選抜、細胞破砕、抽出条件、機能評価、そして残渣の活用までを一つの工程として結びつけた点に、この研究の意味があります。取り出したたんぱく質だけでなく、これまで捨てられがちだった残りの部分にも使い道を見いだしたことは、資源を無駄なく循環させる加工のあり方を具体的に示すものといえます。

著者:Ana F. Esteves(LEPABE, ALiCE, Faculty of Engineering, University of Porto, Rua Dr. Roberto Frias, 4200-465 Porto, Portugal)、Silvia Villaró-Cos(CIESOL Solar Energy Research Centre, Joint Centre University of Almería-CIEMAT, 04120 Almería, Spain)、Gabriel Acién(CIESOL Solar Energy Research Centre, Joint Centre University of Almería-CIEMAT, 04120 Almería, Spain)、Tomás Lafarga(CIESOL Solar Energy Research Centre, Joint Centre University of Almería-CIEMAT, 04120 Almería, Spain)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ana F. Esteves, Silvia Villaró-Cos, Gabriel Acién, et al. Functional protein extracts and colouring co-products from Chlorella fusca: Towards integrated microalgal bioprocessing. Food Hydrocolloids 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.foodhyd.2026.113383. 原著ライセンス:CC BY.