長野の畑で青黒く色づいた実が、そろそろ最盛期を迎えている。ブルーベリー 生は直径1cmほどの小さな果実だが、旬は6〜7月ごろとされ、ちょうど今がその盛りにあたる。国内では長野県が総収穫量の2割を占める生産地1位で、熟す前には美しい濃い緑色をしているというのも、店頭で見比べると面白い発見だ。口に含むとほどよい甘酸っぱさが広がる。砂糖とは異なる穏やかな甘みを持つ果実として、夏の間じゅう重宝される。
可食部100gあたりのエネルギーは48kcal、たんぱく質0.5g、脂質0.1g、炭水化物12.9g、食物繊維総量3.3gという構成で、決して栄養が突出して多い果物というわけではない。たんぱく質0.5gは、女性30〜49歳の推奨量50g/日(食事摂取基準)のわずか1%にすぎない量だ。ところが、この果実の炭水化物の中身を覗いてみると、意外な顔が見えてくる。100gあたりぶどう糖4.2g(推定値)——これがブルーベリーで特に含有量が多いとされる栄養素の一つだ。ぶどう糖は砂糖より甘みが穏やかだが、脳や神経組織、赤血球など一部の組織にとっては、通常ほぼ唯一のエネルギー源になるとされる糖でもある。脳は体重のわずか2%程度の重さしかないのに、体が休んでいるときに消費するエネルギー全体の約20%、1日およそ300kcalを使うと考えられており、これはぶどう糖に換算するとおよそ75g/日に相当するという。青黒い小さな一粒が、まさにその脳の燃料そのものを含んでいるというのは、甘酸っぱい果実を頬張るときにはなかなか意識しない事実ではないだろうか。
※特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
ブルーベリーには、五性「平」・五味「甘・酸」に分類する見方もあるそうで、暑さがこたえるこの時季にすっと食べられる果実として重宝されてきたのもうなずける。日本には1950年代初頭に伝来し、「ベリーの王様」とも呼ばれて世界各地に広まった歴史を持つが、品種にはハイブッシュ、ローブッシュ、ラビットアイなど違いがあり、味や粒の大きさを比べながら選ぶのも旬ならではの楽しみだ。食べ方としては、ヨーグルトやアイスクリームにトッピングするのが定番で、ジャムや果実酒に仕立てるのもよい。保存する場合は、ペーパーで包んでポリ袋に入れて冷凍すれば約1カ月もち、生のままでも冷凍しても栄養価はほぼ変わらないとされているので、旬の時期にまとめて冷凍しておき、凍ったままシャーベット感覚で楽しむのもおすすめだ。冷蔵なら10日ほどが目安になる。
今の時季、スーパーの店先に青黒い粒が並んでいたら、ひとつまみ手に取ってみてほしい。小さな果実の甘みの奥に、脳を支えるぶどう糖という意外な顔が隠れている——そう知ってから食べる一粒は、いつもより少しだけ味わい深く感じられるはずだ。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準