年齢を重ねると、食料品の買い物一つをとっても、店までの距離や移動手段、体力の問題などさまざまな要因が関わってきます。こうした「食へのアクセス」のしやすさは、高齢者の心身の衰え、いわゆる「フレイル」とどのように関係しているのでしょうか。今回紹介するのは、日本のある市に住む65歳以上の高齢者を対象に、食料品店までのアクセスとフレイルの関連を調べた研究です。
「食へのアクセス」と一口に言っても、店までの物理的な距離だけでなく、実際にどれくらいの頻度で買い物に行けているか、そして本人が買い物をどのくらい大変だと感じているかなど、いくつかの側面があります。この研究は、それらを分けて調べることで、フレイルとの関連がどこに強く表れるのかを明らかにしようとした点が興味深いところです。
研究でわかったこと
この研究では、2020年8月に地域在住の65歳以上の住民5000人に郵送でアンケートを実施し、2151人から有効な回答を得ました。食へのアクセスは、①最寄りの食料品店までの所要時間、②買い物に行く頻度、③買い物のしやすさについての本人の感じ方(主観的な利便性)、という3つの指標で評価されています。フレイルの判定には、5項目からなる「フレイルスクリーニング指標」が用いられました。
回答者全体のうち、15.9%がフレイルに該当すると分類されました。
まず、最寄りの店までの所要時間については、フレイルとの間に統計的に意味のある関連は見られなかったと報告されています。一方で、週に3回未満しか買い物に行かない人は、他の要因を調整してもフレイルのオッズ(なりやすさ)が高い傾向が独立して認められました。ただし、その関連の大きさは、次に述べる「買い物の困難さの感じ方」による関連よりも小さかったとされています。
最も強い関連を示したのは、買い物のしやすさについての主観的な評価でした。買い物が大変だと感じている人は、年齢や他の要因を調整した後でも、フレイルのオッズが顕著に高いという結果が示されています。
これらの結果から、著者らは、店までの物理的な距離そのものよりも、本人が買い物をどのくらい大変だと感じているかという主観的な指標が、フレイルと関連する有用な手がかりになりうると考察しています。これは、買い物という行為に伴う身体的・心理的な負担が、単なる食料品へのアクセスのしやすさ以上に反映されている可能性を示唆するものだとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ある一時点でのアンケート調査に基づくものであり、食へのアクセスとフレイルとの「関連」を示すものであって、買い物のしにくさが直接フレイルを引き起こす、あるいはフレイルが買い物のしにくさを引き起こすといった因果関係を証明するものではない点に注意が必要です。また、対象は日本のある市の地域在住高齢者であり、調査時期は2020年8月という特定の時点である点も踏まえて読む必要があります。一つの研究であり、これだけで結論が確定したわけではありません。
まとめ
この研究では、高齢者の食へのアクセスのうち、店までの物理的な距離よりも、買い物頻度の低さや、とりわけ本人が感じる「買い物のしにくさ」がフレイルと強く関連していることが示唆されました。日々の買い物のしやすさに目を向けることが、高齢者の心身の状態を考えるうえで一つの手がかりになるのかもしれません。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:地域在住高齢者における食へのアクセスとフレイルの関連(ジャーナル・オブ・ジェロントロジー・アンド・ジェリアトリクス・2026年07月)