年齢を重ねると、体力や気力がじわじわと衰えていく「フレイル」や、その手前の状態である「プレフレイル」が問題になります。食生活の乱れがこうした衰えに関わっていると考えられていますが、具体的に何をどれだけ食べるかよりも、どれだけ多様な食品を食べているかが影響しているのではないか、という視点から行われたのが今回の研究です。福岡県久山町に住む高齢者を対象とした「久山町研究」のデータを用い、九州大学大学院医学研究院などの研究者らが、食事の多様性とフレイル・プレフレイルとの関連を調べました。
研究の対象となったのは、地域住民として生活する65歳以上の男女1,388人(男性628人、女性760人)です。食事の内容は食物摂取頻度調査によって把握され、肉類、魚介類、卵、大豆製品、乳製品、緑黄色野菜、海藻、いも類、果物、油を使った料理など12の食品群それぞれについて、1週間のうちに食べた日数をもとに「食事多様性スコア(DDS)」が算出されました。参加者はこのスコアの高さによって5つのグループに分けられています。フレイルの有無や段階は、日本版CHS基準(改訂版)と呼ばれる評価方法により判定されました。
食事の多様性が高いほどフレイル・プレフレイルの割合が低い傾向
参加者全体では、フレイルに該当する人が6.7%(93人)、プレフレイルに該当する人が47.5%(659人)を占めていました。年齢や性別などの影響を統計的に調整したうえで分析したところ、食事の多様性スコアが高いグループほど、フレイルやプレフレイルに該当する割合が低い傾向が示されました。具体的には、スコアが最も高いグループは最も低いグループと比べて、フレイルに該当するオッズ比が0.36(95%信頼区間0.16〜0.81)、プレフレイルに該当するオッズ比が0.53(95%信頼区間0.35〜0.81)と報告されています。
さらに、エネルギー・たんぱく質・カルシウムの摂取量を加味して調整すると、食事多様性スコアとフレイルとの関連の60.2%、プレフレイルとの関連の33.5%が、これらの栄養素の摂取量によって説明できる可能性があるとされました。つまり、多様な食品を食べること自体に加えて、その結果として摂取されるエネルギーやたんぱく質、カルシウムの量も、フレイル・プレフレイルとの関連の一部を担っていると考えられています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は日本の福岡県久山町という特定の地域に住む高齢者を対象とした調査であり、得られた関連が他の地域や年代の人にもそのまま当てはまるとは限りません。また、食事の状況とフレイルの状態を同じ時点で調べる方法がとられているため、食事の多様性が低いことがフレイルを引き起こしたのか、あるいはフレイルに近い状態にあることが食事の多様性を下げているのか、原因と結果の向きを断定することはできません。あくまで一つの研究による結果であり、これによって結論が確定したわけではない点に留意が必要です。
まとめ
今回の久山町研究では、多様な食品を日常的に食べている高齢者ほど、フレイルやその前段階であるプレフレイルに該当する割合が低い傾向にあることが示されました。この関連の一部は、エネルギーやたんぱく質、カルシウムの摂取量と関係している可能性が示唆されています。特定の食品を増やせば衰えを防げると断定するものではありませんが、食卓の品目をできるだけ多様にすることが、高齢期の心身の状態を考えるうえでの一つの手がかりになりうることを示す研究といえます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Yasumi Kimura, Emi Oishi, Satoko Sakata, et al. Association of dietary diversity with frailty and pre-frailty in a general Japanese population: the Hisayama Study. BMCジェリアトリクス (2026). DOI: 10.1186/s12877-026-08072-8. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.