スポーツをがんばる学生アスリートにとって、食事は体づくりを左右する重要な要素です。では、より高いレベルで競技する選手ほど、栄養についての知識が豊富で、実際の食生活も優れているのでしょうか。それとも、知識と実践は別物なのでしょうか。今回紹介するのは、男子大学生アスリートを対象に、競技レベル・食事内容・スポーツ栄養に関する知識・身体組成の関係を調べた研究です。

研究でわかったこと

この研究は、男子大学生アスリート100名(アマチュア選手60名、エリート選手40名)を対象とした横断研究です。参加者のスポーツ栄養知識は、独自に作成された質問票(Nutrition for Sport Knowledge Questionnaireの考え方をもとに調整されたもの)で評価されました。食事内容は3日間の食事記録から、身体組成は体組成計(多周波数の生体電気インピーダンス法)によって測定されました。

結果として、エリート選手はアマチュア選手に比べて、エネルギー・タンパク質・炭水化物の摂取量が有意に多く、食事の回数や1日あたりの水分摂取量も多いことが報告されました。一方で、スポーツ栄養に関する知識のスコアには、両グループの間で統計的に意味のある差は見られませんでした。つまり、「競技レベルが高い選手ほど栄養知識が豊富」とは言えない結果だったということです。

身体組成については、エリート選手のほうが体脂肪率が低く、骨格筋量の割合が高い傾向はあったものの、この差は統計的に有意ではなかったとされています。さらに分析を進めると、身体組成との関連が強かったのは、栄養知識よりもむしろ食事内容、特にタンパク質摂取量であることが示されました。重回帰分析でも、タンパク質摂取量と競技レベルが、身体組成を予測する独立した要因として挙げられています。

これらの結果から、研究者らは「競技レベルの高さは、より良い食習慣とは関連しているが、栄養知識の高さとは必ずしも結びついていない」と述べています。そのうえで、身体組成との関連という観点では、知識を増やすことよりも、実際の食事行動を改善することのほうが、より実践的な価値を持つ可能性があると考察しています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は特定の時点でのデータを一度だけ調べた横断研究であり、対象は男子大学生アスリート100名という限られた集団です。そのため、ここで示された関連が、必ずしも他の性別や年齢層、競技種目のアスリートにも当てはまるとは限りません。また、横断研究という性質上、「タンパク質摂取量が多いから身体組成が良くなる」といった因果関係を直接証明するものではなく、あくまで関連が観察されたにとどまります。論文中でも、こうした関係を確かめるためには、長期にわたる追跡調査や、実際に食事内容を変える介入研究が必要だと指摘されています。一つの研究であり、これだけで結論が確定したわけではない点に留意して読むとよいでしょう。

まとめ

今回の研究では、大学生アスリートにおいて競技レベルの高さは食事内容の良さと関連していたものの、スポーツ栄養に関する知識の高さとは関連していなかったことが報告されました。また、身体組成との関連では、知識そのものよりも、タンパク質摂取量を含む実際の食事内容のほうが強く関わっている可能性が示唆されています。「知っていること」と「実践できていること」は必ずしも一致しない、という視点は、スポーツ栄養に関心のある人にとって興味深い示唆と言えそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:大学生アスリートにおける競技レベルと食事実践およびスポーツ栄養知識との関連:身体組成プロファイルとの関係(BMCスポーツサイエンス・メディシン・アンド・リハビリテーション・2026年08月)